【特集】

驚きの1.44MB!! QNX DEMOで組込みOSの実力を知る

1 組込みシステムって何?

    海上忍  [2000/09/27]

    「DEMO」という言葉を耳にしたことはあるだろうか? 製品の"お試し版"を指す言葉として用いられることが一般的だが、そうとはかぎらない。商用のアプリケーションとは直接関係のない、プログラミングテクニックとその小ささをアピールする目的としての「DEMO」が存在するのだ。本稿では、組込み用リアルタイムOSとして多くの企業に採用されているQNX社(本社カナダ)のDEMOをレビューする。OSとしての基本的な機能、TCP/IPやPPPなどの実装系、そして日本語を表示可能なWWWブラウザが1枚のフロッピーディスクに収められた、驚くべきDEMOである。そのDEMOを"お試し版"ではなく、人を唸らせる"DEMO"として捉え、多方面から検証してみたい。

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    ○組込みシステムって何?

    『コンピュータ、ソフトなければただの箱』とはよく耳にする言葉だが、普通の電化製品でも、目に見えない部分では既にそうなっている。エアコン、カーナビ、携帯電話。ビデオ、ファックス、炊飯器。CPUやメモリ容量が説明書に記載されることこそないが、それらの機器のほとんどが制御手段として"コンピュータ"と"プログラム"を内蔵しているのだ。それがいわゆる「組込みシステム(Embedded System)」であり、ひょっとしたらWindowsやMacよりも接する時間の長いコンピュータシステムかもしれない。組込みシステムは、エンドユーザーには見えにくい部分で活躍している縁の下の力持ちなのである。

    そして、組み込みシステムは基本的に"オーダーメイド"となっている。ハードウェアとしての機能を提供することが主目的なので、ビデオならばビデオとしての存在をユーザーに納得させられればよく、コスト的な問題も相まって必要最低限の構成となることが一般的だ。また、組込み対象の機器が小型であればあるほど、物理的な制約が厳しくなる。携帯電話を見ればわかるとおり、コンパクトであることが"市場命題"なだけに、できるかぎり小さく薄くなければならないのだ。それが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)---簡単に言えば、1つのチップにCPUやプログラムを詰め込んだ特定用途向けIC---を急速に進化させる要因であることは容易に想像がつく。

    さらに、物理的な小ささだけでなく、プログラムが"小さい"ことも重要だ。たとえば、比較的シンプルな機能を提供する機器には、数メガバイトなどという大規模なプログラムは必要ない。数十キロバイト、場合によっては数キロバイトで十分というケースもありうる。とはいえ、電化製品の多機能化はプログラムサイズの上昇を促す。以下に示すグラフ(図1)からは、その傾向が理解できることだろう。

    図1:組込みシステムのプログラムサイズ(参考資料1)

    ただし、PCでは半ば常識となっている"動作しなくなったら再起動"という概念は、まず通用しない。組込みシステムの信頼性/耐障害性は、その製品が故障したと誤解されることに直結するだけに、重要なポイントとなっている。無事故で10年以上連続動作、といったことが当然のように期待されるからだ。また、数msecなどの短い時間内に必ず応答する機構を持つ「リアルタイムOS」であることが要求される場合もある。家庭での使用を前提とした製品ならば許されるかもしれないが、戦闘機のミサイル発射ボタンを制御するシステムを想像してほしい。一瞬のタイミングのズレさえ許されない使用環境は、組込みシステムにとっては当たり前のことなのだ。

    参考資料:
    「リアルタイムOSの利用動向とITRONに関するアンケート調査」 トロン協会ITRON部会編
    http://tron.um.u-tokyo.ac.jp/TRON/ITRON/survey-j.html

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