【特集】
1996年春に産声を上げた携帯端末Palmは、299ドルという手軽な価格とワンボタンでのPCへの連携機能が受け、アメリカのビジネスマンを中心に大ヒット。その勢いは日本にも飛び火し、ユーザーによる日本語化でマニアに大受け。1999年には日本アイ・ビー・エムが日本語版を正式に発売し、2000年になって複数のPalmマシンが続々と登場し始めた。Palmブームに追いつくために、Palmってなに? という基礎から、どんなことができるのか、どのマシンが自分向きなのかまで、完全指南しちゃおう。
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1.広がり始めたPalm
○女性の使う、Palmという風景
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| Palm特集で勢ぞろいしたPalm OS搭載機。それぞれ大きさもデザインも違うPalmがいっぱいあって、楽しくて選べて、なんだか大満足なのだ |
急にまわりにPalmをもつ「女性」が増えてきた。1999年末から2000年にかけてのできごとである。
「増えてきた」ことを印象づける決定的だった出来事は、ごく身近なところで起こった。これまで携帯端末を使っては、すぐに「使え~ん」といって放り出してしまうのが常だった妻が、自らアイ・ビー・エム版のPalm「WorkPad」を使い始めたのだ。挙げ句、PCWebで、編集を担当してくれているA嬢までもが、「実は……」とVisorを取り出す始末である。
従来、日本で電子機器といえば、ビジネスマンがZaurusをポケットから取り出すか、OLのオネーサマがポケボーを使うか、はたまた女子高校生がケータイ電話を使うか、3種類しかなかったはずなのである。
その風景が変わりつつある。
○携帯マニアとその妻、使うモノはずいぶん違う
仕事柄、拙宅には、携帯端末がほとんど無数といっていいほど存在する。だが、実利を求める妻が、長期にわたって使った携帯端末は、実に携帯電話しか存在しない。
筆者(=美崎)は自他共に認める携帯端末マニアなので、はっきりいえば、どんな携帯端末も等しくこよなく愛してやまない。たいていの携帯端末は、使うのが苦にならないのだ。
だから、美崎が自分を基準に置いて夢想していると、これからどんなものが流行ってくるのか、よくわからない。だって、MDMだって、TiPOだって、CEだって、デジタルカメラだって、どれもよさそうじゃないか? ブレイクしないのが不思議なくらいなのだ。
半分夢の世界に生きている美崎にとって、妻がPalmを使い始めたことは、まるで世間が携帯端末、それもPalmに向かい始めたように思えて、驚天動地の驚きだったわけだ。
妻が使えるのなら、きっと誰でも使えるだろう。よくコンピュータは、判で押したように「誰でも使えます」とアピールし続けているが、本当に使いやすい電子機器というのは、なかなか見つからないものだ。だが、Palmは、使いやすい電子機器というのに足りる完成度をもつのかもしれない、と思ったのだ。
○OA化の最先端は女性から始まっている
オフィスにおいて、OA化の先端を担っているのは、女性である、ということも、女性にPalmが受けている隠れた理由なのかもしれない。Palmは少々コンピュータを使える女性にとっては、まったく恐怖感を感じさせない簡単なガジェットだ。そのうえ、PCとの連携はケーブル1本(最近はUSBなのでさらに簡単)だし、いろいろなフリーソフトがあって、自分好みにカスタマイズして、手帳っぽく使いこなせる。
カスタマイズはできるが、コンピュータと違って、なにかトラブルが起これば、リセットして、簡単に元の状態に戻せる。その壊れにくさもPalmの大きな魅力だ。
○見逃せない口コミ人気
口コミ人気も見逃せない。
女性の場合、1人が新しいモノを使い始めて、よいことがわかると、その人を中心にしたグループ全体が、同じモノを使うようになる。同じモノを使えば、わからないところはすぐに教えてもらえるし、よいところがわかっているので安心だからだ。こうして、Palmは女性の間に静かに広がり始めている。
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| Palm=携帯マシンということで、屋外に持ち出してみた。ロケ地は、恵比須ガーデンプレイス。この5モデル+WorkPad c3の合計7モデルをテストした。屋外で反射しているが、Vxの液晶は文字が見える |
○鮮明に記憶されたPalm初体験
振り返ってみると、美崎が最初にPalmに触れたのは、1996年11月28日のことである。どうしてこんなに日付までばっちり覚えているかというと、理由がある。その日、オリンパス販売、映像情報本部情報機器事業推進部マーケティンググループの竹上創係長に取材にいくことになり、その取材の席で竹上さんが懐から取り出したのが、発売直後のPalmだったためだ。取材の記事が日付+写真入りで残っていたのだ。
もちろん、当時Palmは英語版しか存在しなかった。竹上さんはアメリカ出張で、いち早くPalmを手に入れてきたところだった。竹上さんによれば、Palmの特徴は、一筆書きの英語のような入力システム(これをGraffiti:グラフィティと呼ぶ)、絞りに絞った基本機能のみの構成、そして安価な価格なのだ、ということだった。Palm初代機「Pilot 1000」は、299ドルで販売され、竹上さんは「250ドルで入手した」と語った。
○実は簡単!? PalmのGraffiti
Graffitiは「特別な文字入力方式」などといわれるが、早速使ってみたところ、実は覚えなければならない文字は、わずかに「A」「F」「G」「K」「T」「V」の6文字だけ。あとは、普通のアルファベットのままだ、ということがわかった。「特別な文字入力方式」などというと、初心者は敬遠しがちだが、ぜんぜん特殊でもなんでもない。ただの一筆書きみたいなものだ。
Graffitiは、使っているうちに、たいていのユーザーはいつのまにか覚えてしまうようになるらしい(そうでもない方もいるみたいだが)。
どうして覚えられるのか。それは、わざわざ覚える文字が、6つしかないところがミソなのだ。人間の記憶には、短期記憶と長期記憶というのがあり、短期記憶ではおおむね7つ程度の物事を、瞬時に覚えることができる。電話番号などを覚えてダイヤルするときに使うのが、この短期記憶だ。
普通のアルファベットと異なる書き順は、たった6種類しかない。Graffitiは、短期記憶だけで覚えることが可能なのである。短期記憶だけで覚えることが可能ということは、ほぼ、即座に覚えられる、ということである。
○覚える快感を刺激するGraffiti
そう。取材のときのわずかな時間で、美崎はGraffitiを覚えてしまったのである!
人間というのは面白いもので、物事が「できる」ということが、非常に重要なモチベーションになるものだ。できて楽しい! というモチベーションを、短時間で与えてくれるPalmとGraffitiは、美崎に強い印象を残したのであった。
Graffitiはユーザーに、新しいことをマスターすることを要求する。だが、新しいことを覚えるのは、楽しいことなのだ。
○日本で広がるPalmユーザー
Palmは、その後、熱心なユーザーグループに認知され、1996年秋には、山田達司氏がJ-OSという日本語環境を開発したことで、日本語も使えるようになる。
1997~8年には、マニア人気がピークに達した。1999年には、日本アイ・ビー・エムが日本語版を正式に発売。2000年になって、パームコンピューティング社による日本語版Palm IIIcとPalm Vxを皮切りに、アスクがTRGpro、ハンドスプリング社のVisor、ソニーの複数のPEG-S500CにPEG-S300と、Palmマシンが続々と登場し始めたのである。
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