電気暖房メーカー「Dimplex」の製品を日本で提供するディンプレックス・ジャパンは、商品の修理対応も行っている。同社はこのほど、在庫と修理履歴の管理に「Zoho CRM」を採用したが、どのような導入効果を手にしたのだろうか? 今回、CS部門のリーダーである笠舞信行氏と修理資材調達のリーダーである牧野哲也氏に話をうかがった。

左から、ディンプレックス・ジャパン 修理資材調達 リーダー 牧野哲也氏、CS部門 リーダー 笠舞信行氏

暖房器具の輸入販売企業が「Zoho CRM」を採用

ディンプレックス・ジャパンは、より豊かで健康的な生活を送れる住空間の実現を目指して世界最大の電気暖房メーカー「Dimplex」の製品を日本で提供する企業だ。住宅への固定設置用器具と屋内に手軽に設置できるポータブル器具の双方を取り扱っており、修理対応なども行っている。

以前、修理センターは自社で群馬県に開設していたが、運用の負担が大きくなったため、アウトソーシングする形で茨城県に新設した。その折に、離れた拠点同士のデータ管理ツールとして提案されたのがZoho CRMだった。修理センターという特質上、部品管理を担う物流部と顧客対応を担うCS部門がZoho CRMを統括している。

「修理センターにおける在庫と修理履歴の管理にZoho CRMを活用しています。従来これらの管理はExcelで行っていたのですが、ファイルサイズが大きくなるにつれ、操作が煩雑になってきていました。どうにかしなければならないと考えていたものの、Accessといった管理ツールで開発する余裕もなく、困っていたところに提案されたのがZoho CRMです」と笠舞氏は語る。

加えて、顧客へのサービス向上という点でも、離れた拠点間をリアルタイムで結ぶことができるZoho CRMの導入は意義が大きかったというわけだ。

無料版で使用感をつかみ2週間で導入完了

同社は2011年夏からZoho CRMを本格的に利用しているが、無料版を利用して使用感をつかんでから導入に踏み切ったという。

「比較的新しい物が好きな社風なので、Zoho CRMの導入自体には抵抗がありませんでした。無料版でやれることが大体わかったのはよかったですね。2週間程度の作業で、1件目の本番入力ができるようになりました」と笠舞氏。

特に修理部品の管理は、伝票処理によるアナログな管理だったところからの発展となり、現場ではかなり歓迎ムードのようだ。現在、ディンプレックス・ジャパン側ではオフィスの担当者4人が部材の出荷依頼や修理関連情報の入力を担当している。

一方、茨城の修理センターでは延べ8人ほどがタブレット端末などを利用して在庫や修理状況をリアルタイムに入力。問い合わせなどにも迅速に対応する体制を整えている。

「当初、修理情報の入力について『手間がかかるな』と感じる部分もありましたが、要望として出したところ改善方法を提案してもらえました。正直なところ、まだZohoの機能を把握しきれていないので、私たちがやりたいことを実現できる機能がもっとあると思っています」と笠舞氏は語る。

効率的な修理履歴の情報管理を実現

修理情報がZoho CRMに蓄積されたことで、過去の事例が検索しやすくなったというのが現場の評価だ。2度目以降の修理時はそれまでの来歴が重要になるが、Zoho CRMによってこうしたデータをスムーズに引き出せるようになったわけだ。

また、納品書や請求書の作成にもZoho CRMが活用されている。Zohoは請求書作成サービス「Zohoインボイス」も提供しているが、Zoho CRMも請求書作成機能を備えており、業務内容によっては対応可能なのだ。

「修理の記録票の処理もZoho CRMの差し込み文書機能で行っています。以前はメールのテンプレートを作って送信していたのですが、簡単に処理できるようになりました。これまでさまざまなシステムに分散されていた業務が、Zohoに正に集約された状態です」と牧野氏は語る。また、在庫管理に関しては棚卸がスムーズになるという効果もあったようだ。

今のところ、修理担当者が外出先からモバイルデバイスを用いて直接データを参照したり、修理部品の発送指示をしたりといった使い方はされていない。オフィスでの業務が紙やローカルPCによる作業からZohoに置き換わったという状態だが、すでに十分な効果が実感できているという。

データ分析や利用シーン拡大に期待

今後の目標は「蓄積されたデータの活用」だ。暖房器具を扱うだけに、業務の繁忙期は冬期であり、現在はデータを入力して蓄積するフェーズだが、春から夏にかけての閑散期には蓄積したデータの分析を行いたいという。

「今のところ、故障原因などのデータを入力していますが、分析までは手が回っていません。これらのデータを分析すれば業務に役立てられることは確実なので、徐々に手を付けていきたいと思います。Zohoを使えばできそうだと感じています」と笠舞氏。

また、利用シーンが拡大される可能性もある。現在、Zoho CRMを用いた修理情報の蓄積はポータブル暖房機のみを対象に行っている。住宅設置用暖房機のメンテナンス情報をどのシステムで管理するかはまだ決まっていないが、Zoho CRMも候補に挙がっているという。

「住宅設置用暖房機の管理にもCRMを活用したいと考えています。フィールドサービスを行っているサービスマンからリアルタイムでフィードバックが受けられるようにしたいですね。モバイルデバイスを活用しての処理になると思いますが、システムの候補としてZohoが挙がっています。これまでの経験から、『Zohoならやりたいことができそうだ』と感じているのです」と、笠舞氏はZohoへの期待を語る。