異国エジプトで働いていた「おろぐちともこ」が、仕事を含む現地生活をマンガとコラムでご紹介。ピラミッドだけじゃない「エジプト」をお楽しみください。(毎週火曜更新予定)

【エジプトのスイカ事情】

野菜・フルーツが豊富なエジプトですが、特によく見かけるのはスイカ。時期になると、果物屋さんや市場の店先にピラミッドのごとく積み上げられて売られています。また、馬車やロバ車の荷台にてんこ盛りにのせられて販売されていることも珍しくありません。

しかもお値段は大体10ポンド前後。当時のレートで換算すると、200円未満と驚くほど安いんです。ちなみに私が目にした最安値は、スイカ1玉5ポンド。1玉まるごとで100円以下って、日本では考えられません。サイズも片手で持てるような小さなサイズではなく、とても大きくて重いのです。

家の近くの市場へ買い出しに出かけた日のこと。馬車でどこかから運ばれてきたスイカが、荷台に山のように積み上げられて売られていました。1玉1玉が大きくて、見た目はとてもおいしそう。日本に比べたら驚くほど安いとはいえ、見ただけでは甘いかどうかはわかりません。オレンジやイチゴなどの小さい果物だったらとりあえず挑戦してみるのもいいのですが、スイカまるごと1玉……うーん……どうしよう。

考えながらじーっと眺めていたら、スイカ売りのおっちゃんが「味みていくかい?」と一言。「ラッキー」と思いながら、お願いすることにしました。おっちゃんは「試食させてあげるからちょっと待って」と言い、三日月のような鎌を取り出します(私が知っている果物包丁と違う……!)。そのままスイカをサクッ! と半月に切って、真っ赤な一切れを私に渡してくれました。

見た目は完全に熟していて、本当においしそう。食べてみたら、めっちゃ甘い! おいしいいいいい! 予想以上のおいしさに、テンションが上ります。これは1玉買ってもすぐ食べきれそうです。

甘くて美味しい! エジプトのスイカ

「おいしかった! 1玉ちょうだい」と声をかけると、おっちゃんは「まいどありー!」と、さっき切ったばかりのスイカを袋の中へ。おぉ……! さっき切ったやつ、試食したけど試食用じゃなかったのか!

これが日本なら、試食したやつは別に避けておいて、切っていない別のスイカを持たせるかも。でも考えてみたら、ここで食べて残りは家で食べるってことか。甘くておいしいのもわかったし、まあいいかなーという結論に至りました。

そんなわけで、まるごとのスイカ(-私が食べた1切れ)を抱え、えっちらおっちら帰った私でしたが、家路へ向かう途中、ふとした疑問が。「もし私が買わなかったら、この試食したスイカは売りもんにならないよね…?? 次の試食に回すのかな? それともおっちゃんが食べるんだろうか…?」

答えは聞けぬまま、その年のスイカシーズンは過ぎ去ったのでした。


おろぐちともこ
大学時代古代エジプトを勉強していたためエジプトの地を踏むこと6回。7回目に踏み入れた2011年より数年間エジプトで働く。
現在はエジプト人による日本語雑誌を中心に、漫画を描いたりアシスタントをしたりと、国境を越えて活動中。至上の喜びは、素敵なカフェで水タバコの煙をゆらしながら、ぼけっとお茶をすること。生活記Blogつぶえじでは、現地の生活の様子を不定期に発信している。