母親が仕事を続けることに疑問や不安が生じるのはなぜ?

桜が満開を迎え、自然と晴れやかな気持ちになる時期ですね。それでも4月から職場復帰する方にとっては、期待と不安の入り交じった複雑な心境があるのではないでしょうか。社会人になってから初めての長い休暇(といっても育児は休みなしですが)を過ごしている間に、働くことで得られる充実感にもあらためて気づく一方で、子どもと離れて過ごす生活がスタートすることに不安な気持ちもあると思います。

子どもがうまれた際、父親が仕事を継続することに疑問を持つ人は少ないのに、母親が仕事を継続するとなると、途端に疑問や不安が渦巻きはじめるのはなぜなのでしょうか。

周囲が抱く役割意識にモヤモヤするのは仕方ない

その背景にあると考えられるのが、私たち一人ひとりが持っている「役割意識」です。内閣府が実施した「女性の活躍推進に関する世論調査」(平成26年8月)によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に、「賛成」もしくは「どちらかといえば賛成」と答えた人は、全体の44.6%を占めます。前回の調査結果から比べると賛成意見は減っているものの、世論としては賛成派が依然として多いことが分かります。

この「家庭を守る」という表現には、暗黙の了解として、家事や子育て全般を担うことを含んでおり、もしこの調査結果が本当に世論を反映しているとしたら、働く女性にはとても強力なメッセージとして影響するでしょう。その結果として、「保育園に子どもを預けて働くなんてかわいそう」という意見や「預けてまで働く意味はあるのだろうか」といった迷いが生まれてくるのではないでしょうか。

自分自身は働こうと思っていても、夫が「家庭で子育てすべき」と思っていたら……。はたまた両親や義父母がそう思っていたら……。周囲が抱く役割意識を敏感に感じ取り、働きたいママがモヤモヤした気持ちになるのは無理もないことだと思います。周囲と違う考えを貫くのは誰にだって苦しいことですから。

自分の中には敵を作らないで

もし現状がそうだとすれば、これから復帰して働こうと思っているママの皆さんは、少なくとも自分の中には敵を作らないようにしてほしいと思います。「いま以上に頑張れ! 」という意味ではなく、力みを取って楽になるためです。というのも、ママ自身も無意識のうちに子どもを預けて働くことにネガティブな考えを持っていることが少なくありません。それが自分の中の敵となって自らを苦しめたり、周囲の協力を得る際の障害になったりするのです。

例えば、「子どもに十分愛情を注げていないのでは」とか「働いていても家事は私がやらなくては」とか、誰かに言われたわけでもないのに無意識のうちに思っている事ってないでしょうか。何かしらそういう部分があるのは当然だと思いますが、それらを一度ちゃんと表に出して向き合ってあげるプロセスが大切です。かく言う私も、復帰した直後は同じように悩んでいた事がありましたが、今は自信を持って「親になっても働き続けることに迷いも負い目もありません」と言えます。自分の中で無意識に持っている役割意識と向き合ったことがあるかどうかで、納得感は全然違ってきますよ。

最後に、保育士として40年以上認可保育所に勤め続けた私の義母の言葉を紹介します。私が保育園に子どもを預けて働くことに何となく罪悪感を抱いていた時、義母はこう言いました。「保育園では子どもと向き合うことが仕事。勤務中はずっと子どものことを考えて行動するの。でも私だって家にいたら、掃除に料理にやる事もあるし、ずっと子どもと向き合ってはいられないもの。保育園、いい所よ」。この言葉を聞いて、スッと心が楽になったのを今でも覚えています。そして、保育園がわが家の子育てに伴走してくれたからこそ、これまで無事にやってこられたのだと本当に実感しています。新生活の春、前を向いていきましょう!

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

ここるく 代表取締役 山下真実

「わが子を大切するために、ママが自分自身を大切にできる子育てスタイル」を提案し、人気のレストランが託児付きで楽しめるサービス「ここるく」を運営するママ起業家。
投資銀行や金融系コンサルなど金融業界でキャリアを積みつつ、2011年に第一子を出産。初めての子育て中に「今まで気にもとめていなかった当たり前の事が、産後は一 気にできなくなるんだ! 」と感じたことがきっかけとなり、現代に合った子育て支援を実現するため2013年に株式会社ここるくを設立。同サービス運営を通じて得られる働くママ達のリアルな視点とコンサル経験を活かして、企業に対する女性活躍推進コンサルティングを行う。

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