今回は、Wordの段落罫線について研究してみよう。段落罫線は、見出しの段落を飾ったり、囲み記事を作成したりする場合などに活用できるが、その仕組みは少々複雑である。上手に使いこなせるように、よく動作を確認しておこう。

段落罫線の指定

まずは、段落罫線を指定する方法から説明する。段落罫線を指定するときは、段落全体を選択し、「ホーム」タブで描画する罫線の位置を指定すればよい。

段落全体を選択し、罫線の位置を指定すると…、

その段落を囲む罫線を描画できる

描画する罫線の位置(上下左右)や線の種類/太さ/色を指定することも可能だ。この場合は、罫線のコマンドから「線種とページ罫線と網掛けの設定」を選択すればよい。すると、以下のようなダイアログが表示される。

罫線を細かく指定するためのダイアログ

ここでは、最初に「設定対象」が「段落」になっているかを確認しておこう。これが「文字」になっていると、段落全体ではなく、選択中の文字に対してのみ罫線が描画されることになる。

罫線の指定方法は、線の種類/太さ/色を選択してから、右側にある上下左右のボタンをクリックして罫線の有無を指定する。Excelで、「セルの書式設定」を使って罫線を指定する場合とよく似た操作方法といえるだろう。

たとえば、色に「オレンジ」を指定し、左に「6pt」の罫線、下に「1.5pt」の罫線を描画すると、以下の図のようなデザインの見出しを作成できる。見出しと本文の間隔が狭いと感じた場合は、見出しの段落で「段落」ダイアログを開き、「段落後」に1~2mm程度の間隔を指定しておけばよい。これで見出しと本文のバランスを調整することができる。

左に「6pt」の罫線、下に「1.5pt」の罫線を指定すると…、

このようなデザインの見出しを作成できる

このように、段落罫線は見出しのデザインを作成する場合などに活用できる。文章の段落全体を四角く囲んで、囲み記事を作成することも可能だ。色々と応用が効くので試してみるとよいだろう。

段落罫線とインデント

落罫線を使用したときに、罫線が左右に飛び出してしまうことを気にする方もいるだろう。たとえば1.5ptの罫線で段落全体を囲むと、以下の図のように本文の幅より少しだけ左右に飛び出して罫線が描画される。

1.5ptの罫線を描画した場合

このようになる原因は、もともとの文字の位置を維持したまま、段落全体を囲むように罫線が描画されるためである。初期設定では、文字と罫線の間隔が「左右4pt、上下1pt」に設定されている。したがって、左の罫線は「4pt+罫線の太さ」の分だけ左側に飛び出して描画されることになる。右の罫線も同様だ。

なお、文字と罫線の間隔は、段落罫線のダイアログで「オプション」ボタンをクリックすると確認できる。

文字と罫線の間隔を指定するダイアログ

ここで左右の間隔を0ptに変更すれば少しは改善できるが、罫線の太さの分だけ左右に飛び出すことに変わりはない。また、文字と罫線の間隔が狭くなりすぎるという問題も生じてしまう。

このような場合は、インデントを指定することにより問題を解決するとよい。たとえば、左右の間隔4pt、罫線の太さ1.5ptの場合、その合計となる5.5ptのインデントを左右に設けると、本文の幅に揃えて段落罫線を描画できる。

左右のインデントを「段落」ダイアログで指定すると…、

そのぶん文字が内側に配置され、段落罫線と本文の幅が揃うようになる

要するに、段落罫線の幅はインデントと連動している訳である。この仕組みを利用して、以下の図のように適当な長さの罫線を描画することも可能である。段落罫線の応用として覚えておくとよいだろう。

文字を「中央揃え」で配置し、左右に30mmのインデントを指定した場合の段落罫線

段落罫線の引き継ぎ

段落罫線でよくトラブルの原因となるのが、書式の引き継ぎだ。たとえば、以下の図(上)のように段落罫線を指定して適当な位置で改行すると、図(下)のように段落罫線が描画される。これを「自然な結果」と考えるかは微妙な判断を要することになる。

外枠の罫線を描画した段落を改行すると…、

このような結果になる

通常、段落の途中で改行を行うと、改行後の段落(2行目)にも前段落(1行目)と同じ書式が引き継がれるはずである。このルールに従うと、1行目と2行目にそれぞれ「外枠」の罫線が描画されることになる。よって、以下の図のように段落罫線が描画されるのが本来の姿といえるかもしれない。

段落罫線の書式が引き継がれていれば、こうなるはずであるが…

しかし、実際には「1行目の下」(2行目の上)の段落罫線は描画されない。では、「1行目の下の段落罫線は削除されてしまったのか?」というと、そうでもない。試しに段落罫線のダイアログを開いてみると、1行目の段落にも「下の段落罫線」がちゃんと指定されているのを確認できる。にもかかわらず「1行目の下」の段落罫線は描画されない…、という結果になる。

1行目の段落だけを選択し、段落罫線のダイアログを確認してみた様子

このような現象が起こる理由は、「Wordが気を効かせて自動処理を行っている」ことが原因だ。要するに、同じ書式の段落罫線が連続するときは、一番下の段落にのみ「下の罫線」を描画する仕組みになっているのである。これは「上の罫線」の場合も同様である。

では、2つの段落の間に罫線を引きたい場合はどうすればよいか? この場合は、両方の段落をまとめて選択し、「横罫線(内側)」の罫線を指定しなければならない。

複数の段落を選択してから段落罫線のダイアログを開くと、「横罫線(内側)」の有無を指定できるようになる

このような自動処理を“便利”と考えるか、それとも“混乱の原因”と考えるかは人によって意見が分かれるであろう。しかし、いずれの場合にせよ、「段落書式にはこのような特別ルールがある」と認識しておく必要があるといえる。

少し特殊なケースではあるが、Wordにはこのような特別ルール(自動処理)がいくつか存在する。その仕組みをよく理解していないと、「Wordが思い通りに動かない…」というジレンマに陥ってしまうのである。