【連載】

はじめての無線組み込み機器設計

4 電波法の規制と技適 その(1)

 

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1. 電波法は何を規制している?

無線電波は勝手に使うと混信や誤作動などで社会システムが大混乱しますので、電波法という法律で利用用途に応じて、使用する周波数送信出力が細かく制限されています。日本では総務省の電波監理局が周波数の割り当てや使用状況を監理しています。

周波数の割当表 (出典:総務省電波利用ホームページ)

ちなみに勝手に電波を使用するなどして電波法に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、人命財産に深くかかわる重要な無線通信(警察・消防・列車・電気通信事業者無線など)に妨害を与えた者は、5年以下の懲役または250万円以下の罰金となる場合があります。ところが現在、この罰則は製造者や販売者への規制ではなく利用するユーザーが罰せられるという法律なので、今後、海外から携帯電話等を持参する観光客の増加を念頭に、ユーザーには罰則がゆるくなる方向に、逆に製造・販売者には厳しくなる方向に法改正の見直しが進んでいます。

(1) 技適(技術基準適合証明)って何?

無線電波の使用者は原則、無線従事者免許証が必要で、無線局を開設して運用する場合は無線局免許が必要ですが、携帯電話や、コードレス電話、家庭用トランシーバー、無線LAN(Wi-Fi)、Bluetoothなどの無線機器は、免許が無くても誰でも無線ルータなどの機材設備の設置ができて、自由に使うこともできています。その理由は、特例として製品に技適マークが付いていれば免許が無くても日本国内で使用できるという法律があるからです。無線組込み機器を設計する場合は、技適マークの印刷されている無線モジュールを採用すれば特例が適用され、最終製品の再認証の必要も無いので問題ありませんが、技適マークの無い海外製の無線モジュールを採用すると、自分で技適マークを取得しなければ日本国内では違法になる場合があるので注意が必要です。技術基準適合証明は一台一台ごとに試験証明が必要ですが、大量生産機種向けには、機種(商品の型式・型名)毎に同じ番号の技適マークが付与される工事設計認証制度という同類の特例制度もあります。技適マークは日本国内の制度なので、海外に製品を持ち出す場合は何の効力もないので注意が必要です。

現在の技適マーク(H7.4~)(左)と旧タイプの技適マーク(S62.10~)(出典:総務省電波利用ホームページ)

(2) 免許も技適マークも不要な無線設備はある?

発射する電波が著しく微弱な微弱無線局の機器に該当する場合は、免許も技適マークも不要な上に周波数や用途の制限もありませんが、そのことを悪用して出力の大きな違法製品が出回ることがあるので、民間団体のJAAMA(全国自動車用品工業会)が自主的に微弱無線の認証マークの登録制度を実施しています。微弱無線には、自動車のキーレス、ワイヤレスマイク、おもちゃのラジコンやトランシーバーなどがあります。

微弱無線の認証マーク (出典:総務省 電波利用ホームページ)

微弱無線局の3mの距離における電界強度の許容値 (出典:総務省 電波利用ホームページ)

(3) 技適マークが付与される無線機器の種類は?

技適マークは携帯電話端末や、小規模な無線局に使用するための無線設備(特定無線設備)について、電波法に定める技術基準に適合していると認められる場合に特例として付与されます。無線組込み機器設計で使われる小規模な無線局としては次のようなものがあります。

特定小電力:医療用テレメータ、トランシーバー、移動体検知センサー、等
小電力データ通信システム:無線LAN、Bluetooth、ZigBee、等
PHSの陸上移動局
ワイヤレスカード(非接触ICカード)システム:RFID、等

などが対象になります。特定小電力は空中線電力が1W以下、小電力データ通信システムは、空中線電力が0.01W以下という規制値があります。空中線というのはアンテナのことで、空中線電力とはアンテナに供給する送信出力を言います。ちなみに携帯電話もバッテリの周辺を見ると技適マークが付いていますが、携帯電話は、携帯電話事業者が包括免許を取得して運用し、携帯電話本体には技適マークが印刷されるので使用者は特例として免許が不要なのです。この携帯電話を無線モジュールとして組み込んで、遠隔監視用の無線組込み機器を製品化している利用例もあります。

移動体検知センサーの適用例 (出典:総務省電波利用ホームページ)

(4) どこに行けば技適マークをもらえる?

技適マークは、総務大臣の登録を受けた登録認証機関が試験業務を実施して技適マークと登録番号を発行します。現在、登録認証機関には財団法人や民間機関の14法人があります。技適マークの申請条件に制約は無いので、誰でも申請できます。

登録認証機関:

  • 一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター(TELEC)
  • 一般財団法人日本アマチュア無線振興協会
  • 株式会社ディーエスピーリサーチ
  • テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社
  • 株式会社UL Japan
  • 株式会社イー・オータマなど

(5) 技適の試験項目は?

技適の試験項目や試験仕様については、ARIB(社団法人電波産業会)が総務大臣の指定機関として電波法に基づいて規格を策定しています。

試験の項目は、主に以下の項目になります。

  • 送信装置:周波数、占有周波数帯域幅(OBW)、スプリアス発射の強度、空中線電力、隣接チャンネル漏えい電力(ACPR)
  • 受信装置:副次的に発する電波等の限度
  • その他:混信防止機能、送信時間制限装置、キャリアセンス

占有周波数帯域幅(OBW) スペアナの測定例

無線組込み機器関連のARIBの規格仕様書としては、以下のようなものがあり、伝送方式変調方式も定められています。

STD-21 特定小電力無線局 医療用テレメータ用無線設備
    420MHz帯の医療用BANシステムが該当します。
STD-33 小電力データ通信システム/ワイヤレスLANシステム
    2.4GHz帯の無線LAN IEEE802.11bが該当します。
STD-T60ワイヤレスカードシステム
    13.56MHzのRFID、非接触ICカードシステムが該当します。
STD-T66 第二世代小電力データ通信システム/ワイヤレスLANシステム
    2.4GHz帯の無線LAN IEEE802.11b/gと Bluetooth が該当します。
STD-T106 構内無線局920MHz帯移動体識別用無線設備
    920MHz帯の高出力RFIDが該当します。
STD-T108 テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備
    920MHz帯のZigBeeが該当します。

他にも、用途や周波数、通信方式別に細かく規格仕様が分かれています。 ARIBの規格書はWeb上で公開されているので、誰でも無償で閲覧でき、規格書のダウンロードもできます。

著者紹介

中塚修司(なかつか・しゅうじ)
テクトロニクス社 アプリケーション・エンジニア

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インデックス

連載目次
第12回 最終章(まとめ) 無線組込み機器設計の手順
第11回 フィールド・トラブルの原因究明
第10回 机上での無線組込み設計評価 その(2)
第9回 机上での無線組込み設計評価 その(1)
第8回 アナログ変調信号とデジタル変調信号
第7回 スペアナの種類と測定の基礎 その(2)
第6回 スペアナの種類と測定の基礎 その(1)
第5回 電波法の規制と技適 その(2)
第4回 電波法の規制と技適 その(1)
第3回 無線組込設計の課題と測定機器の種類
第2回 電波・無線って何? 何を測定評価したらいいの?(2)
第1回 電波・無線って何? 何を測定評価したらいいの?(1)

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