こんにちは、阿久津です。第一回に引き続いてデスクトップ周りの新機能をチェックしましょう。Windows 7のユーザーインタフェースで大きく進化したのが、起動アプリケーションを視認するためのタスクバーです。そもそもWindows 95から実装されたタスクバーは、起動中のアプリケーションを切り替えやすくするために用意されました。OSのバージョンアップにより、クイック起動をはじめとするツールバーの追加や、通知領域(旧タスクトレイ)には非表示機能を搭載するなど、少しずつ機能拡張が行なわれてきたものの、これ以上の進化を望むのは難しかったのでしょう。

Windows 7では、それまでの方向性では限界が見えてしまったタスクバーにちょっとした機能を加えることで新たなユーザーインタフェースを実現しています。"起動したアプリケーションの状態を示す"ことが主目的だったタスクバーに、ピン止め(Pinned)機能を備えることで、単なる表示およびウィンドウ動作に留まっていたタスクバーにランチャー機能を備えることに成功しました。

具体的には起動したアプリケーションのボタンを右クリックすると表示されるコンテキストメニューから、<Pin this program to taskbar>を選択することでピン止めが可能になります。この状態で起動したアプリケーションを閉じてもタスクバーにボタンが残るため、ランチャーとして使えるようになるというもの(図1~2)。

図1: 起動したアプリケーションを右クリックすると表示されるコンテキストメニューから、<Pin this program to taskbar>を選択するとピン止めされます

図2: こちらはアプリケーションを終了した状態のコンテキストメニュー。ピン止めを解除するには<Unpin this program to taskbar>を選択します

実はこの機能、目新しいものではなく、スタートメニューにおける「よく使用するアプリケーション」から、お気に入りのアプリケーションとして登録する際の動作もピン止めですし、日本語版Windows XPにおける<[スタート]メニューにアイコンを追加>という項目は、英語版のWindows XPでは<Pin to Start menu>。つまりピン止め可能な領域を、スタートメニューからタスクバーに拡大したということです(図3)。

図3: 画面左は日本語版、画面右が英語版Windows XPのショートカットアイコンに対するコンテキストメニュー。ご覧のとおり、英語版ではスタートメニューへアイコンを登録する項目も<Pin to~>となっています

しかし、この新機能では、どのアプリケーションが起動しているのか一目で把握することができません。そのためボタンの表示形式を加工することで視認性を高めています。起動したアプリケーションはボタンを囲うようにフレームが、アクティブ化したアプリケーションは白色が加わり、複数起動したアプリケーションはボタンが重なり合うようになります(図4)。

図4: 画面の例ではフォルダがアクティブ状態。Firefoxが起動中、Internet Explorerが複数起動した状態です。そのほかのアイコンは起動していません

また、タスクボタンのラベルは初期状態で非表示ですが、プロパティダイアログにある「タスクバーのボタン」設定を変更することで、表示することも可能。もっとも同設定項目は、あくまでもボタンの結合に関する設定で、Windows XP/Vistaにおけるタスクボタンのグループ化に相当します。そのためボタンのラベルを制御する項目が独立するかわかりませんが、今春以降に登場するであろうRC(Release Candidate: 出荷候補)版での改善に期待したいと思います(図5)。

図5: 「タスクバーと[スタート]メニューのプロパティ」ダイアログ。<タスクバー>タブにある「タスクバーのボタン」のドロップダウンリストから<常に結合、ラベルを非表示>以外を選ぶと、タスクボタンのラベルが表示されるようになります

タスクボタンのサムネイルも、起動しているアプリケーション数によって変化するようになりました。Windows Vistaでは、複数のアプリケーションが起動していてもサムネイルはひとつずつでしたが、Windows 7では「Aero Peek」と称する新機能により、同種のアプリケーションに関するサムネイルは、ひとまとめに表示されるようになりました。拡張されたのはビジュアル面だけでなく、サムネイルにカーソルを当てるだけで対象アプリケーションを閉じたり、アクティブウィンドウを切り替えることも可能なため、ユーザーインタフェース面の改良も加わったと言えます(図6)。

図6: Windows Vistaではグループ化された複数のウィンドウも重ねて表示するサムネイルプレビュー機能でした。Windows 7では各ウィンドウのサムネイルが独立表示されます

さて、このタスクボタンを強力にアシストするのが「ジャンプリスト」。タスクボタンを右クリックすると表示されるコンテキストメニューに履歴アイテムを並べるというもの。従来のWindows OSでは、ウィンドウの位置やサイズの変更を行なう項目、アプリケーション独自のメニューが表示されていましたが、Windows 7では「ジャンプリスト」と名称を改め、コンテキストメニューの利便性を高める改良が行なわれました。例えばInternet Explorerならば、過去にアクセスした履歴情報がジャンプリストに表示され、使用頻度が高いと判断したアイテム(履歴)がある場合は、固定することも可能です(図7)。

図7: タスクボタンを右クリックすると表示されるジャンプリスト。IEの場合、アクセス履歴が表示され、ピンボタンをクリックすると固定リストに移動する

また、フォルダのジャンプリストは、頻繁にアクセスするフォルダのショートカットが表示されます。つまり、タスクボタンを右クリックし、アイテムを選択すれば、目的のファイルやサイトにアクセス(ジャンプ)できる情報(リスト)が追加表示されるようになったということです。もちろん、Windows 7の新しいユーザーインタフェースに対応していないアプリケーションがボタン表示されている場合は、ジャンプリストが表示されません(図8)。

図8: フォルダの場合も同じようにアクセス履歴が表示されます。IEと同じように固定することも可能。一方、ジャンプリストに対応していないアプリケーションの場合、履歴などは表示されません

ただ、確かにジャンプリストにより利便性は大きく高まりましたが、古いWindowsユーザーとって、"右クリックし、[C]キーを押す"といったショートカットキーを用いた操作ができなくなるのは実に不便。エクスプローラのように、アルファベットキーを押してリストの選択を行なえるので、タスクボタンのラベルと同じように、RCによる改善を期待したいと思います。

そろそろ誌面も尽きてきましたので今回はこの辺で。次回もWindows 7の新機能をチェックしていきましょう。

阿久津良和(Cactus)