今回のテーマは「Google」

先日開催された開発者向けのイベント、Google I/Oではインターネットの未来を感じさせるGoogleならではの取り組みが多数プレゼンされた。Web上では無数のサービス、企業が存在しているが、その中にあってGoogleの存在はとても大きい。彼らの動きによってオンライン上(最近ではオンラインに限らず)のビジネスは大きく変動している。

だから、Googleの動き、取り組みに注目することはビジネス上の戦略にも大きな意味をもってくる。彼らの動きを感じ、最適なサービスを提供することができれば大きなビジネスチャンスにつながる可能性があるのだ。今回はそんな「Google」に注目して最近のWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェアを紹介したい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Google Wave』 次世代型コラボレーション・プラットフォーム
Google Squared』 検索結果を表形式でレポート!
Gerrit』 Git用ソースコードレビューシステム
Page Speed』 Webサイト表示を高速化するための開発補助



次世代型コラボレーション・プラットフォーム

名称 Google Wave
URL http://wave.google.com/

Google Wave』は次世代型のコラボレーション基盤を目指すテクノロジだ。今、Twitterを中心にリアルタイムへの欲求が高まっており、さらにWebアプリケーションではコラボレーション機能が重視されるようになっている。こうした技術の中心になり得るのがGoogle Waveだ。

現在はまだ一般公開はされていない。気になる方はトライアルに申し込んでおこう

ベースはCometやXMPPといったチャット、インスタントメッセンジャーで利用されてきた技術を使い、XMLで相互通信を行う。Google Waveを使えば、様々なサービスを連携させ、メール以上に素早い情報交換が可能になるはずだ。

「Google Wave」はAPIを使って自サービスを対応させることができる

さらに相互にやり取りしたメッセージは履歴管理され、あとからコラボレーションに参加したユーザが、事の始まりまでさかのぼってやり取りを見返すこともできるようになる。まだテクノロジープレビューの段階ではあるが、コラボレーションの楽しみが広がりそうな技術だ。




検索結果を表形式でレポート!

名称 Google Squared
URL http://www.google.com/squared

Google Squared』はGoogle Labsにあるプロジェクトで、Googleの検索結果を表形式にまとめて表示してくれる。検索結果を表示する際、主立ったメタデータを集積し、カラムごとにまとめて表示してくれる。日本語には対応していないが、「Japan prefecture」といった単語で検索すれば日本の都道府県を並べつつ写真、説明、県庁所在地、人口なども一覧してくれる。

「Japan prefecture」で調べた所。人口などが並んで表示される

これは先日登場した検索エンジン「Wolfram|Alpha」を意識したものなのかもしれない。Labsという特性上、結果の正確性や網羅性はまだ不十分で、検索ワードによっては願った結果が返ってこないこともある。今後の改善、機能追加に期待したいところだろう。

「Web 2.0」という単語で調べた所。ソーシャル系のサービスが数多く並ぶ

知りたいことを調べるだけの検索エンジンから、知りたいことを整形し、レポーティングまでしてくれるようになっている。そうした情報をどのように活用していくのかが問われる時代になりそうだ。




Git用ソースコードレビューシステム

名称 Gerrit
URL https://review.source.android.com/

Gerrit』はサービスとは打って変わって開発者向けのシステムになる。Gerritは分散型バージョン管理システムGitで用いることができるソースコードレビューシステムだ。Google社内ではPerforceを用いているようだが、Googleがメインで開発を行っているAndroidでは、社外向けということもあってかGitをバージョン管理に利用している。そこで使えるのがGerritになる。

コミットの一覧。これをレビューしていく

差分を2画面表示で確認したり、コメントを付けたりすることができる。パッチセットのダウンロードも可能だ。レビューするユーザはコメントを付けたうえで、適用するか否かの判断が行える。遠隔地を含め、多人数でのソースコードレビューに役立つソフトウェアだ。

差分表示画面。コメントを付けることが可能

最近ではシステム開発でGitを利用するケースが増えてきている。社内でのソースコードレビューなどに用いるのに最適なソフトウェアと言えそうだ。




Webサイト表示を高速化するための開発補助

名称 Page Speed
URL http://code.google.com/p/page-speed/

Googleのページ表示高速化へのこだわりは半端ではない。Web検索は言うに及ばず、Webアプリケーションに至っては自社でWebブラウザを開発(Google Chrome)し、JavaScriptエンジンを搭載するくらいだ。Webアプリケーションが増えている現在、表示速度が速ければストレスなく長時間滞在して利用することもできるだろう。

Webアプリケーションの表示速度を高速化する上で役立つのが『Page Speed』だ。Firefoxアドオンである「Firebug」のプラグインとして提供されるソフトウェアで、Webサイトを表示した際にここを改善すべきだという点を指摘してくれる。

改善すべき点やその効果を一覧と数値で確認できる

たとえば、画像の場合は最適化、圧縮することでどれくらいのサイズ軽減を望めるか、JavaScriptを連結したり難読化することでどれくらいサイズが小さくなるかといったことを、数値をもとに提案してくれる。同様のツールに「YSlow」が知られているが、より具体的な分Page Speedはわかりやすい。

ネットワークの接続状態を表したグラフ

Webサイトが高速化されれば、ネットワークの帯域利用量は減り、表示速度は速まり、さらに多くのレスポンスを返せるようになる。アクセスの多いサービスほど効果的なので、ぜひPage Speedを使って改善してみよう。

いかがでしたか?

最近ではGoogle ChromeのLinux、Mac OS X版が開発者向けにリリースされるなど、Googleの攻める姿勢はまったく衰えを見せない。かつてはGoogleニュースやGmail、 Googleマップなどで類似サービスを戦々恐々の立場に追い込んできた感があるが、最近ではGoogle App EngineやOpen Social、Android、Google Waveなど他社との連携が重視されるプロダクトが増えてきている。

そうしたサービスが作り出す波に上手く乗れば、世界的なサービスを低リソースで提供することだってできるはずだ。とくに一歩、二歩先をいくテクノロジーを発表している最中だけに、その先端技術をいち早くキャッチして使いこなしてほしい。

著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)

1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。