今回のテーマは「ライティング(執筆)」

この連載も一年以上にわたって続けている。個人的なブログでも毎日記事を書いており、ほぼ毎日何かを書いている日々が続いている。皆さんも同じようにブログ、マイクロブログ、掲示板、企画書、仕様書作成など様々な場面で文章を書く機会は多いことだろう。

長い文章を効率的に書くには、標準で用意されているメモ帳やテキストエディタでは不十分だろう。ネタをストックしておく場所や、実際に書く際には集中して物書きに取り組める環境が必要だ。また、最近では個人ですべて書ききるのではなく、複数人でコラボレートしながら書くこともある。そして校正まで含めてオンラインですべてのやり取りを完了してしまう場合も多い。

今回はそのような「ライティング」に注目してWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)をご紹介したい。文章を書く場面が増えている方は、作業の効率化のためにも参考にしていただきたい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Writeboard』 シンプルなコラボレートメモ
Mixedink』 多人数での文書コラボレーション
Flashbake』 ライティング作業にバージョン管理を適用
WriteRoom for Google Docs』 Googleドキュメントを集中できる文書環境に



シンプルなコラボレートメモ

名称 Writeboard
URL http://writeboard.com/

Writeboard』は、Ruby on Railsの開発者で知られる37signalsによるWebアプリケーションだ。37signalsのWebアプリケーションは有料のものが多いが、Writeboardは無料で利用することができる。シンプルなノートアプリケーションで、複数人での編集(同時は不可)ができるようになっている。

複数人で編集できるシンプルなメモアプリケーション

簡単な記法が利用でき、太字やリスト、リンク、画像などを貼り込むことが可能。保存するごとに新しいバージョンに変わり、あとからふたつのバージョンを比較することもできる。ユーザ登録は不要。メールアドレスを登録し、メモ閲覧用のパスワードを設定すればすぐに利用できるようになっている。

異なるバージョン同士を比較することができる

RSSフィードを発行するので、文書の内容に変更があればすぐにわかるようになっている。なお、文書はHTMLまたはテキストファイルで保存できる。ドラフトをWriteboard上でみんなで作成し、それを別の文書に貼り付けるような使い方も考えられそうだ。




多人数での文書コラボレーション

名称 Mixedink
URL http://mixedink.com/

たとえば職場の数人でコラボレーションするのであれば、前述のWriteboardやGoogleドキュメントなどが利用できるだろう。だが、もっと大人数、数十人レベルになると文書の編集はうまくいかなくなる。同時に編集することはもちろん、同じ編集が繰り返されたり、誰かが好みで表現などを編集してしまうこともある。

そのような大人数での文書コラボレーションを実現するのが『Mixedink』だ。Mixedinkでは、元になる文章に対して何らかの編集を行った際、即座には反映されないようにしている。編集希望としてストックに入り、それに対して皆で適用するか否かをレーティングするのだ。そして多数の賛成を得られた時点で適用となる。

「Mixedink」のトップページ。有料サービスもあるが、無料でも利用可能(ユーザ登録必須)

レーティングする仕組みはソーシャルニュースなどで見られる手法だ。レーティングを意味のあるものにするくらいの人数が必要なので、あまり少人数では使えないだろう。だ、がWikipediaのような不特定多数による文書作成プロジェクトなど、適用できそうな場面は少なからずあるだろう。

文書作成画面。多人数での利用に向いたツールだ




ライティング作業にバージョン管理を適用

名称 Flashbake
URL http://bitbucketlabs.net/flashbake/

プログラマーの方であればバージョン管理システムのありがたさはよく知っているだろう。バージョン管理を使うことで、その時点のバージョンは適切に保存され、何か失敗したとしても元に戻せるようになる。上書きして元のファイルの内容を紛失してしまうようなこともない。そのバージョン管理をライティング作業に対して適用するのが『Flashbake』だ。

設定が終わればバージョン管理を意識することはない

Flashbakeは、設定ファイルにて指定したファイルを15分(変更可能)ごとに自動的にバージョン管理に保存していく。自動で保存してくれるので、書いている本人はとくにバージョン管理を意識する必要はない。ただし、バージョン管理システムにGitを用いているので、それをあらかじめ用意する必要はある。

ログを見ればその時のつぶやきなどがわかる

そしてバージョン管理に保存(コミット)する際に天気情報や指定したRSSフィード、Twitterでのつぶやきなどを同時に保存してくれる。これにより、あとでバージョン管理を見返した時に何を考えていたか、どういう状況だったのかなどが思い返せるようになる。書くネタをTwitterやブログに投稿しておくというのもよい。小説や書籍など、長い時間かけて文章を作成する場合などに便利そうだ。




Googleドキュメントを集中できる文書環境に

名称 WriteRoom for Google Docs
URL http://userstyles.org/styles/17366

ライティング作業は集中して行うのが効率的だ。そのためには不必要な情報から隔絶する必要がある。だが、コンピュータを使って文章を書いていると、メールの新着通知やWebブラウザの画面などが目に入り、そのたびに集中力が途切れてしまう。

そうした余計な情報からあなたを守ってくれるのが「WriteRoom」と呼ばれるソフトウェアだ。Mac OS X向けのシェアウェアではあるが、同様の仕組みをGoogleドキュメント上で実現するのが『WriteRoom for Google Docs』だ。

これがGoogleドキュメントの画面。あまりにシンプル

Webブラウザで動作するユーザスクリプトとして提供されているので、ユーザスクリプトへの対応はもちろん、Webブラウザによっては動作しないかもしれない。インストールするとGoogleドキュメントの表示がシンプルになり、物を書くだけであれば使わないロゴ、ツールバーなどが一切表示されなくなる。

ユーザスクリプトとしてインストールする

不要な情報が見えなければ、心を惑わされることはない。集中して一気に文章を仕上げたい場合などに便利なソフトウェアだ。

いかがでしたか?

ここ数年で技術者やデザイナーの方が経験を元に記事を書かれることが増えてきた。さらにブログなどを通じて情報発信されている方も多い。文章を書くための土壌は整いつつある。次のステップはいかに効率的な作成環境を用意するかだ。

一言でライティングといっても、文書の形式や最終的な出力先メディアなど様々な選択肢がある。それぞれの特性にあわせて、自分の使い勝手の良い環境を構築してほしい。

著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)

1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。