今回のテーマは「iPhone/iPod touch向け開発」

iPhoneやiPod Touch向けのネイティブアプリケーション開発や、最適化されたWebサイトの構築が各所で行われている。日本国内だけで見ればシェアはそれほど大きくないと言えるが、iPhoneユーザはパケット定額に入っているため、ネットワークを多用したアプリケーションが組めること、「App Store」を通じて世界にアプリケーションを公開できること、さらに課金システムも用意されていること、そして何よりも格好が良いことがあって世界中の開発者を虜にしている。

とは言え、iPhone/ iPod Touch向けアプリケーションの開発は特殊な点もあるので一筋縄ではいかないだろう。独自のインタフェースや開発に際しての注意点など、経験を必要とするものも多い。だが、それらの情報もインターネットを使えば収集できるものもたくさんある。

今回はそうしたiPhone/ iPod Touch向け開発者に向けた情報を提供するWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。これらのリソースを活用し、効率的に面白いアプリケーションの開発を目指してほしい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Reject Database for iPhone Developer』 アプリケーション審査でのリジェクトを共有
DoYouFeed.com』 WebサイトのフィードからiPhone/iPod Touch向けWebサイトを作成
iUnitTest』 iPhone/iPod Touch向けのユニットテストフレームワーク
iWebKit』 高品質なiPhone/iPod Touch向けWebサイトを構築する



アプリケーション審査でのリジェクトを共有

名称 Reject Database for iPhone Developer
URL http://iphone-rejectdb.appspot.com/

iPhone/ iPod Touch向けのアプリケーションを開発し、App Storeへ登録するには、Appleによる審査を通過する必要がある。そしてその審査で引っかかってしまい、修正を余儀なくされることが多々ある。審査結果に応じて修正を行えば審査を通過し、登録されるのだが、そもそもなぜ審査に落ちたのかという情報を共有しておけば余計な時間を回避できる。

そのような審査に引っかかった(リジェクト)情報を共有するのが『Reject Database for iPhone Developer』だ。例えば、プライベートフレームワークを使ってはいけない、iPhone xxxという単語を使ってはならないといった情報から、ページ読み込み中の動作に関する指摘など申請前にチェックしておくことで審査通過率を上げられる情報が多数登録されている。

エラー原因ごとに様々な情報が並んでいる

登録されているアプリケーションの一覧のような華やかなイメージだけではなく、このような失敗情報を共有するのもとても意義があることだ。他のユーザの失敗談を読んで自分のアプリケーションに磨きをかけ、それでも問題があった場合はReject Database for iPhone Developerで共有しよう。

詳細では解決方法まで見ることができる




WebサイトのフィードからiPhone/iPod Touch向けWebサイトを作成

名称 DoYouFeed.com
URL http://www.doyoufeed.com/

ネイティブなアプリケーションを開発したいと思う一方、ただ自分のWebサイトをiPhone/ iPod Touchに最適化したいだけという人も多いだろう。そのような方にオススメなのが『DoYouFeed.com』だ。このWebサイトでは、RSSフィードを使ってiPhone/ iPod Touchに最適化されたWebサイトを生成してくれる。

フィードを設定すればすぐに専用のWebサイトができあがる

一覧表示で日本語のタイトルが切り取られる際に末尾が文字化けるが、それ以外は日本語が問題なく利用できる。画像もそのまま表示され、URLを「Twitter」に投稿したり、次の記事/前の記事にの移動、メールで友人に知らせることもワンクリックでできる。

生成されたWebサイト。画像も日本語も表示される

専用のJavaScriptが用意されており、それを読み込むとiPhone/ iPod Touchだった場合に、DoYouFeedに遷移するかどうかのポップアップが表示される。多機能ではないが、ブログやWebサイトが見やすくなる便利なWebアプリケーションだ。




iPhone/iPod Touch向けのユニットテストフレームワーク

名称 iUnitTest
URL http://github.com/katsuyoshi/iunittest/tree/master

ソフトウェアを開発するうえでテストは欠かすことができない。とは言え、限られた開発プロジェクトの中で削られやすいのがテストの時間だ。そのためにも考えたいのがテストを自動化する仕組みで、有名なものとしてはユニットテストが知られている。

JavaやPHP、Ruby、Perlなどプログラミング言語向けに各種ユニットテストフレームワークが開発されているが、iPhone/ iPod Touch向けにもついに登場した。それが『iUnitTest』だ。iUnitTestではテストフレームワークを組み込んでネイティブなアプリケーションを生成する。

問題なく終わった場合はグリーン表示

失敗した場合は黄色くなる

あとはそのアプリケーションがiPhoneシミュレータ上で起動し、テストを実行する。全てのユニットテストに通ればグリーンで表示されるが、失敗があればイエローになる。これをもとに、オールグリーンになるようにシステムを修正していけばよい。より品質の高いiPhone/ iPod Touchアプリケーションを開発するためにも利用したいソフトウェアだ。




高品質なiPhone/iPod Touch向けWebサイトを構築する

名称 iWebKit
URL http://www.iwebkit.net/

ネイティブアプリケーションを配布するまでもなく、新規はもちろん既存のWebサイトをiPhone対応化したいといった場合に使いたいのが『iWebKit』だ。iWebKitを使うと、右に移動していくナビゲーションや、テキストや画像を組み合わせたリスト、履歴を覚えておいてくれるナビゲーション機能などが手軽に組み込むことができる。

iPhone/ iPod Touch向けのWebサイトが作りやすくなるフレームワーク

このような色分けされたポップアップも可能

さらにフルスクリーン表示やボタンに色をつけたポップアップ機能もある。ほかには、iPhone/ iPod Touch内の地図、App Store、SMS、電話、YouTube、iTunesへのリンクサンプルも用意されている。ネイティブなアプリケーションとの連携も簡単にできる。将来的にはテーマ機能もサポートされる予定だ。

ネイティブアプリケーションに比べると制限のあるWebサイトではあるが、CMSやニュースサイトであればSafariでも十分なサービスが提供できるはずだ。さらにこの場合はApp Storeのような審査もなく、既存のWebサイトから告知をするだけですぐに始められる手軽さがある。

いかがでしたか?

iPhone/ iPod Touch向けのアプリケーション開発は日本国内だけでなく、世界中で行われている。さらに多数の情報がインターネット上に散在し、問題の解決もすばやく行える。App Storeでは課金のシステムが用意されており、生計を立てるまでのヒットとはいかなくても、広告に頼らないソフトウェアを提供することもできる。

また、自分のブログをiPhone/ iPod Touchに最適化したり、Webサイトを作るのであればプログラマでなくとも始められる だろう。さあ、ネイティブアプリケーションかWebサイト、興味を持ったほうから開発にチャレンジしてみよう。

著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)

1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。