今回のテーマは「ドロー」

Webアプリケーションが続々と登場し、それまでローカルアプリケーションとして提供されていたアプリケーションがWebブラウザ上で動作するようになっている。まるでローカルアプリケーション並みの機能をもち、代替になり得るものもあれば、インターネットを活かしてコラボレーションやストレージに力を入れるものもある。

Webアプリケーションが得意とする分野はいくつかあるが、あまり出回っていないのがドロー系のWebアプリケーションだ。配置したものをオブジェクトとしてあとから大きさや色を変更できるものや、ベジェ曲線のような複雑なものもあり、Webブラウザ上で実現するのは難しいのかもしれない。

だがそんなドローの役立つ場面は多数ある。フローチャートやネットワーク図を描いたり、場合によってはイラストを描くこともできるかもしれない。さらにそうしたドローが共同で編集できれば、今までは分かりにくかった内容もビジュアル的に確認できる。

今回は"ドロー"をキーワードにWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。実用性の高いサービスやライブラリが見つかるはずだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
gliffy』 Visio並みの操作性を持つドローアプリケーション
Litha-Paint』 Webベースのドローアプリケーション
JGraph X』 Visio並みの機能が体験できるグラフィックスコンポーネント
DrawBerry』 Mac OS X向けのオープンソースドローアプリ



Visio並みの操作性を持つドローアプリケーション

名称 gliffy
URL http://www.gliffy.com/

gliffy』はFlashで作られたドローWebアプリケーションで、さまざまな用途で使えるテンプレートが提供されている。フロア図、フローチャート、UML、ER図、ネットワーク図、ユーザインタフェースなどだ。まるでMicrosoft Visioに近い印象すらあるアプリケーションだ。

gliffyのトップページ。フローチャートやUMLなどの様々なドローが描ける

オブジェクトはドラッグ&ドロップで配置し、線で結びつけることができる。もちろんその後にオブジェクトを移動すれば線も自動的に追従するようになっている。オブジェクトの大きさはマウス操作やプロパティからの変更が可能だ。

Webアプリケーションとしては一般的なコラボレーション機能によって、ひとつの図を複数のユーザで修正することもできる。ローカルアプリケーションのようにひとりで作成しているのとはまた違う利用法が考えられそうだ。できあがった図はSVGやPNG、JPEGといった形式で出力することができる。

作成した図。日本語も利用できる。バージョン管理も自動で行われる

図は自動的にバージョン管理されるので、簡単に以前のバージョンを呼び出すことができる。なお、gliffyは有料のWebアプリケーションであり、無料の場合は公開必須の図が5つまで作成できる。月額5ドルから使えるので、高価なローカルアプリケーションを購入するのをためらわれる方はgliffyがよさそうだ。




Webベースのドローアプリケーション

名称 Litha-Paint
URL http://litha-paint.com/

Litha-Paint』はFlashではなくJavaScriptベースで作られたWebベースのドローアプリケーションだ。線を引く、ベジュ曲線を描く、円や四角を配置する、文字を書くといったことができる。JavaScriptである分、動作は軽快だ。

「Litha-Paint」のトップページ。Iintenet Explorer/ Firefox/ Opera (Safariも可能)で動作するデモがダウンロード可能

線種の変更や、ドラッグ&ドロップによる配置変更なども簡単にできる。フォントはあらかじめ決められたものだけが使えるようになっており、日本語の入力は不可。画像を取り込むことができ、完成した図はPNG/JPEG/SVG/TIFF形式で出力できるようになっている。

作成している画面。ベジュ曲線が利用できる。コンテクストメニューも専用のものになる

なお、Litha-Paintは2007年の時点でほぼ活動を停止しており、一時はeBayに売りに出されていたらしい。現在は新しいライセンスを提供し、メールを送ることでバイナリやソースの提供を受けられるとのこと。デモであれば公式サイトからダウンロードができ、そのエンジンを試すことができるようになっている。気になる方はダウンロードして試してみよう。




Visio並みの機能が体験できるグラフィックスコンポーネント

名称 JGraph X
URL http://www.jgraph.com/jgraphx.html

JGraph X』は単体で使うアプリケーションではなく、Javaでグラフィックスを扱うためのコンポーネントだ。だがその性能を確認するためのデモアプリケーションがすごい。まるでVisioのようなインタフェースと操作性を持ち合わせている。

作成している例。多彩なオブジェクトがドラッグアンドドロップで配置できる

さまざまなアイコンが提供されており、ドラッグ&ドロップで配置してそれらを線で結ぶことができる。ウィンドウ上部にはツールバーが並び、容易に編集できるようになっている。また、左下にはサムネイルが表示され、大きな図でも簡単に全体像が把握できる。

オブジェクトも多彩に用意されている

UMLのような開発者向けの図はもちろん、フローチャートのような描画もできる。図は独自形式のほか、PNGやJPEGといった画像、SVGなどでの保存ができるようになっている。アプリケーションインストールの手間もなく、Java Web Startを使ってすぐに試すことができるのも魅力だ。日本語が使えるので、ちょっとしたフローチャートであればすぐにできてしまうのではないだろうか。




Mac OS X向けのオープンソースドローアプリ

名称 DrawBerry
URL https://launchpad.net/drawberry

画像編集のフリーウェアやオープンソース・ソフトウェアはいくつかあるが、ドロー系のアプリケーションとなるとまだ数はそれほど多くない。『DrawBerry』はその中でも珍しい、使い勝手の良いドローアプリケーションだ。

全体図。画像の入れ込みや文字の回転など様々な機能がある

起動するとウィンドウがひとつとパレットが複数表示される。ツールパレット、操作履歴、レイヤー、ページ情報、オブジェクト情報の5つ。自由線、ベジェ曲線、丸や四角、フォントといったツールが利用できる。オブジェクトにあわせて文字が配置できるので、ベジェ曲線にあわせて文字も描ける。

作成した図の例。画像やSVGなどで出力できる

オブジェクト情報は、線の終端に矢印をつけたり、オブジェクトに影を付けたりすることができるほか、文字の回転もサポート(日本語利用可)。PSDやSVG形式での出力が可能で、日本語もきちんと出力される。

ごくシンプルながら機能は十分。かつ動作は軽快で、魅力的なドローアプリケーションだ。

いかがでしたか?

ドローは個人でもビジネスの場でもさまざまな場面で利用される。が、デザイナーの方であればまだしも、利用頻度の割に高級なソフトウェアが多いのも事実だ。それほど頻繁に利用しないならWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェアの活用で十分耐えられるのではないだろうか。

また、ローカルアプリケーションが個人用であるのに対して、Webアプリケーションであれば複数人でコラボレーションしながら作成することもできる。これもまた魅力のひとつだ。ネットワーク図やUMLを複数人で一気に仕上げたり、チャットで質問に答えながら詳細を書き込んでいったりすれば、これまでにないドローの使い方が出てきそうだ。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。