今回のテーマは「iPhone/iPod touch」

7月11日の発売以来、未だに熱が冷めやらないiPhone 3G(以下、iPhone)。これまでの携帯電話以上にさまざまな種類のアプリケーションが出回り、3Gネットワークや無線LANと組み合わせてインターネットを楽しめるデバイスとあって、すでに入手済みの方は思い思いに楽しんでいることだろう。

iPhoneの魅力は、いわゆる標準機能だけで利用するのもよいが、さまざまなiPhone専用のWebサービスやアプリケーションと組み合わせて真価を発揮する点にある。とくにデバイスが世界共通とあって、世界中のユーザーたちのアイディアがiPhoneに注ぎ込まれている。まさにiPhoneは使えば使うほど、時が経てば経つほど新しい魅力が感じられるはずだ。

今回はそんなiPhone(またはiPod touch)のためのWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。お持ちの方はさらに楽しむため、お持ちでない方は購入のきっかけ(?)にしていただきたい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
InstaMapper』 位置情報をリアルタイムトラッキング
NuevaSync』 GoogleカレンダーとiPhoneを同期できる!
iPhone Universal』 iPhone/iPod touch向けHTMLテンプレート
iPhoneRemote』 iPhoneのSafariからMac OS Xをリモート操作



位置情報をリアルタイムトラッキング

名称 InstaMapper
URL http://www.instamapper.com/

iPhoneの魅力のひとつが位置情報のトラッキングだ。他の携帯電話にも実装されているが、インタラクティブに楽しむという点ではとくに優れている。そのためのアプリケーションが『InstaMapper』だ。InstaMapperではあらかじめデバイスを登録し、さらに専用アプリケーションをApp Storeからダウンロードすることで、位置情報を常時送信して地図上にマッピングすることができる。

「InstaMapper」のトップページ。利用は会員登録が必要(無料)

マッピングされたデータは逐次見ることができ、カーナビのように今どこにいるかが分かるようになっている。また、登録データをWeb上で確認したり、KMLやCSV形式で出力したりすることが可能。GPSトラッキングするソフトウェアは有料のものが多いが、こちらは無料で利用できるのがよい。データを柔軟に加工できるのも魅力だ。

「InstaMapper」のデモ。リアルタイムで車が移動するのを追える

複数のデバイスを登録できるので、仲間内でiPhoneを登録し合っても面白いかもしれない。位置情報をリアルタイムでトラッキングできると新しい遊び方がうまれそうだ。

「InstaMapper」用のGPSトラッキングソフトウェアをインストールして使う




GoogleカレンダーとiPhoneを同期できる!

名称 NuevaSync
URL http://www.nuevasync.com/

iPhoneはカレンダー機能やアドレス帳機能を搭載しており、これらのデータは母艦PCや他のWebサービスなどと同期させると便利だ。そこでAppleでは「MobileMe」というWebサービスを通じてiPhoneや各種デバイス、サーバ間で、メール/アドレス帳/カレンダーのデータを同期するサービスを提供している。これは便利なサービスだが、年間9,800円の利用料がかかるため、コストを意識して加入を躊躇している人も多いのではないだろうか。

そこで試してみたいのが『NuevaSync』だ。これはMicrosoft Exchange同等の機能を提供するWebサービスで、執筆時点(8月12日)では、「Googleカレンダー」と「Gmailのコンタクト情報」を同期元として、iPhoneの「カレンダー」と「連絡先」に同期できるようになっている。どちらも個人で利用している人は多いだろう。

「NuevaSync」のトップページ。会員登録は無料

iPhoneには元々Microsoft Exchangeと同期する機能があるので、それを使うことでMobileMeレベルのサービスをフリーで利用できるようになる。現状では対応していないが、メールのプッシュ配信機能やタスクの同期機能もリストアップされているので、今後に期待がかかるサービスといえる。

「NuevaSync」の設定画面。ごくシンプルな構成

GoogleカレンダーやCalDAVに対応したとあって、筆者の環境ではiCal+CalDAVを使ってGoogleカレンダーを更新し、そのデータをNuevaSyncを使ってiPhoneに同期している。アドレス帳も同様だ。Webサービスと同期できれば、母艦PCとのデータ同期も容易でiPhoneがPDAレベルに便利になるはずだ。

iPhoneはExchangeを利用するとして設定する




iPhone/iPod touch向けHTMLテンプレート

名称 iPhone Universal
URL http://code.google.com/p/iphone-universal/

さて、そんな魅力的なガジェットであるiPhoneではあるが、そうなると開発者は自分でもアプリケーションを作ってみたくなるだろう。ネイティブなアプリケーションを作ってもよいが、さらに簡単なものとなるとWebアプリケーションが考えられる。

ただ、これまでのWebアプリケーションのデザインだとiPhone上では使い勝手が悪い。iPhoneに最適化できれば、スライド機能やボタンなどもリッチで便利なものになるだろう。その手助けになるのが『iPhone Universal』。HTMLとCSSを組み合わせたiPhone/iPod touch向けのHTMLテンプレートだ。

さまざまなサンプルが参照できる。これらを使えば容易にiPhone風に仕上げられる

iPhone Universalを使えば既存のWebアプリケーションをiPhone/iPod touch向けにすることも容易になるはずだ。また、新規でWebアプリケーションを開発するのもラクになる。iPhone向けWebアプリケーションを開発する際にはぜひ使ってみてほしい。

複数のフォーマットを組み合わせたリスト。スライダのパターンもある

ボタンパネル。色を変えて表示できる




iPhoneのSafariからMac OSXをリモート操作

名称 iPhoneRemote
URL http://code.google.com/p/telekinesis/

iPhone/iPod touch向けのApp StoreにはVNCアプリケーションが提供されている。これを使えばWindowsやMac OS X、Linuxといった各種コンピュータを遠隔操作することができる。だが、小さなiPhoneの画面から細かな操作を行なうというのは難しい。

バッチ処理を実行したり、音楽の操作をしたりといった簡易的な操作であれば、『iPhoneRemote』を使ってみたい。これは母艦(Mac OS X)で起動するソフトウェアで、iPhoneRemoteが5010ポートでWebサービスを立ち上げる(SSLを利用している)。そこにiPhone/iPod touchからアクセスすることで、Mac OS Xをリモート操作できるようになる。

「iPhoneRemote」のメイン画面。デフォルトで5010でサービスが立ち上がる

たとえば、アプリケーションの起動/iSightの操作/ファイルの閲覧/スクリプトの実行といったことができる。他にもSpotlightを使った検索やターミナルを使う専門的な操作、VNCのように母艦の画面を閲覧、操作することも可能だ。VNCよりも若干機能的に制限されるかもしれないが、機能は十分だ。iPhoneの画面や処理能力を考えると現実的な解決策ではないだろうか。

iPhoneからアクセスしたところ。カメラやアプリケーションなど様々な操作が可能

母艦のファイル一覧。画像やPDFは閲覧できる

いかがでしたか?

iPhone/iPod touchにはネイティブアプリケーションを提供するApp Storeの存在があり、多種多様、実に多くのアプリケーションが存在する。それらをインストールして自分だけのiPhoneの楽しみ方ができるのが魅力だ。

世界中で数百万ユーザーがすでにiPhoneを持っている。また、Microsoft Exchangeとの連携もウリとなっており、企業向けでの利用も今後さらに拡大していくだろう。利用者として楽しむのもよいが、開発者としてiPhoneの世界でサービスを提供してみるのもまた面白そうだ。ぜひ、あなただけの楽しみ方を探してみてほしい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。