今回のテーマは「仕事探し」

スタートアップ企業をはじめ、IT系企業では他の業種に比べると転職経験者の比率が高い傾向にある。Web系の技術は日進月歩で進化し、日々新しいWebサービスや技術が登場している。その中で自分の興味のある技術を追求したり、それにトライする企業に参画したりするために転職することが広く行なわれている。

数年前までは大手の求人サイトを使って仕事を探すことが多かったが、最近では人づての紹介、ジョブボードと呼ばれるブログなどで紹介される求人情報を使って転職をする人が増えている。大手転職サイトに比べるとセグメントがごく細かなものになるが、それが逆に対象者を特定するのに役立っている。

今回はそうした仕事探しに役立つWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。大手サイトを使った仕事探しとはまた違う、新しい形のワークスタイルが見えてくるはずだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Jobster』 求人/求職者用SNS
mirRoR』 Rails専門の求人情報
JobberBase』 オリジナルジョブボードを作ろう
JobberRails』 Rails製のJabberBaseクローン



スキルを活かしたい! 職業マッチング用SNS

名称 Jobster
URL http://www.jobster.com/

Jobster』は求人、求職者に特化したSNSだ。ユーザは必ずしも職探しをしている必要はなく、経歴を登録して自分に合った求人があるまで待っていてもよい。求人情報は、一件につき99ドルから掲載できるようになっている。そして求人側、求職側ともにスキルタグと呼ばれるタグクラウドを設定するのが特徴だ。そのマッチング率によって、適した仕事が見つかったなどの案内が出るようになっている。

「Jobster」のトップページ。公開型のSNSで誰でも登録できる

SNS的な機能もあり、動画やリンクの登録、友人の招待などができる。特化型のSNSということもあって、Facebookと連携して動作することだってできる(完全な競合ではない)。

プロフィールページ。友人を登録してSNSとしても利用できる

転職というものは、転職しようと思って行動する場合と、ちょうどマッチするスキルを求められて行動するものとが存在する。Jobsterはどちらかと言えば後者、求人側が求めてきたものに対してマッチングする形式になる。実名必須のため、日本で流行らせるのは難しいかもしれないが、面白い試みのWebサービスだ。




Rails開発者に特化した求人情報

名称 mirRoR
URL http://mirrorplacement.com/

求人サイトの中から自分に合った情報を探す際、技術者であれば自分の持っている技術をベースに探していくことだろう。そうやってフィルタリングしてみると、意外とマッチしている求人情報は少なかったりする。膨大な情報の中からちょっとの情報を探すくらいなら、はじめからフィルタリングされているほうが価値は高くなる。地域の求人情報はその典型だ。

mirRoR』はまさにそのためのWebサービスで、Railsに特化した求人情報を掲載している。スタートアップ企業が多い中、さまざまなジャンルのアプリケーションがRailsで開発されようとしており、そのための開発者を欲している。Railsを使った開発を行ないたい人であれば、ここを見れば容易に自分にマッチした情報を探し当てられるはずだ。

「mirRoR」のトップページ。地域がカテゴリとして利用できる

同じようなケースはRailsに限ったものではないだろう。プログラム言語、資格、ハードウェアなど技術要素ごとにサイトを分ければ、費用対効果もマッチング率も高くなる。大手の求人サイトがマス的なものだとすれば、特化型の求人はニッチな市場で響くはずだ。

求人詳細。文字情報のみのシンプルな説明




PHP製のジョブボードを自作できる

名称 JobberBase
URL http://www.jobberbase.com/

一年くらい前からはじまっているのがジョブボードと呼ばれる試みだ。大手とは違い、ブログなどのサイドバーに掲載するジョブボードは、ブログの読者層にマッチした求人情報を掲載することでマッチング率が高くできる。また、求人サイトが転職したい人という層をターゲットにしているのに対し、ジョブボードはそのサイトに興味がある層に対してアピールできるのがメリットだ。

そんなジョブボードをオリジナルで作成できるのが『JobberBase』。PHP+MySQLで作られたオープンソース・ソフトウェアで、ジョブ一覧や検索が基本機能になる。ある求人情報にユーザが申し込むと当該案件のポイントが加算され、求人情報リストの並び順がDigg.comのようにポイントに応じて上位に出るようになっている。

トップページ。求人一覧が表示される

ウィジェットを配布しているので自分のブログに貼り付けたり、Web APIを利用してデータを取得したりすることが可能だ。オリジナルのジョブボードを使って、新しい求人手法に挑戦してみてはいかがだろう。

求人情報作成画面




RailsベースのJobberBaseクローン

名称 JobberRails
URL http://jobberrails.comingsoooon.com/

優れたコンセプトのソフトウェアには"クローン"が存在する。上記で紹介したJabberBaseのクローンが『JobberRails』だ。名前のとおり、Railsベースで開発されている。執筆時ではまだバージョンが0.1とあって、足りない機能は多い。

求人情報登録画面

ただし、同じコンセプトのソフトウェアであっても、プログラム言語が異なるとその内容も異なってくる。また、もしRails開発者向けの求人サイトを作るならRailsで作ったほうがよい。同様にPython/Java/Perl/ActionScriptなどの派生も考えられそうだ。

求人情報の詳細画面

基本機能はジョブの一覧と検索、そして応募となっている。そもそも大事なのは、求職情報をいかにして集めるという点。新たな開発を要することなくシステムを導入できれば、その構築費用をマーケティングや営業費用に振り分けられるようになる。ジョブボードシステムを構築する際には注目のソフトウェアだ。

いかがでしたか?

仕事は個人の生活を支える基盤だ。そのため、より良い条件、自己実現のために転職を行なう人も多い。数年前に比べるとずいぶん雇用体系も柔軟になってきたようだが、まだまだ流動性は一部に限られている。その流動性がもっと高まっていけば、企業におけるつなぎ止めの施策や条件も見直され、より良い職場環境につながるかもしれない。

今回紹介したい求職/求人向けSNS、ジョブボードなどはいわばニッチな求人手法だ。だが大手求人サイトに負けない魅力がたくさん詰まっているのは間違いない。これまでにない新しい手法を使って、新しいワークスタイルを生み出してみよう。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。