今回のテーマは「オフィススイート」

ビジネスの場でもっともよく使われるソフトがオフィススイートだろう。ワードプロセッサ、表計算、プレゼンテーションなどは誰でも頻繁に利用するものばかりだ。これまではローカルアプリケーションが利用されてきたが、状況は徐々に変わってきている。ローカルアプリのWebアプリケーション化が進み、オンラインのオフィス系アプリが使われる場面が増えてきている。

そこで今回はWebアプリケーションのオフィススイートやそのWebアプリケーションを便利にしてくれるユーティリティを紹介したい。これらのツールを活用すれば、オフラインだけで使ってきたオフィススイートがさらに便利になるはずだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
buzzword』 アドビ システムズのFlashワードプロセッサ
OnSheet』 多数機能を備えたオンライン表計算
ZK Spreadsheet』 OSSのWeb表計算
GDataCopier』 CUIでGoogleドキュメント操作



Flash製のワードプロセッサ

名称 buzzword
URL http://buzzword.acrobat.com/

『buzzword』はFlash製のワードプロセッサだ。元々はアメリカのスタートアップ企業が提供していたサービスだが、Adobe Systemsが買収した。現時点ではβ版であり、日本語が利用できない。画像、テーブル、ヘッダ/フッタ、改ページといった機能がそろっている。

編集中の画面。Mac OSXでは日本語が利用できなかった

オンラインのサービスとあって、他のユーザとの共有機能やコメント機能もある。保存機能ではDOC/RTF/HTML形式をサポートしている。Flashベースのサービスなので、Ajax以上にWebブラウザとの互換性は高くなりそうだ。また、Adobe AIRの技術を使えばオフラインでの利用も考えられる。今後に期待できるWebアプリケーションだ。

別名で保存時には各種形式で保存できる




日本製のWeb表計算アプリケーション

名称 OnSheet
URL http://www.onsheet.net/

『OnSheet』はインフォテリア・オンラインが提供するWebアプリケーションで、Microsoft Excelのような表計算ツールだ。Ajaxを使って開発されており、簡易的な計算式はもちろん、グラフの生成にも対応している。

ウィジェットの作成が可能で、グラフやシートをブログに貼り付けられる。ほかにもiPhone/iPod Touchで閲覧、編集することができるほか、バージョン管理機能を備えている点も特徴だろう。他のユーザとの共有機能や、マッシュアップ機能によって他のWebサービスのデータを取り込むことができるといった点は、オンラインのサービスならではの機能である。

「OnSheet」のトップページ。さまざまな特徴が紹介されている

インポート/エクスポートは、ExcelやOpenDocument形式に対応しているので、既存の資産を活かすという課題も容易にクリアできるだろう。昨今のビジネスシーンでは、複数ユーザーとの共有、iPod Touchや外出先での閲覧といった機能が役立つシーンは非常に多い。ぜひ一度触ってみていただきたい。

マッシュアップ機能を使えば、さまざまなWeb APIからデータを取れるようになる




Excelファイルを操作できるAjax表計算アプリケーション

名称 ZK Spreadsheet
URL http://jp.zkoss.org/

Webアプリケーションは便利ではある。ただ、その利用に際して問題になるのが既存資産の扱いだ。その問題を『ZK Spreadsheet』ではそのまま利用するという方法で解決してくれる。ZK SpreadsheetはJava製のWebアプリケーションで、元になるファイルとしてExcelファイルをそのまま利用することができる。グラフなどの類は表示できないが、計算式は埋め込んだままで再利用可能だ。

まるでローカルアプリケーション並みの表示

Ajaxを使い、使い勝手も非常によい。画面は見やすく構成され、一部については日本語化も実現している。ライブラリとして既存のシステムへ組み込めば、社内の資産を便利に活用できることだろう。社内の基幹システムでは表計算機能を求められることが多々ありえる。そうした時にも便利に活用できるソフトウェアだ。

画像表示も可能




Googleドキュメントとローカル作業をうまく連携させる

名称 GDataCopier
URL http://code.google.com/p/gdatacopier/

Webアプリケーションのオフィススイートで一番有名なものと言えば、「Googleドキュメント」だろう。実際利用されている方も多いはずだ。筆者もそのひとりだが、イチからオンラインで作成するのは面倒だ。個人的な利用法ではあるが、まず最初のドキュメントはオフラインで作成し、それをアップデートして編集するという使い方をしている。

その場合、もうひとつ面倒になるのがアップロード作業だ。作成したドキュメントを手動でアップロードしてもよいが、ここはひとつ『GDataCopier』を使った簡単アップロードを推奨したい。GDataCopierはローカルとGoogleドキュメントとをシームレスに連携させてくれるソフトウェアだ。コンソール上で利用するもので、Linux向けのコマンドで言う「cp」をモチーフとして開発されている。

ドキュメントのリスト。日本語も表示できる

アップロードはもちろん、ダウンロード時には形式や種別(ドキュメントまたはスプレッドシート)を指定することができる。登録してあるドキュメントをすべてPDF形式でダウンロードするといった具合だ。また、最近更新したファイルだけのアップロードも可能。Googleドキュメントをよく利用する人にオススメのソフトウェアだ。

すべてのドキュメントをPDFとしてダウンロードしているところ

いかがでしたか?

職場ではオフィススイートを多用する。ローカルアプリとしての使い方が当たり前になっているが、作成したファイルをメールで送る際に不便さを感じている人は多いはずだ。その点、オンラインのWebアプリケーションであれば作成して即共有することも容易だ。さらに言えば共有を通じてこれまでのローカルベースとは違う価値観が生まれたりする。

だが既存の資産をうまく活用したり、できるだけ手軽に移行させる方法が必要なのも確かだ。今回紹介したWebアプリケーションを活用するためにもオープンソース・ソフトウェアや周辺ユーティリティを上手に使ってほしい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。