今回のテーマは「プレゼンテーション」

日頃、クライアント先や社内、セミナーなどでプレゼンテーションをしたり、見聞きしたりする機会は多いだろう。その出来によって、聞き手の反応はまるで異なり、成功と失敗が白黒はっきり分かれるものだ。

ありきたりなツールを使って行なうプレゼンテーションは食傷気味だ。テンプレートを使って作るので、見た目でだいたい分かってしまう。そういうプレゼンテーションは最初の時点から聞く気が失せてしまう……。

今回はプレゼンテーションの注目し、見栄えがよく、インパクトのあるプレゼンテーション資料を作成できるWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)に注目した。人とは違う、人を引きつけるプレゼンテーションをするためにもぜひご覧いただきたい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
SlideRocket』 Flashのプレゼン作成Webアプリケーション
Googleドキュメント』 Ajaxの日本語対応プレゼン作成Webアプリケーション
S6』 JavaScript+HTMLで作るシンプルなプレゼンテーション
Scaena』 スライド切り替えに多彩なイフェクトを施す



多彩なアクションが可能なFlashプレゼンテーション

名称 SlideRocket
URL http://www.sliderocket.com/

『SlideRocket』は、「Googleドキュメント」や「Zoho Show」のようにオンラインでプレゼンテーション資料を作成できるWebアプリケーションだ。その特徴は何と言ってもFlashを利用した多彩なアクションにある。

「SlideRocket」のトップページ。現在はプライベートベータ中

たとえば動画の貼り付け、オーディオの挿入、スライドの切り替わりに指定したアクションを起こすようにするといったこともできる。アクションには、回転しながら、フェードアウト/インしながらとさまざまなものが用意されている。

グラフを挿入してデータを変更する、表示する順番を指定するといったこともでき、既存のプレゼンテーションツールに負けない機能が魅力だ。Microsoft PowerPoint形式のファイル(.ppt)をインポートすることもできる。

スライドの編集画面。多彩な編集が可能

ただし現時点では日本語の入力ができないようで、その点だけがもったいない。現在プライベートベータ中で、参加申し込みのメールを送るとしばらくしてメールで連絡がくるようになっている。操作性もユーザーインタフェースも優れたWebアプリケーションなのでぜひ触れてみてほしい。




完成度の高いWebプレゼンテーションツール

名称 Googleドキュメント
URL http://docs.google.com/

海外には多くの面白いプレゼンテーション用Webアプリケーションがあるのだが、Flashをベースで作られているからか、日本語が利用できるものが数少ない。そのため、紹介しようと思っても利用が難しいものばかりになってしまう。

その点、『Googleドキュメント』のプレゼンテーションはAjaxで提供され、日本語も問題なく利用できる。完成度が高く、操作性が非常によい。リビジョン管理や他のユーザとの共有など、オンラインツールである利点を活かした機能もたくさんある。

Ajaxを使ってスムーズな操作が可能

そして最近、PowerPoint(PPT)形式でのエクスポートに対応した。それまではインポートには対応していたが、保存はPDFや画像のみだった。また、印刷の際に細かく制御できないのも難点だった。その点、PPT形式なら使い勝手がよい。印刷するときだけはPPT形式でエクスポートし、パワポで開いて印刷することもできるだろう。

テーマを使えば見た目の変更も簡単

ほかにも、現時点ではドキュメント(ワードプロセッサ)だけだが、Googleドキュメントがオフラインモードに対応した。今後、表計算のスプレッドシートやプレゼンテーションにも対応するものと思われる。Googleドキュメントがさらに便利になるだろう。




HTML+JavaScriptベースのプレゼンテーション

名称 S6
URL http://d.hatena.ne.jp/amachang/20071121/1195627344

『S6』はサイボウズ・ラボのIT戦士、amachang氏により開発されたオープンソース・ソフトウェアだ。HTMLを土台に、JavaScriptで多彩なエフェクトをかけることができる。HTMLなので、普段使い慣れたエディタを使って作成できるのがメリットだ。

操作方法。「S6とXPathの紹介」(http://amachang.art-code.org/ejohn/)より

矢印キーを使っての移動やスライド一覧機能が便利だ。文字を手前からフェードアウトさせたり、横から移動させるといった指定もできる。アクションはどれも格好がよく、パッと見ただけではHTMLとJavaScriptでできているとは思わないはずだ。

スライド一覧画面。スライドを移動して表示することが可能

グラフィカルなツールを使って作ると、見た目だけに凝ってしまって、中身はおざなりになることがある。シンプルなプレゼンテーションツールを使えば、もっと中身に力を入れて作成できるのではないだろうか。




イメージに多彩なイフェクトを施すFlashプレゼンテーション

名称 Scaena
URL http://scaena.unic8.com/

多彩なエフェクトを利用したプレゼンテーションを作りたいと思ったら『Scaena』を選択するとよいかもしれない。ただし、Scaenaは文字ではなく画像を扱ってプレゼンテーションにするので、アルバムや各スライドを画像で手に入れて作成する必要がある。

エフェクトの一例。スライドには映り込みがあり奇麗だ

Scaenaは画像とXMLを使ってプレゼンテーションを作成する。XMLで画像を切り替える際のアクションを設定することで、スライドして迫ってくるものや、角柱が転がるようなアクション、倒れるスライド、モザイク、回転、扉など多彩なアクションが可能になる。

さまざまなエフェクトが用意されている。それらはXMLで指定する

写真を用意するとあって、実際に利用するには場面を選ぶかもしれない。スクリーンショットを多用するもの、写真を紹介するプレゼンテーションにはぴったりだ。

いかがでしたか?

プレゼンテーションに求められるのはもちろん中身だ。エフェクトにこだわったために、中身がともなわないのでは意味がない。また、文字が多い、口頭で説明する部分がほとんどないプレゼンテーションも問題だ。

だが、従来のプレゼンテーションツールで作成されたものの中にはそうしたものが多いのも確かだ。今回紹介したWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェアはそうした状況を打ち破れるものばかりだ。同じ内容でも見せ方を工夫すればインパクトはまったく変わってくる。中身と見せ方の両輪を上手に操り、良いプレゼンテーションを行なってほしい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。