今回のテーマは「Amazon S3」

スケーラブルなストレージを構築できる「Amazon S3(Simple Storage Service)」。先日、数時間に渡る障害が発生したが、その際の影響度合いの大きさからいって、多数のスタートアップ企業が利用していることがわかる。その規模で99.9%以上の稼働率を維持しようというのはものすごいことだ。

Amazon S3は有料で提供されていることもあり、さらにそれを利用したビジネスを展開する企業が多い。インタフェースはWeb APIを通じたものだけが提供されているため、一般ユーザでも操作しやすいようなインタフェースを提供するサービスやソフトウェアが数多く登場している。

今回はそんなAmazon S3に注目し、それを使ったWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介する。多数の開発者が利用するそのサービスの魅力を少しでもお届けできればと思う。

今回紹介するOSS・Webアプリ
jagbox』 100MBまで使えるファイルアップローダー
S3 Dashboard』 Webベースのフロントエンド
Amazon S3 Firefox Organizer(S3Fox)』 FirefoxをGUIフロントエンドに
Park Place』 Amazon S3を使った開発の際に



Amazon S3を使ったファイルアップローダー

名称 jagbox
URL http://jagbox.com/

ファイルのアップロードサービスは数多く存在する。だが帯域やディスク領域を非常に多く費やしてしまうため、その運営は非常に大変だ。だが、Amazon S3を使えばその問題は解決する。無制限ともいえる領域と、安定した帯域が保証されているので、まさにアップローダー向けといえるかもしれない。

「jagbox」のトップページ。ファイル保存の有効期限は30分がデフォルト

そんなAmazon S3を使ったファイルアップロードサービスを提供するのが『jagbox』だ。無料で利用できるが、30分~1週間でファイルは消えるようになっている。また、アップロードできるファイルの上限サイズは100MBまでとなっている。

アップロードが完了した画面。Share This Linkに書かれたURLを相手に渡せばよい

ファイルをアップロードすると、専用のURLが生成される。一つは管理用のURLで、もう一つは人に教えるためのダウンロード用のURLだ。会員登録もせずに利用でき、さらにダウンロードできるというのは素晴らしい。広告もほとんど入っていないので、jogbox自体がどのように運営を維持しているのかはわからないが、便利なWebサービスといえる。

URLを受け取った人が見る画面。ダウンロード開始される




Amazon S3のWebベースフロントエンド

名称 S3 Dashboard
URL http://www.s3dashboard.com/

『S3 Dashboard』はAmazon S3の管理インタフェースを提供しているWebアプリケーションだ。利用の際にはAmazon S3のアカウントが必要になり、ファイルの転送などには料金がかかるのでご注意いただきたい。S3 Dashboard自体はフリー版と有料版が存在する。

「S3 Dashboard」の管理画面トップページ。ここからファイルをアップロード、管理する

ファイルのアップロードはJavaアプレットで提供しており、FTPのような二画面ファイラーでファイルを選択、アップロードできる。設定さえしておけばどこからでもアップロード、ダウンロードできるのは手軽だ。

ファイルアップローダー。左ウィンドウがローカルで、左ウィンドウがAmazon S3になる

アクセス制限の設定もS3 Dashboard上から設定できる。また、ファイルの種類に応じてPDF、Flashビデオなどそれぞれに適したビューワーを作成してくれる。パブリックでアクセスできるように設定した後は、生成されたJavaScriptを貼り付ければよい。アクセス数に応じた料金をあらかじめ表示してくれるのも便利だ(転送量も課金されるので)。

ファイルの拡張子に応じて表示インタフェースを変えられる。アクセス制限や料金目安も表示される

Amazon S3は一般ユーザ向けのインタフェースは持たない。そのため、こうしたフロントエンドになる存在が必要だ。どこからでも操作できるS3 Dashboardは管理インタフェースとして便利なWebアプリケーションだ。




FirefoxでAmazon S3を操作

名称 Amazon S3 Firefox Organizer(S3Fox)
URL https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/3247

こちらはオープンソースではないのでご注意を。『Amazon S3 Firefox Organizer(S3Fox)』はGUIのインタフェースを使ってAmazon S3を管理できる。その際に利用するのがFirefoxだ。S3FoxはFirefoxアドオンとして動作し、2画面ファイラー調の画面でファイルを授受できる。

「S3Fox」を立ち上げたところ。ファイルのアップロードダウンロードはFTP調に簡単にできる

S3Foxを利用する際にはあらかじめAmazon S3のアカウントが必要になる。それを登録し、ルートにディレクトリ(実際にはBacket)を作成する。あとは自由にファイル操作が可能だ。Backetは全Amazon S3内でユニークである必要があり、入力可能な文字も指定されているので注意してほしい。

権限設定を行っているところ。ファイルごと、Backetごと(デフォルト設定)に指定可能

S3Foxを使えば、ファイルをバックアップしておくといった使い方はもちろん、ファイルのやり取りにも利用できる。ごくシンプルながら使い勝手は非常によい。アクセス制限もS3Fox上で設定できるのが便利だ。試しに使ってファイルを削除し忘れたりすると、ずっと課金され続けることになる。そうしたときのためにも、目で見て確認できるインタフェースは安心感があってよい。

新規でBacketを作成するところ。指定可能な文字に制限がある




Amazon S3クローンを使う

名称 Park Place
URL http://code.whytheluckystiff.net/parkplace/

最後はAmazon S3を使った開発の際に便利なオープンソース・ソフトウェアを紹介したい。Amazon S3クローンとはいっても、『Park Place』が目指すのはリプレイスではない。Amazon S3を使ったWebアプリケーションや、ローカルアプリケーションを開発する際に利用できるソフトウェアだ。

「Park Place」のトップページ。Torrents形式にも対応しているとのこと

Amazon S3は有料のWeb APIであるため、それを使ったアプリケーション構築には若干の面倒さがある。例えばネットワークにつながっている必要がある、開発中に不用意な自動処理を行うと一気に課金されてしまう、リリース後のテストが難しいといったことだ。

実行しているところ。ライブラリを使う場合は、アドレスが直に指定されている場合もあるので修正が必要

Park Placeを使ってテスト環境を構築しておけば話は違う。データをいくら転送しても課金されることもないので、安心して開発できる。完了したら最終的なテストをAmazon S3を使って行えばよい。日本での注目を集めつつあるので、Amazon S3を使ったアプリケーションを考えた際には利用してほしい。

いかがでしたか?

Amazon S3は技術者向けのテクノロジーで、一般ユーザには若干縁遠く感じられてしまう。だが、Twitterのプロフィール画像はAmazon S3内に保存されている、WordPress.comでも利用されているなど、大規模なサービスを安定して構築する際には欠かせない存在になっている。

そしてGUIフロントエンドのアプリケーションを使えば、一般ユーザであっても外部ドライブの代わりに使ったり、バックアップ用途に利用したりと様々な目的に利用できるようになる。コンピュータはいつか壊れる。それが個人向けの機器であれば、頻度も高い。わざわざドライブを購入するよりもネットワーク越しに保存してしまったほうが、電源もいらず、容量が心配になることなく、安定して利用できる。

なお、Amazon S3の利用にはユーザ登録とクレジットカードの登録が必要になるので、その点ご注意いただきたい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。