今回のテーマは「開発環境」

様々なアプリケーションがWeb化している。メーラーは当たり前のように使われており、カレンダーやタスク管理、さらに画像編集といったアプリケーションまでWeb上で動作するようになっている。

今回は多岐にわたるWebアプリケーションの種類について、特に基本となり得るものを取り上げてみたい。それは全てのアプリケーションを生み出す元となる、開発環境だ。すでにいくつかのWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)が登場している。Webベースで行える利点を生かしたもの、ローカルアプリケーションに見劣りしない機能をもったものなど実に様々だ。開発者の方のみならず、見ると何か作ろうかと思わせる、そんなアプリケーションが目白押しだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Workspace』 Web OS風な開発環境
TIDE』 ステップ実行も可能なJavaScript開発環境
Amy Editor』 Rails/PHPで提供のWeb開発環境
Jiggy』 iPod Touch/iPhoneの中の統合開発環境



Web OS風にファイル操作、開発

名称 Workspace
URL http://createworkspace.com/

『WorkSpace』はWeb上でWebアプリケーションの開発を行うテキストエディタを提供している。だが開発だけではなく、GUI調のインタフェースも用意されており、まるでWeb OSのような画面構成になっている。

「Workspace」のトップページ。現在はメールアドレスを登録後、しばらく待つ必要がある

各種言語用のハイライトを用意しているので、開発が容易に行えるだろう。その場で実行できるというわけではないが、ダウンロードしたり、FTPを設定してアップロードするといったことができる。既存のファイルをアップロードすることも可能だ。

ファイルの編集やダウンロード、FTPを利用したアップロードなどが可能

ファイルを管理するエクスプローラ風のウィンドウや、キーボードショートカットも用意されているなど、開発に限らず利用できそうなWebアプリケーションとなっている。現在はベータ版であり、メールアドレスを登録すると後で登録を促すメールが送られてくる。興味のある方は登録してみてほしい。




JavaScriptをWebベースで開発

名称 TIDE
URL http://www.tide4javascript.com/

『TIDE』はJavaScript向けのWeb IDE(Integrated Development Environment)だ。TIDEではJavaScriptを使った開発を行い、さらにTIDE上で実行できるようになっている。JavaScriptをふんだんに使ったコンポーネントによって、GUIと変わらない操作性で開発ができる。

「TIDE」のトップページ。すぐに開発を試すことができる。画面は縦列の3ペイン構成となっている

面白いのはステップ実行ができる点だ。また、変数のウォッチも可能で、変数を登録しておくと(途中からも追加可能)、その値が変わっていくところが簡単にわかる。変数のウォッチができれば開発効率は大幅に向上するのは間違いない。

ステップ実行中の画面。右上で編集のウォッチができる

また、様々なサンプルがあらかじめ登録されている。ソートや差分を求めるものや、whileやforなどの構文のサンプル、Google Chart APIを使ったものなど多彩に用意されている。これらをステップ実行しながら使ってみるだけでも十分面白いので一度試していただきたい。




PHP/Ruby on Railsで開発されたコラボレーションプログラミング環境

名称 Amy Editor
URL http://www.april-child.com/amy/website/

『Amy Editor』はソースは公開されているが、オープンソースというわけではないのでご注意いただきたい。Amy Editorの特徴は、コラボレートできるWeb上の開発環境である点とGUIアプリケーションのようなインタフェース。ファイル管理もWeb上から行い、ファイルを開けばテキストエディタと変わらない編集作業ができる。

各言語向けに補完設定が用意されている。タブキーを入力すれば補完される

Ruby on Rails向けに、空のコントローラを作ることもできる。各言語には補完機能があり、一部を入力してタブを押せば自動で変換される。個人的にはタブ文字もきちんと入力されるのがうれしい。

現状はまだα版とあって、ユーザ登録でエラーが起きてしまい、コラボレート機能の真価はわからなかった。だが豊富な機能や、ローカルアプリケーションにはない魅力がAmy Editorに詰まっているのは間違いない。




「iPod Touch/iPhone」上で動作する開発環境

名称 Jiggy
URL http://jiggyapp.com/

『Jiggy』は「iPod Touch/iPhone」向けのアプリケーションを開発する統合開発環境なのだが、その環境自体がiPod Touch/iPhoneの中から提供される。何とも変わった雰囲気のソフトウェアだ。なお、動作にはJailBreak(いわゆる脱獄アプリ……)が必須なので、その点は注意していただきたい。

開発中の画面。専用ライブラリを読み込んで開発を行うが、ベースはJavaScript

Jiggyを立ち上げたら、PCのWebブラウザでそのアドレスにアクセスする。そして新規でアプリケーションを作成すると、エディタが表示され、そこにプログラミングを行っていく。もちろん、実行すればiPod Touch/iPhone上でアプリケーションが表示される。

開発したアプリケーションにはオリジナルのアイコンを付与できる

ファイルの操作やHTTPサーバ、ソケット、SQLite、XMLHttpRequestといった機能が提供されている。これらを組み合わせれば色々なアプリケーションが開発できそうだ。アップルから配布予定の公式SDKが不要になってしまうのではないかと思えるくらい、魅力的なソフトウェアである。

いかがでしたか?

今回は「開発環境」に注目した。インターネット上で開発が行える魅力は、その場で実行できるという点と、遠隔地とのコラボレートにあると思われる。サーバのパワーを使うため、クライアントサイドではWebブラウザさえあればすぐに開発に着手できる。チャットをしながら遠隔地とのペアプログラミングを楽しむことも可能。一つのサービスをみんなで仕上げていく、そんな新しい楽しみ方を与えてくれるはずだ。

こうした開発環境を作り上げるというのは難しいが、将来的には携帯電話向けの統合開発環境、なんてのも登場する可能性もある。ローカルアプリケーションが次々とWebアプリケーションへと移り変わっている流れの中で、開発もWeb上で行ってしまうというのは合理的とさえいえるかもしれない。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。