オフィスの引っ越しと共に決まった、内田洋行オフィス営業部門の「ワークスタイル変革」。現場中心の改革は、スタートこそブーイングが出たものの、時が立つにつれて議論は白熱。最終的に344件の取り組むべき施策が明らかになった。

その中の1つが、仕事を遅くするような職場環境の改善。会議では「打ち合わせコーナーが足りない」「作業用に机を広くしたい」「デュアルモニターが欲しい」などの声が上がったのだが、それを実現するためにはある条件をクリアする必要があった。

やりたいことはたくさん、だが条件が……。

オフィス環境を整備するためには……?(イメージ)

平山さん「厳しい経営環境のなか、今より床面積を広げて固定費があがるということは認められません。当時の1人当たりの床面積は、共用スペースも含めて7平米です。これは決して広くなくて、むしろ平均よりちょっと狭いくらいです」

そう、条件は「今よりも広くしてはならない」。決して広いとはいえないスペースに、理想のオフィス環境を整備するにはどうしたらよいのか。現場からは様々な声が上がった。

平山さん「そこで出てきたのが、自由に使える快適で便利なスペースをたくさん用意する代わりに、自分の机と収納キャビネットを全部捨ててしまう、というちょっと極端なアイデアです。」

内田洋行では、この形式を「アクティブコモンズ(行動を支援する共有スペースの充実という意味の造語)」と呼ぶ。自分のデスクと収納を持ったままでは、条件をクリアできない。だが、「アクティブコモンズ」を導入すれば実現可能なのでは? という意見が出たのだった。

アクティブコモンズ、「やる?」 「やらない?」

デスクをすべて共有化するアクティブコモンズ、導入するかしないかについては、1カ月間もめたのだとか。

平山さん「アイディアとしては面白いですが、いざやろうとすると、自分の収納を全部なくすっていうのは結構勇気がいる話ですから。実際のところ、当初は導入反対派が7割、賛成派は3割以下といった感じでした。」

同プロジェクトは、上が決定するのではなく、あくまで現場が意思決定をする方針。そのため「1カ月の間夜遅くまでわいわいがやがや、職場集会などをやっていた」(平山さん)という。

1カ月後の結論は「やる」。平山氏は「1カ月後の結論が『やる』になったのは推進派が頑張ったのと、めったにないチャンスだから、やってみたいという雰囲気になったのだと思います」と語る。

導入の結果は……?

アクティブコモンズ制が導入された新川第2オフィス

最終的にオフィスへの導入が決まったアクティブコモンズ制。平山さんは、一連の「ワークスタイル変革」自社実践を振り返って「2年たった現在、大きな問題もない。当時の選択は正しかったということになると思います」と評価する。

具体的には、

・顧客との対面時間が1.5倍に
・年間1,830万円分のスペースコスト圧縮
・会議時間11%短縮
・会議室の効率的運用で1,000万円コスト削減
・自発的な学習機会が3.4倍に増加

などの結果が出ており、オフィス環境整備を含めた「ワークスタイル変革」を実施することで、数値上でも生産性が上がったということが証明されている。

また、引っ越し2年後のアンケートでは、「自分たちの変革目標をきちんと理解している人」や、「チャレンジングな風土にしていこうという人」、「部門の方針を理解して腹落ちしている人」が増えたという。更に95%の社員が「コミュニケーション機会の増加」を実感し、92%の社員が「ワークスタイル変革に腹落ち」したと回答している。

平山さん「『ワークスタイル変革』の自社実践により、営業の生産性が上がりました。加えて社員の意識も随分変わるということが実証されたように思います」

会議時間の短縮などに効果が出た

内田洋行のオフィス分野は、オフィス用品の販売から、「ワークスタイル変革」のコンサルタント業もこなす「オフィス変革のプロ集団」だ。そのため、「ワークスタイル変革」の自社実践もスムーズに進んだのかとおもいきや、かなりの紆余曲折があった。

専門家である平山さんが「正しかった」と太鼓判を押す『ワークスタイル変革』。理論はわかったが、実際の働き方はどのようになっているのだろうか。一同は自分の目で確かめるべく、会議室を後にしたのだった。

※第3回は7月16日(水)更新予定です。