こんにちは、鍼灸師の片山愛子です。今回は「イライラ対策」としてセルフケアしていただきたいツボをご紹介します。

「なんだか無性にいら立つ」「排卵期や生理前でイライラする」「すぐ怒ってしまう」「怒り過ぎて頭や胃が痛い」「イライラしたあと落ち込んでしまう」……。こういった「イライラ」は、ストレスがたまって「心と体にダメージを受けている状態」のときに多くみられる症状とされています。

ストレスとは

現代社会では、8割以上の人がストレスを感じていると言われています。実はストレスには特別な要因があるというわけではありません。日常で起こるさまざまな刺激(変化)のすべてがストレスの原因となっているのです。具体例を挙げてみましょう。

■物理・科学的ストレス: 暑さや寒さ、騒音、公害、薬物、ビタミン・ミネラル不足など

■身体・心理・社会的ストレス: 病気や不安、悩み、人間関係、仕事、家庭、介護、子育てなど

そして意外にも、進学、結婚、出産などの喜ばしい変化もストレスの原因となります。

ストレスの感じ方や耐性は人によってさまざまです。「適度なストレス」はうまく対応・適応することで「やる気スイッチ」となり向上心が生まれるものがほとんどですが、ストレスが続いて「慢性化」してしまうと、心も体も対応・適応し続けることができず、元気がなくなってきたり、不安感やイライラがたまってきたりしてしまいます。

こういったストレスに対して、心や体が反応することを「ストレス反応」と言います。ストレス反応は大きく分けて「体」「心」「行動」の3つに分類されます。

■体に出るストレス反応: 胃の痛みや食欲低下、下痢や便秘、不眠肩こりなど

■心に出るストレス反応: 不安、イライラ、怒り、抑うつ状態、気力の低下など

■行動に出るストレス反応: 仕事でトラブルを起こす、うっかりして危険なスを冒してしまう、喫煙、アルコール摂取量の増加生活の乱れなど

ストレスへの反応には「自律神経」が大きく関わっていますが、「慢性化」状態が続くと、免疫力の低下からさらに体調を崩しかねません。特に、「胃・十二指腸潰瘍」「高血圧症」「頭痛」「自律神経失調症」「更年期症状」「月経前症候群」は、ストレスによって症状が悪化すると考えられており、注意が必要です。

東洋医学におけるストレスの考え方

東洋医学には、「心と体は一つ」ととらえる「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。心の(精神的)不安やストレス状態は、身体にさまざまな症状として現れて、その逆もあるというものです。

そして「気(き)」「血(けつ)」「水(すい))という3つの要素が健康を支えていて、そのバランスが崩れると心身に不調が出ると考えられています。このなかではイライラは、気が滞ってしまう「気滞(きたい)」、気が逆行してしまう「気逆(きぎゃく)」など「気」の不調で起こると考えられています。

「気滞(きたい)」には、イライラのほかに、喉のつまり感、ガスが多くなったり、おなかや胸が張ったりするといった症状が出ます。「気逆(きぎゃく)」には、手足は冷たいけれど顔や頭はのぼせる、手足に汗をかくなどの症状が伴うことがあります。

気血水の作用や臓器についての詳しい内容や治療の考え方などは、膨大な量になるのでここでは説明しきれませんが、ざっくり言うと、鍼灸や漢方ではこの「気の巡りの不調」を整えることを目的としています。このほかにも、「血(けつ)」の滞りもイライラの原因とされることがあります。便秘をしやすい、肩こりがある、月経でイライラするなどの症状には「血(けつ)」を整えることも足していきます。

また、気は全身に存在し「五臓六腑」にもいきわたっており、ストレスは「肝」を傷つけてしまうと考えます。イライラ・不安・頭痛などといった症状が出てきてしまった状態は、「肝」が不調な状態としています。鍼灸では「気」や「肝」を整えるツボを鍼やお灸などで刺激して治療をして改善を目指していきます。

セルフケアしたいツボ

ツボの刺激効果を得るポイントは、強く押しすぎないこと。心地よい刺激を感じることで、効果が増幅されます。

太衝(たいしょう)

精神不安、ストレス、イライラ、月経不調、めまい、頭痛に効果があるとされています。

■場所: 足の甲、親指と人さし指の間を足首に向かって指でなで上げたときに止まるところ。

太衝(たいしょう)の場所

だん中(だんちゅう)

胸痛、ぜんそく、精神不安、ストレスに困っているときに試してみてください。

■場所: 胸、おへそと鼻を結ぶ線上で、両乳頭の間。

だん中(だんちゅう)の場所

百会(ひゃくえ)

精神不安、頭部の諸症状、めまいや頭痛などに効果的なツボと言われています。

■場所: 頭頂部、鼻筋を頭頂部に上がっていった線と、両耳の一番高いところの延長線上を結んだ線の中点が交わるところ。

百会(ひゃくえ)の場所

神門(しんもん)

不眠、健忘、心身症に有効なツボとされています。

■場所: 手首の内側で小指側、手首のしわ上で、小指をまげたときに動く筋の内側。

神門(しんもん)の場所

労宮(ろうきゅう)

心痛、精神不安、ストレス、イライラに対して効果的なツボとされています。

■場所: 手のひら、人さし指と中指の骨の間、手を軽く握りしめたときに中指の指先が当たるところ。

労宮(ろうきゅう)の場所

ストレスとイライラ

どんなイライラも長く続いてしまうと、心にも体にも悪い影響を与えてしまいます。「怒りの沸点が下がった」「堪忍袋の緒が切れやすくなっている」「眉間に常にシワがある」と感じていたら要注意。

「イライラスイッチ」「怒りスイッチ」が頻繁に作動してしまって、胃のあたりが硬くなったり、背中の胃部分が痛んだりしているかもしれません。かみしめる力が強くなっていたり、筋肉が硬くなって息が浅くなったりしていませんか?

「こうしなければならない。こうでなければならない。こうしたいのに」というご自身の心や生活習慣の中で、「イライラスイッチ」が入ってしまう可能性もあります。また、体の疾患症状からきている場合も考えられます。医療関係機関に相談することで改善していくきっかけになることもありますので、心にとめておいてください。心と体の不調に気が付いたら、早めにセルフケアすることをお勧めします。

「自身の手当て」を大切に

できることなら環境を変えるなどしてイライラの原因を取り除き、根本的な解決を目指したいものですが、そうはいかないことのほうが多い現代社会。まずは、ツボのセルフケアに加えて健康的な生活を送るために「生活習慣」「食生活」の改善をしていきましょう。

カルシウムの摂取とカルシウムを吸収しやすくするビタミンD、精神を落ち着かせる作用の成分をもつ大豆製品など、栄養バランスのよい食事を心がけてください。アルコールの飲みすぎはイライラを増すことがあるので、ほどほどに。夜型の生活を控え、十分な睡眠をとるように生活環境を整えましょう。

「心を切り替えるために深呼吸をする」「好きな音楽を聴きながら軽い運動をする」「お風呂にゆっくり入りながら本を読む」「森林浴する」「アロマを使ってみる」「大声で歌う」「ちょっと泣いてみる」「なぜイライラしたのか書き出してみる」──。

ご自分に合うリラックス方法や、リフレッシュの仕方、ストレス解消法などを見つけておきましょう。

鍼灸では、人が本来持っている「治癒能力」を高めることを目的としています。症状の改善は一般的に穏やかですが、「対症療法で改善しづらい症状」について悩んだとき、「日常生活リズム」「生活習慣」「食生活」を見直すためにご自身でセルフケアして行く過程の中で、「ツボ」を取り入れて文字通り「ご自身の手当て」をしていただければと思います。



記事監修: 片山愛子(かたやま あいこ)

鍼灸師。人間総合科学大学鍼灸医療専門学校東洋医療鍼灸学科(旧早稲田医療)卒業。同校臨床実習施設にて卒後研修修了。医学博士町田雅秀先生に師事。メディコ八千代院長。あおぞら鍼灸治療室勤務。メディコ新宿勤務。在学中より現在まで東京医科大学にて年数回の解剖実習、中国での中医学研修、薬膳研修修了。予防医学・介護予防運動・美容健康などについて研修。疾病治療と予防医学を東西医学の両面からアプローチした治療を実践。