扁平竿がこの釣りを楽しくする

ワカサギのアタリは実に様々で、活性が高いときは手元にまで届くような衝撃が届くこともあれば、かすかにラインを揺らすぐらいで終わってしまうことまである。特に小さいアタリを釣り人が認識するのは実に困難で、時として"慣れ"が必要になることも多い。

とはいえ、釣り大好きの日本人の事。そうした微細なアタリを逃すまいと、古くから試行錯誤を続けてきたのだ。その結果、この釣り専用といっても過言では無い道具が発達してきた。それが「扁平竿」と呼ばれるものだ。

この扁平竿は通常の釣竿とは違い、よりしなやかさを出すために板状の素材を使うのが特長。ちょっと見はプラ板を細長く切っただけのように見えるが、厚さを変化させることで、軽いオモリを扱いやすくしたり、重たいオモリを使っても腰が残るようにしたりと、いろいろと工夫されている。

素材としては柔らかくて粘りのあるグラス素材や、張りのあるカーボン素材、面白いところだと竹素材を使ったり、今ではすっかり高級品となったがクジラのヒゲを使ったものなどもある。こうした素材の特性と厚さ、テーパーの掛け具合などで、先ほど説明したような、調子の違いを作っていくのである。

扁平竿はワカサギ釣りにマッチした釣道具だ

真横からみると薄い板状になっているのが分かる

ワカサギにあった調子とは?

扁平竿に限ったことではないが、釣竿には大きく分けて「先調子」「7:3調子」「胴調子」がある。扁平竿の場合は先調子と胴調子がほとんどで、積極的に合わせていく釣り方には先調子、じっくり乗せて釣る場合は胴調子という具合に使い分けていく。

この調子の違いに合わせて、錘負荷というものがある。これは扁平竿にとってちょうど良い重さがあらかじめ決まっているためで、「●g~●g」といった表示になることが多い。メーカーもテストを繰り返して設定している数値なので、釣り場に合わせて使いたいオモリがその範囲に収まる竿を購入するのがベストだ。

ちなみに関東近辺の湖に絞ってお話させていただくと、使うオモリが比較的軽量なので、やはり扁平竿も細身のものが使われることが多い。ボトムを中心に誘いながら釣る場合は先調子で錘負荷0.5~2g程度の竿を用意し、仕掛けには1gまたは1.5gのオモリをセットする。宙層の回遊が多く多点掛け(複数の針に複数の魚が掛かること)が狙えるような場合は、胴調子で錘負荷2~6gの竿に5gのオモリを結ぶといった具合だ。

慣れてくれば、その釣り場にあった釣り方も分かってくるし、必要なオモリも決まってくる。実際に使うオモリと、釣り方を考えて必要な扁平竿を揃えると無駄が少なくオススメでもある。慣れていないうちは、上手な人に釣り方を聴いてみるか、ボート屋などで情報を入手すれば参考になるはずだ。

ちなみに扁平竿は先日説明した電動リールなどに挿して使うことになる。そのため「元径」という、いわば差し込むための軸の太さがそれに合っていないとならない。現在では、ほとんどの場合、元径5mmが標準となっているが、時々4mmや7mmといったものも見かけることがある。自分が買った電動リールや元竿の取り付け径と、扁平竿の元径は合わせておく必要があるので注意しておこう。

胴調子と先調子の違い。同じオモリでも竿の沈み込みが中心部に掛かっているのが胴調子(下がって見える方)、胴は残りつつ穂先でオモリを背負うようになるのが先調子(上がって見える方)だ

画面左から1g、1.5g、2g、3g、5gのオモリ。これぐらい用意しておくと安心できる。形状によるバリエーションも豊富なので好みに応じて使い分けよう

扁平竿は電動リールなどに差し込んで使う。メーカーが違う場合でも元径が合っていれば差し込むことができる。元径は5mmが標準になりつつある

フィールドや釣り方に合わせて最適な扁平竿を選ぶのがコツ

ここで参考までにわたしが関東の湖でよくやるセッティングを説明しておこう。シーズン初期は宙層で釣れることが多いので、胴調子の扁平竿が中心になる。オモリもあまり軽くすると多点掛けをした場合に仕掛けが絡むので、よく使うのは5g程度とやや重たいものも使う。扁平竿の表示でいうと、胴調子の錘負荷2~6g程度のものになる。宙層でも食い渋るようなときは1~5g表示のもので、あえて竿がオモリに負け気味のセッティングもするが、よっぽどのときなので参考程度にしてほしい。

シーズン中期~後期になると、ワカサギはボトムに張り付くようになる上、食いも相当渋くなるケースが多くなる。そうなると、先調子の扁平竿を使う機会が多くなり、調子も極軟調子になってくる。表示では先調子の錘負荷0.5~2gといったものが中心で、実際に使うオモリは水深が10m前後までは0.5g~1g程度、それより深ければ1.5gになる。

実際のシチュエーションに合わせたオモリ使いは後日解説していくが、宙層用としてやや張りのある胴調子と、ボトム用にやや軟調の先調子があれば、とりあえずは困らないはずだ。あとは、自分の釣り方に合わせてその前後を買い足していくようにすれば、どんな釣り場に行っても対応できるだろう。

いずれにしてもこの扁平竿を使うと、それまで取れなかったアタリが明確に感じられるようになる。水中からの情報は、魚探と竿先からしか得られないので、ワカサギ釣りにとっては非常に重要なパーツでもある。アタリの出方や群れの位置などを考慮して、扁平竿をローテーション、なんていうシーンも決して少なくない。逆に言うと扁平竿から得られる情報をうまく処理することで、確実に釣果へと繋がっていくということでもある。みなさんも、ワカサギ釣りを楽しむときには、上手に竿を選んで釣果アップに繋げていただきたい。

扁平竿も様々な種類がある。アタリの出方もそれぞれなので、違いを楽しむのも悪くない。用途に応じて選ぶも良し、好みに合わせて選んでも良しなので、まずはお気に入りの扁平竿から集めてみよう