多種多様のエサから正解を見つけるには?

以前にも少し触れたが、カープフィッシングではエサに「ボイリー」と呼ばれるものを使う。配合飼料に様々なフレーバーを加え、それを日持ちするように茹でて乾燥させたものだ。茹で加工をしないタイプもあってもっと単純に「カープベイト」と呼ばれているものもあるが、どちらも同じように使ってどちらでも同じように鯉は釣れるので、ここではあえて「ボイリー≒カープベイト」とさせていただくのでご了承願いたい。

さて、このボイリーには様々な種類があることもお伝えしたと思うが改めて紹介すると、フレーバーには動物性と植物性のものがあり、それにサイズによるバリエーションと、ボイリーが沈むタイプと浮くタイプも存在している。

左から浮くボイリー、中はもっともよく使われる15mmのボイリー、右はちょっとサイズの大きい20mmのボイリー。これに各フレーバーの違いがあるので、種類が星の数ほどあるのが想像できると思う

動物性でわたしが好んで使うのは魚粉系のものが多い。植物性ではパイナップル、バナナ、ストロベリーなどの果物系か、面白いところではタイガーナッツもよく使っている。動物性のボイリーは水温が比較的高いときに向いていて、植物性のボイリーは低水温期によく使われる傾向がある。とはいいつつも、実際にはその日、その時間に鯉が何を食べたがっているかは正直分からないからやっかいだ。

ちょうとこの日のバッグに入っていたフレーバーは8種類あった。左が動物性のタイプで、メーカーオリジナルの魚粉系が2種類と、イカワタフレーバー、ツナフレーバー。右側が植物性タイプとなり、パイナップルバナナフレーバー、ストロベリーフレーバー、タイガーナッツフレーバー、生クリームフレーバーだ。一定の傾向はあるものの、どれがよく釣れるかは日によって違うのでやっかい

アングラーはヒットエサを探すために思考する

そこで行うメソッドが「ローテーション」と呼ばれるもの。簡単にいうと、まず自分の過去データからでも、地元の釣具屋から聞いた話しでも良いので、ひとつの軸となるボイリーを決める。次にそれを実際にポイントに投げてみて様子を見る。釣れなければボイリーのフレーバーをどんどん変えていく。最初の一匹が釣れたら、それがどのような釣れ方だったかよく観察しておき、ヒットしたボイリーを軸にして次の一匹を狙う。といった具合だ。

ここでピンと来た人はすばらしい。ITではもっともメジャーな考え方である「PDCAサイクル」とそっくりなのだ。「Do」でまずコレと見込んだボイリーを選ぶ。「Check」でそれが正しいか検証する。「Action」でもっと釣りやすいボイリーは無いか模索する。「Plan」でそこから得た答えが鯉を釣るために再現性の高いものか総合的に判断するのだ。

いや、これはこじつけでもなんでもなく、わたしは実際に釣り場ではそのように考えている。例えば、最初に付けたボイリーが自分的に実績の高いイカワタフレーバーだとする。そのまま釣れてしまえば、次の一匹を同じエサで釣れるか検証し、思惑通りヒットに持ち込めればその日は「オレの定石の勝利!」となる。

しかし、実際にはすぐに釣れない日もあるわけで、そのような時にアングラー的PDCAを試すのだ。先ほどの例でいえば、イカワタフレーバーがダメな日があったとする。イカワタフレーバーは動物性ボイリーの中でもかなり個性が強いエサになる。なので試すとすれば、正反対の植物性ボイリーだろう。中でも個性が薄めなバナナなどがちょうどよさそうではある。バナナフレーバーのボイリーで釣っているうちにヒットすれば、その魚のコンディションやアタリの出方、サイズや魚体の太り具合、活性が高いか低いかなどから判断して、それが再現性のあるものかもう一度テストする。次のチャレンジでも同じような釣れ方をしてくれれば「この日はバナナフレーバーの日」となるし、釣れてこなければ今度は動物性ボイリーに戻して再検証を始めるといった具合だ。

正解は何十種類もある!

ビジネスなら正解メソッドを選んだ対価として成功を得る。釣りの場合は獲物を得る。まぁ、ゴールは似たようなものだが、せっかくの趣味の時間なのだからPDCAなどと言わずに気楽にやりたいという人も多いだろう。で、先ほど言った「ローテーション」という言葉を思い出していただきたい。今説明してきたとおり、ヒットエサを探す手順を単純にそのように呼ぶのだ。

多くのアングラーは経験則に基づいた「ローテーション」を行う。ただし、これまでの和式鯉釣りの場合はそもそもエサの種類が少なかったので、一度付けたエサを変えていくという考え方はほとんどなかった。わたしがカープフィッシングを面白いと感じた理由は、この「ローテーション」ができる釣り方だと理解したときからだった。ピクリともしない竿先を眺めているのは性に合っていないという理由もあるが、わたしが得意とするところのルアーやフライフィッシングと似通った性質をそこに感じたからでもある。

もちろん、カープフィッシング自体が数釣りを目的とせず、より大型魚を狙うという風潮があるので、1日に1本でも釣れればその日は成功ともいえる。なので、ひとつのエサでじっくり粘ったから釣れた、というメソッドも立派に成立するし、ローテーションする中でヒットに持ち込んだというメソッドにも価値がある。両者それぞれにスタイルがあって、どれを実践するかはアングラー次第といったところだ。

とりあえず、ボイリーのローテーションについて話しをしたが、実際には撒き餌の仕方や、冒頭でも少し触れた浮くボイリーを使ったり、ボイリーのサイズを変更してみたりと様々な組み合わせがある。そのすべてがヒットさせるだけの力を持っているので、鯉が釣れる要因も同じ数だけ存在しているのだ。ただし、偶然"釣れた"のか、狙って"釣った"かでは、自身の満足度に大きな違いがある。せっかく時間を費やすのであれば、試行錯誤を続けて納得できる一本の鯉を手にしたいものだ。

例えば、20mmの沈むボイリーと15mmの浮くボイリーを組み合わせると、浮くボイリーが浮力となって川底で水の揺らめきに合わせて雪だるまが首を振るように動く。これをカープフィッシングをする人の間では「スノーマン」と呼んでいる。鯉にアピールさせやすくなるので、割とオーソドックスなセッティングだ

次回はフィールド編を紹介する。まずは釣行前にすることや、現地について実行することを中心にお伝えしよう。