一般的な電車の車輪の数は8個。1両あたり台車が前後に2つ。台車の車軸は2本。つまりひとつの台車で4つの車輪が付いて、台車が2つで8個という計算になる。これは貨車も同じ。一方、バスやトラックの車輪は4個が一般的。トラックでは後ろだけ2軸という大型車種も見かけるけれど、たいていは車輪が4個だ。なぜ電車や貨車の車輪は多いのか。

大手私鉄が採用する電車は20m級。車軸は4本で車輪は8個。大型バスは全長12m未満で車輪は4個が多い

バスにも車輪8個の車種があった。全長20mの「ネオプラン・メガライナー」

その理由は、長い車体をカーブでスムーズに走らせるためだ。バスやトラックも急カーブを走っているけれど、それは内輪差があるから。前輪が通る位置と、後輪が通る位置が異なるため、カーブをスムーズに曲がることができる。ただし、前輪よりも後輪のほうがカーブの内側を通るため、巻き込み事故に注意が必要となる。

鉄道車両はレールの上を走るから、前輪と後輪が同じ場所を通過する。長い車両は内輪差を使えない。そこで、内輪差のない2軸の台車を置き、その上に長い車体を置く。鉄道車両はトラックやバスというよりも、長いコンテナを運ぶトレーラーヘッドとトレーラーの組み合わせに近い。

じつは、鉄道車両もバスやトラックのように、車輪4個から歴史が始まっている。客車も貨車も、馬が引く客車や荷車をレールに載せるアイデアだった。世界初の蒸気機関車も車輪4個だった。日本で鉄道が開業したとき、蒸気機関車は動輪2軸と先輪1軸で車輪数は6個だったけれど、客車も貨車も2軸で車輪4個だった。

鉄道の輸送量が増えるにともなって、長い車両を作って対応しようとした。しかし、前後の車軸の間隔が空くとカーブを曲がれない。レールと車輪が擦れ、摩擦が大きくなって止まる。そのまま動かすと脱線してしまう。もうひとつのアイデアとして、長い車体の中央に車軸を取り付ける方法もある。しかし、これではカーブのたびに車端部が外側にはみ出してしまい危険だ。連結する場合も都合が悪く、なにより不安定だ。長いものは両端で支えたほうが安定する。

車両を長くすると、2軸のままではカーブを曲がれない

そこで考えられた方法が、台車の上に車体を載せるボギー方式だった。日本ではボギー台車とも呼ばれているけれど。ボギーの語源を調べたら、英語のボギー(BOGIE)がそもそも「台車」という意味のようだ。

ボギー方式は台車を左右方向に回転させるため、カーブを通過するときに安定する。また、台車にサスペンションを設置すると、レールから車体への衝撃が緩和される。乗り心地が良くなり、車体の安定性も増す。その結果として列車の速度を上げられる。

ボギー方式なら、カープを曲がりやすく、車体のはみ出しも小さい

たとえば日本の国鉄では、2軸を直接取り付けた貨車は最高速度65km/hに制限されていた。軸受けを改良しても最高速度75km/hにとどまっていた。現在、ボギー方式の最新型コンテナ貨車は最高速度110km/hで走行できる。

日本の鉄道車両は2軸台車を使った「2軸ボギー方式」が主流となった。しかし、わずかながら1軸ボギー方式や3軸ボギー方式も採用例がある。1軸ボギー方式は小型車両を高速、安定化させるために、貨車や小型気動車に採用された。LRT車両では、2軸台車と1軸台車を組み合わせる事例もある。3軸ボギー方式は戦前・戦後の特急用1等客車や、国鉄時代に製造された大容量のタンク貨車で採用された。1等客車は乗り心地をよくするため。タンク貨車はレールにかかる重量を分散させるためだったという。