日本記念日協会によると、8月10日は「ハイボールの日」だという。ハイボールはウィスキーをソーダで割ったカクテルの一種で、酒場の定番アイテムのひとつ。申請した会社はウィスキーを製造販売するサントリーだ。8は「ハ」、1は「イ」、0は「ボール」という語呂合わせ。ちなみにサントリーはもうひとつ、10月8日も「角ハイボールの日」を申請し、どちらも制定されている。10月8日はサントリーウィスキー「角瓶」が誕生した日とのこと。

夏の定番カクテルといえば「ハイボール」(flickrより Matt Baran)

「ハイボール」という名前の由来については諸説ある。記念日を申請したサントリーは、自社のウェブサイトで「ゴルフのハイボール説」を紹介している。英国紳士がゴルフ場でウィスキーのソーダ割りを飲んでいたところに、ゴルフボールが飛び込んできた。高い球を打たなければここまで来ない。「ハイボールが来た!」というわけで、ウィスキーのソーダ割りを「ハイボール」と呼ぶようになったという。

これに対して、アメリカでは「鉄道信号機説」が有力だ。信号機とハイボールとは縁がなさそうだけど、じつはアメリカ西部開拓時代の鉄道は「ボール式信号機」が使われていた。支柱から赤や白の球をぶら下げて、球が下がっているときは停止、球が上がれば進行となる。つまり「ハイボール(High Ball)!」とは「出発進行!」という意味。なんとも景気よく、「カンパーイ!」という勢いにも通じる。鉄道ファンならこの説を採用したい。

ボール式信号機 (flickrより David Brossard)

ウィスキーソーダと鉄道信号機の結びつきにもいくつか説があって、「駅員が列車の到着を待つ間にウィスキーソーダを飲んでいて(ダメじゃん!)、望遠鏡で信号機を観察していた。ボールが上がれば列車が来る。さあ仕事だ!」。 あるいは「蒸気機関車が給水のため長時間停車する間、乗客たちは駅のバーでウィスキーのソーダ割りを飲みながら待っていた。ボール信号が高く上がれば、さあ出発! ハイボール! 乾杯!」などがある。

駅員説と出発待ちの乗客説、どちらも鉄道信号機だけど、駅員説は閉塞信号機または場内信号機、乗客説は出発信号機と考えられる。そうなると、「ハイボール!」は「出発進行!」の勢いで乾杯したいから、出発待ち乗客説がふさわしいかもしれない。そして、日本でボール式信号機になじみがないから、ゴルフ場説を採用したサントリーの気持ちもわかる。信号機説は説明が面倒だし、ほろ酔い加減の御仁には通じにくいだろう。

米国で保存展示されているボール式信号機(flickrより Doug Kerr)

ボール式信号機の説明書き(flickrより Doug Kerr)

さて、ゴルフ場説、鉄道信号機説のどちらも「球が高く上がる」が共通点。ハイボールが注がれたグラスを見れば、炭酸の小さな球たちが次々に高く上がっていく。あれ、もともと炭酸の粒が由来で、ゴルフ場も鉄道信号機も後付けかもしれない……。まあいいや。おいしく飲んで気持ちよくなれば、みんな仲良し。