2016年3月ダイヤ改正で消える列車といえば、新青森~函館間を結んだ特急「スーパー白鳥」「白鳥」だ。どちらも停車駅・所要時間ともに共通で、違いは使用車両にある。JR東日本の485系を使う列車が「白鳥」で、JR北海道の789系を使う列車が「スーパー白鳥」。「スーパー」という冠詞が付くほうが新しい車両だ。

特急「スーパー白鳥」はおもに789系を使用

ところで、「スーパー●●」という列車名は他の地域にもある。JR北海道には「スーパーおおぞら」、JR東日本には「スーパーあずさ」、JR西日本には「スーパーまつかぜ」などの列車がある。JRグループに限らず、小田急電鉄には「スーパーはこね」、一畑電車には「スーパーライナー」が走っている。車両の愛称としては、名古屋鉄道の「パノラマsuper」があるし、JR貨物の貨物電車は「スーパーレールカーゴ」だ。

「スーパー」という冠詞。元は英語の「Super」で、直訳すれば「超える」となる。新幹線の英語の車内放送では「NOZOMI Super Express」と案内されていて、これは「超特急」をそのまま英語にしたようだ。ちなみに「スーパー特急方式」というと、新幹線の規格で建設したトンネルや高架橋などに在来線規格の線路を敷き、高速列車を走らせるしくみ。でも、これらと現在の在来線特急「スーパー●●」は意味が違うような気がする。

初登場はJR九州の「スーパー有明」だった

「スーパー●●」という列車名のルーツは、1988年に登場したJR九州の特急「スーパー有明」だ。「有明」は鹿児島本線を走る特急列車で、当時は28往復も走っていた。車両は国鉄時代から引き継いだ485系と、JR九州初の新造特急形電車783系だ。783系はJRグループとしても初の新造特急形電車となった。この783系を使った「有明」のうち、最も停車駅が少なく、所要時間が短い列車を「スーパー有明」と名づけた。新型車両の登場と同時ではないけれど、「スーパー有明」は新型車両を使い、速達性が高いから人気があった。

JR九州の特急形電車783系。現在は「にちりん」「きりしま」など九州各地の特急列車で活躍している

「スーパー有明」の人気にならって、1989年にJR西日本が「スーパーくろしお」、JR東日本が「スーパーひたち」を設定した。「スーパーくろしお」は専用車両として381系電車のパノラマタイプのグリーン車付き編成を導入し、「スーパーひたち」も専用車両として新型の651系電車を導入して速達性を高めた。

速達性の高い「スーパー有明」、上質な設備を備えた「スーパーくろしお」、最新型の高速車両を導入した「スーパーひたち」。この3つの列車が、「スーパー●●」の方向性を決定したといっていい。その後、「スーパー●●」という列車名は「既存の特急列車のグレードアップ版」として定着し、各地で運行されている。一覧表にまとめたので「スーパー●●」の傾向を感じ取ってみよう。

列車名 運行時期 登場時の運行区間 登場と廃止のきっかけ
「スーパー有明」 1988~1990年 博多~西鹿児島間 「有明」の最速タイプ。「ハイパー有明」へ変更になった
「スーパーくろしお」 1989~2012年 京都~新宮間 パノラマグリーン車編成。「くろしお」に統合された
「スーパーひたち」 1989~2015年 上野~仙台間 新型車両651系を使った速達型列車。「ひたち」「ときわ」による列車愛称再編によって消滅
「スーパー雷鳥」 1989~2001年 神戸・大阪~富山間 485系パノラマグリーン車とラウンジカーを連結した。「サンダーバード」に統合されて消滅
「スーパーホワイトアロー」 1990~2007年 新千歳空港~旭川間 新型車両785系を使用。「スーパーカムイ」に統合された
「スーパービュー踊り子」 1990年~現在 池袋・新宿・東京~伊豆急下田間 展望電車251系を使用。「スーパービュー」まで冠詞ともいえるため、「スーパー」系列ではないともいえる
「スーパーとかち」 1991年~現在 札幌~帯広間 キハ183系2階建て車両を使用
「スーパードラゴン」 1993~2013年 一ノ関~盛間 大船渡線の快速列車。前年に大船渡線の愛称が「ドラゴンレール大船渡線」になったため、愛称を公募。『ドラゴンボール』ファンの小学生の応募が採用された。普通列車化で愛称消滅
「スーパーやくも」 1994~2006年 岡山~出雲市間 「やくも」の速達列車として誕生。その後、停車駅を増やして「やくも」に統一
「スーパー北斗」 1994年~現在 函館~札幌間 キハ281系気動車を導入して速達化
「スーパーはくと」 1994年~現在 京都~鳥取・倉吉間 智頭急行HOT7000系を使用
「スーパーあずさ」 1994年~現在 新宿~松本・信濃大町間 振り子式車両のE351系を使用
「スーパーラビット」 1995~2002年 広島~福山間 広島と福山をノンストップで走る快速列車。各駅停車化によって消滅
「スーパーはこね」 1996年~現在 新宿~箱根湯本間 「はこね」の途中停車駅を増やしたため、従来の新宿~小田原間ノンストップの特急ロマンスカーを「スーパーはこね」とした
「スーパーおおぞら」 1997年~現在 札幌~釧路間 キハ283系を使用
「スーパーはつかり」 2000~2002年 盛岡~青森間 E751系を使用した速達型列車。東北新幹線八戸延伸によって廃止
「スーパー宗谷」 2000年~現在 札幌~稚内間 キハ261系を使用
「スーパーくにびき」 2001~2003年 鳥取・米子~益田間 キハ187系を使用。「スーパーまつかぜ」に改称
「スーパーおき」 2001年~現在 鳥取・米子~小郡(現・新山口)間 キハ187系を使用
「スーパー白鳥」 2002~2016年 八戸~函館間 789系を使用
「スーパーいなば」 2003年~現在 岡山~鳥取間 キハ187系を使用
「スーパーまつかぜ」 2003年~現在 鳥取・米子~益田間 「スーパーくにびき」から変更
「スーパーライナー」 2004年~現在 出雲市~松江しんじ湖温泉間 休止していた特急列車の復活を機に愛称を設定
「スーパーカムイ」 2007年~現在 札幌~旭川間 「スーパーホワイトアロー」と「ライラック」を統合
「スーパーおれんじ」 2008年~現在 熊本~出水間 肥薩おれんじ鉄道のJR熊本駅乗入れ直通快速として登場
「スーパーこまち」 2013~2014年 東京~秋田間 新型車両E6系を使用し、東北新幹線内を時速300kmで走る列車。秋田新幹線全列車のE6系置換え完了で「こまち」に戻る

この表にあるように、「スーパー●●」の元祖「スーパー有明」は、意外にも誕生から約2年で終わり、1990年に「ハイパー有明」に改名した。「スーパー有明」や「有明」に使われている783系には「ハイパーサルーン」という愛称がある。そこで、783系を使う「有明」をすべて「ハイパー有明」に統一したというわけだ。

しかし、この「ハイパー有明」も約2年で消滅する。博多~西鹿児島間の特急列車に、新たに「つばめ」という愛称が与えられたからだ。「つばめ」は九州新幹線に引き継がれ、「有明」は鹿児島本線の博多駅発着の短距離特急として存続している。

全国の「スーパー」シリーズの元祖となったJR九州では現在、「スーパー●●」が走っていない。「スーパー」に代わって登場した「ハイパー」は、「ハイパー有明」「ハイパーかもめ」「ハイパーにちりん」が存在したけれど。これらの愛称も使われていない。「ハイパー」のほうは「スーパー」のように全国区にはならなかったようだ。