JR東日本の駅は東日本地域にある。JR東海は新幹線を含むため、東海地域だけとはいえない。JR東日本管内にある東海道新幹線の駅はJR東海の飛び地だ。JR西日本の駅も西日本地域だけではなく、山陽新幹線小倉駅・博多駅などもJR西日本の飛び地だ。陸続きだから、疑問を感じても「そういうものか」と思ってしまう。

それに比べると、北海道・四国・九州はわかりやすい。JR九州の駅はすべて九州島内にある。JR四国の駅はすべて四国島内にある。当たり前である。しかし、JR北海道だけは例外だ。青函トンネルの向こう側、青森県に1駅だけ、JR北海道が所有、管轄する駅がある。相手の陣地の中の飛び地。JR北海道の駅が、すべて北海道内にあると思ったら大間違いだった。

青森県内の津軽今別駅は北海道新幹線奥津軽いまべつ駅となり、3月26日に開業する

北海道にはない、しかしJR北海道の駅。それは海峡線の津軽今別駅だ。所在地は「青森県東津軽郡今別町字大川平清川内」となっている。ただし、現在は北海道新幹線開業準備のため、ホームは撤去。すべての列車が通過している。廃止されたわけではないけれど、列車では訪問できない。そして、3月26日からは北海道新幹線の「奥津軽いまべつ駅」として営業を再開する。

所属路線がJR北海道の管轄だから

なぜこの駅がJR北海道の所有、管轄になるか? 理由は明快だ。この駅が所属する海峡線がJR北海道の路線だからである。海峡線はJR東日本の津軽線中小国駅とJR北海道の江差線木古内駅を結ぶ路線だ。つまり、青函トンネルも海峡線でJR北海道の管理となっている。時刻表など旅客案内上は、青森駅から中小国駅までの津軽線と、海峡線、江差線、函館本線の五稜郭駅から函館駅までをつないで「津軽海峡線」と称している。

全国組織の国鉄を分割して民営化するときに、建設中だった青函トンネルと海峡線についてはJR北海道の所属とした。JR東日本との境界駅を中小国駅と定めたため、ここから北は線路も駅もJR北海道所属になった。かつて、青函トンネル見学のために列車が停車した竜飛海底駅もJR北海道の駅。だから、青函トンネル見学ツアーのガイドさんもJR北海道の職員さんだった。

海底トンネルといえば、関門トンネルはどうかというと、下関駅はJR西日本の所有、門司駅はJR九州が所有する。ただし、関門トンネルを含む下関~門司間の線路はJR九州が所有する。JR九州は本州内に線路だけ保有していることになる。山陽本線は神戸駅が起点、門司駅が終点だけど、末端の1区間だけJR九州に所属している。山陽新幹線は逆で、新関門トンネルはJR西日本の所属だ。小倉駅と博多駅の新幹線側の駅はJR西日本の所有だ。

四国と本州を結ぶ瀬戸大橋線は、本州側の児島駅がJR西日本とJR四国の境界になっている。児島駅の管轄はJR西日本である。下関駅に似た方式で、あの長大な瀬戸大橋はJR四国の管轄となる。本州にJR四国の飛び地駅はない。

津軽今別を駅にする計画はなかった

青函トンネルを含む海峡線を建設するとき、津軽今別駅を作る計画はなかった。青函トンネルの保守のための基地とする計画だけだった。付近には並行する津軽線津軽二股駅もある。しかし、海峡線側にも駅があれば、青森への通勤通学が便利になる。そこで地元の人々が国鉄時代から旅客駅化を請願したという経緯がある。事業を引き継いだJR北海道としても、青函トンネルで事故が起きた場合の列車の地上避難所として使おうという算段があった。こうして1988年3月13日に津軽今別駅が開業した。

1996年に政府与党が北海道新幹線の新青森~札幌間のルートで合意。その中で津軽今別駅の位置が奥津軽(仮称)として盛り込まれた。旅客数を見込むというよりも、保守基地、避難駅として必要という判断が大きかったと思われる。請願時の「青森への通勤通学」の趣旨は引き継がれており、北海道新幹線の時刻表では、奥津軽いまべつ駅7時26分発・新青森駅7時41分着の「はやぶさ8号」が設定されている。

振り返れば、本来は地元の人々の生活や旅人には無縁のはずだった施設が駅となり、新幹線停車駅にまで格上げされたのだから大出世といえる。成功祈願のお守りを作ったら御利益があるかもしれない。