ほとんどの乗用車は製造会社が自前のブランドでエンジンを作っている。トヨタ車のエンジンはトヨタ製だし、日産車のエンジンは日産製。フォルクスワーゲンのエンジンはフォルクスワーゲンが作っている。乗用車の商品価値の根幹がエンジンの性能といえる。ただし、実際には子会社が製造している場合もあるし、近年は開発費を節約するなどの理由で、同業他社からエンジンの供給を受けて作られるクルマもある。

最新型ディーゼル機関車DF200形は「ななつ星in九州」にも採用された

鉄道会社は車両製造会社から車両を購入している。その車両製造会社は、基幹となる構成部品のひとつとしてエンジンをエンジン製造会社から調達している。そこで、日本のディーゼル機関車、ディーゼルカーのエンジンを作っている会社を調べてみた。

ディーゼルエンジンといえばディーゼル機関車だ。JR貨物の最新形式DF200形のエンジンは、初期の12両のみドイツのMTUフリードリヒスハーフェン社が作っていた。現在は小松製作所が製造している。V形12気筒で最大出力は2,071馬力。このチカラを1分間2,100回転で発揮する。常用時の最大出力(定格出力)1,800馬力で、1分間に1,800回転するときに発揮する。1,800馬力という数字はかなり大きい。小型乗用車の10倍以上。そして、意外にも低回転だ。ただし排気量も大きくて46,300ccとなっている。

DF200形はこのエンジンを2基搭載している。だから車両としては常用最大出力が3,600馬力。排気量は92,600ccとなる。重い貨物列車をがっちりと引っ張っていく頼もしさが、この性能から感じ取れる。

ただし、DF200形はこのパワーを直接的に動力として使っているわけではない。このエンジンは発電機として使われ、走行する場合はこのエンジンで発電した電力を使ってモーターを駆動させる。この方式を「電気式ディーゼル機関車」という。発電所を内蔵した電気機関車といってもいい。これはJR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」の機関車DF200形7000番台も同じ。

JR北海道「キハ261系」

ディーゼルカーはどうか。JR北海道の特急形気動車キハ261系のエンジンは新潟原動機製の直噴式ディーゼルエンジン。水平直列6気筒でインタークーラー付きターボチャージャーを搭載している。スポーツカーみたいな用語が並んでおもしろい。

このエンジンは常用時の最大出力(定格出力)460馬力を1分間あたり2,100回転で発生する。排気量は13,300cc。DF200形のエンジンに比べて小さいけれど、キハ261系はこのエンジンを1両あたり1基または2基搭載している。特急「スーパーとかち」の5両編成で7基、合計3,220馬力で93,100ccだ。DF200形に近い数字になる。

普通列車用のディーゼルカーはどうだろう。JR東日本のキハ100系は車両によってエンジンメーカーが異なり、小松製作所、新潟鐵工所(現在は新潟原動機)、米国カミンズ社が製造している。キハ100形は、小松製作所製が常用時最大出力(定格出力)330馬力(1分間2,000回転時)で11,040cc、新潟鐵工所製は同性能で12,700cc。キハ110形はカミンズ製で、常用時最大出力(定格出力)420馬力(1分間2,000回転時)、排気量は14,032cc。いずれもターボチャージャー、インタークーラーを装備する。

JR東日本キハ100系(写真はイメージ)

現在のディーゼルカーのエンジンは、新潟電動機、小松製作所、カミンズの3社が主力だという。国鉄時代は国鉄と製造会社が共同開発し、参加各社が製造していた。おもな開発会社は新潟鐵工所、ダイハツディーゼル、神鋼造機で、戦前は三菱重工業や池貝製作所も参加していた。

現在も各地に残り、観光列車への改造も行われているキハ40系の場合、新潟鐵工所、ダイハツディーゼル、神鋼造機が共同開発した「DMF15系」というエンジンを採用し、常用時最大出力(定格出力)220馬力(1分間2,000回転時)で14,770cc。キハ100系はこの倍以上の性能だ。電車に匹敵する速度で音も小さい。数字からも乗り心地からも、ディーゼルエンジンの進化を感じる。