2015年3月のダイヤ改正で定期運行を終了する寝台特急「北斗星」。列車名の由来は北の夜空に輝く「北斗七星」だ。別名「北斗星」。星座でいえばおおぐま座である。おおぐま座の7つの星はひしゃくの形にも結ばれる。「北斗七星」「北斗星」の「斗」の字は「ひしゃく」という意味がある。「斗」は尺貫法の単位でもあり、1斗は約18リットル。そう、あの四角い「一斗缶」の「斗」だ。

寝台列車伝統の天体名で運行を開始した「北斗星」。テールマークにも北斗七星が描かれる(写真はイメージ)

上野~札幌間を結ぶ寝台特急に「北斗星」と名づけられた理由は、初めて東京と北海道を直通する列車だから。当時は上野~青森間を結ぶ寝台特急「ゆうづる」「はくつる」も健在だったため、新しい名前を公募した。公募順位は108位と高くはなかったけれど、採用された理由は、「新しい寝台特急に天体に関連する名前をつける」習慣があったからだという。

東京発の寝台特急は伝統的な「さくら」「富士」、上野発の特急列車は昼行、夜行を問わず、「ひばり」「はつかり」など鳥にちなんだ伝統的列車名がある。しかし、新しく設定された寝台列車は、東京~大阪間を結ぶ寝台急行「銀河」、東京~秋田・青森間を結ぶ寝台特急「あけぼの」、大阪と九州方面を結ぶ寝台特急「金星」「明星」など、たしかに天体や天文現象に由来する名前が多い。「北斗星」もこの流れで、なおかつ北の大地へ行く列車としてふさわしい星の名前が選ばれた。

「北斗星」という名の小惑星がある

寝台特急「北斗星」は北斗七星にちなんでいるけれど、逆に寝台特急「北斗星」にちなみ、「北斗星」と命名された星もある。なんともややこしい話だけど、列車名に由来する「北斗星」は小惑星だ。火星の軌道と木星の軌道の間にある小惑星帯のなかにある。『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』にも登場した、いわゆるアステロイドベルトだ。

太陽系を周回する小さな天体のうち、尻尾がない星が「小惑星」、尻尾があると「彗星」とのこと(写真はイメージ)

小惑星「北斗星」は、日本人の天文ファン、箭内政之氏と渡辺和郎氏によって1989年1月4日に発見された。前年の1988年3月から運行開始した寝台特急「北斗星」にちなんで名づけられたという。

日本語で書くと北の空にある北斗星(北斗七星)とややこしいし、小惑星の命名規則でも「他天体の名前と混同する名前は不可」とされているはずけれど、それは英語の話。小惑星の北斗星の正式名称は「5374 Hokutosei」とローマ字表記だから、おおぐま座を構成する7つの天体とは異なる。北斗七星は英語で「Big Dipper(おおきなひしゃく)」というそうだ。

小惑星は発見者に命名権があるそうで、世界中の天文ファンが夜空を探し、新しい星に名前をつけている。新しい小惑星を見つけたと思ったら、複数の夜に位置を観測し、そのデータをハーバード大学天文台の中にある小惑星センター(Minor Planet Center)に報告する。小惑星センターは国際天文学連合の機関だ。

発見した天体の位置データが受理されると仮符号が与えられ、本当に新しく発見された天体であるか、軌道が確定できるかの確認が実施される。新天体と認定されると小惑星番号が決まり、発見者に命名提案権が与えられる。提案された名前について審査が行われ、認められると晴れて天体名が決定する。命名の条件は、「英文字で16文字以内」「既にある天体と紛らわしくない」「公序良俗に反しない」などがあるという。

こうして小惑星「5374 Hokutosei」は世界で認められた名前となった。寝台特急「北斗星」は3月で定期運行を終了し、8月には臨時列車の運行も終わる予定だけど、その名をつけた小惑星は永遠に存在し続ける。

※写真は本文とは関係ありません。