南海電鉄は大阪中心部のなんば駅から和歌山・関西空港方面と高野山方面への路線を持つ。列車種別が多く、時刻表ファンにとって楽しい路線だ。なんば駅を発車する列車は、普通、各停、準急、区急、空港急行、急行、快急、そして特急は「ラピート」「サザン」「こうや」「りんかん」の4種類。……あれ、ちょっと待った。「普通」と「各停」って同じ意味じゃないの? どう違うの?

南海電鉄の列車種別に「普通」と「各停」がある

「各停」は高野線、「普通」は南海本線の列車

「普通」といえば、たいていの鉄道会社では各駅に停車する列車を示す。「各停」は文字通り「各駅停車」の略だ。どちらも同じ意味のように思えるけれど、南海電鉄は区別している。そのヒントは運行系統だ。「各停」は高野線、「普通」は南海本線の列車となっている。

南海電鉄の運行系統

南海本線と高野線は、なんば駅から岸里玉出駅まで線路が並んでいる。それぞれの複線が寄り添う「線路別複々線」と呼ばれるタイプだ。なんば駅から岸里玉出駅までを見ると、高野線の「各停」はすべての駅に停車するけれど、南海本線の「普通」は今宮戎駅と萩ノ茶屋駅を通過する。その理由は単純明快。南海本線側には今宮戎駅・萩ノ茶屋駅のホームがないのだ。高野線の「各停」はこの2つの駅に停まるから、文字通り「各駅停車」となる。

南海本線の「普通」は、この2つの駅に停まりたくても停まれない。これでは「各停」とは名乗れない。しかし南海本線としては、ホームのあるすべての駅に停まっている。だから「普通」という種別になっている。

もともと南海本線はなんば駅が起点、高野線は汐見橋駅が起点だった。2つの路線は岸ノ里駅で交差し、高野線の列車も一部が南海本線に乗り入れ、なんば駅発着となっていた。

1938年、南海本線のなんば駅から天下茶屋駅まで高架で複々線化された。高野線のおもな運行系統はなんば駅発着となった。その後、1985年に汐見橋~岸ノ里間は高野線方面とは切り離され、折返し運転となった。南海本線は複々線の西側、高野線は東側を使うようになって、路線の交差は解消された。1993年、岸ノ里駅は玉出駅と統合され、岸里玉出駅となっている。

今宮戎駅と萩ノ茶屋駅はもともと南海本線の駅だったけれど、現在は高野線系統の「各停」しか停まらない。この2つの駅に停まれない南海本線の各駅停車タイプの列車は「普通」を名乗っているというわけだ。