北陸新幹線金沢開業まであと1年。新たな列車名として、「かがやき」「はくたか」「つるぎ」が決定している。中でも東京~金沢間の速達列車「かがやき」が、北陸新幹線を代表する列車といえそうだ。新幹線の列車名としては、伝統や由緒のエピソードが少なく地味なほうだけど、新幹線列車名の原点回帰ともいえる名前だ。

北陸新幹線用新型車両E7系

「新幹線列車名の原点」とは、もちろん1964(昭和39)年に開業した東海道新幹線の「ひかり」「こだま」だ。「ひかり」は開業にあたって公募された愛称で、堂々の1位。新幹線の世界に誇るスピードを表す名前として、物理学上で最も速い「光速」にちなむ「ひかり」がふさわしいと決定された。

「ひかり」に準じる列車として、「音速」が注目されて「こだま」が選ばれた。「こだま」は公募で10位だった。当時の公募では、他に「富士」「さくら」など、日本初の列車名や伝統的な列車名もあった。このことからも、列車愛称の「公募」は「投票」ではないとわかる。

新幹線の列車名は「光」と「音」にちなむ。その方針は1982(昭和57)年6月開業の東北新幹線、同年11月開業の上越新幹線にも受け継がれた。東北新幹線の速達タイプは「音系」の「やまびこ」、上越新幹線の速達タイプは「光系」の「あさひ」が選ばれた。

「やまびこ」は東北本線上野~盛岡間の特急列車の名前であり、そのまま新幹線に移行した。「あさひ」は仙台~新潟間の急行列車の名前だった。ただしこちらの由来は、「朝日岳」という山の名前だったという。このまま各新幹線の列車名が「光系」「音系」だとすっきりするけれど、「あさひ」は2002年に姿を消してしまう。1997年にデビューした「あさま」と紛らわしかったからといわれている。

「光」や「音」のこだわりがなくなった

現在の新幹線列車は、「とき」「はやぶさ」「つばめ」のような鳥の名前、「みずほ」「さくら」など植物の名前、「たにがわ」「あさま」など山の名前……というように、スピード感にこだわらない名前が多い。「こまち」にいたっては、「静々と歩く大和撫子」のイメージが強いとして、違和感を唱える声もあったほど。一時的とはいえ、「スーパーこまち」というキャリアウーマン(?)も出現した。秋田新幹線には2階建て車両は入れないけれど、肝っ玉母さんのような「MAXこまち」が現れなくてよかったかも!?

1992年、「ひかり」より速い列車として「のぞみ」が登場する。物理学上で最速の「光」を超えてしまうわけで、ついに鉄道は物理学の壁を突破したと話題になった。

この名前は公募ではなく、有識者を集めた検討会で命名された。「光や音を超えるもの、それは人類の希望」という意味合いだろうか。検討時の最終候補名は、かつて修学旅行用列車に使われていた「きぼう」。これを、鉄道ファンで知られる作家の阿川弘之氏が「日本の列車名は大和言葉で」とアドバイスし、「のぞみ」となったという。列車開発時の仮の名前は、「スーパーひかり」だったそうだ。

「かがやき」に話を戻すと、この列車名は1988年、金沢~長岡間の特急列車でデビューしている。上越新幹線と接続し、東京と金沢を最短で結ぶルートに設定された。しかし1997年、もっと速い特急「はくたか」ルートが誕生したため、役目を終えたとして引退した。2015年の再登場で、新幹線では「あさひ」以来、33年ぶりに「光系」の列車名が与えられる。

ちなみに、「かがやき」の列車名は「加賀焼き」をかけた、という話もあるけれど、石川県で有名な焼き物といえば「九谷焼」である。