特急「はくたか」は、おもに金沢~越後湯沢間を結ぶ列車だ。越後湯沢駅で上越新幹線に接続するため、東京方面と北陸方面を行き来する人に愛用されている。車両は東京近郊にはない形で、白地に灰色と青色の帯をあしらっている……、と思ったら、似た形で赤帯の車両も混じっている。なぜ色が異なるのだろう? 色以外に違いはあるだろうか?

赤い「はくたか」

灰色の「はくたか」

車両の違いを説明する前に、「はくたか」誕生の経緯を紹介しよう。1982年の上越新幹線開業後、東京方面と金沢方面を直通する特急列車は一部を除き廃止され、長岡駅で上越新幹線と信越本線の特急列車を乗り継ぐルートが主流になった。1997年、第3セクター鉄道の北越急行が「ほくほく線」を開業。このルートを使ってさらに所要時間を短絡する列車を計画した。これが現在の特急「はくたか」である。運行は北陸側のJR西日本と、越後湯沢側のJR東日本、そして間にある北越急行が共同で実施するしくみになった。

ほくほく線は上越線の六日町駅と信越本線の犀潟駅を最短で結び、時速160kmの運行が可能な高規格設計の路線だ。このルートを使えば、越後湯沢駅から北陸方面への距離が短縮でき、最高速度も上げられる。そこでJR西日本は、在来線車両として高性能な681系を導入する。一方、JR東日本は485系2編成を用意した。北越急行も新型車両1編成を製造すると決めた。

相互直通運転の場合、自社の区間を他社の車両が運行するとき、車両使用料金を支払う。ただし、その精算は面倒なため、運行面で工夫して、各社の車両が相手先の区間を走る距離を一致させる慣例がある。そのために北越急行も自社の特急用車両が必要だ。しかし独自設計の新造車両を1編成だけ製造するとコストがかかりすぎる。そこでJR西日本の681系と同じ電車を発注した。

車両の性能は同じでも、所属会社が違う

ただし、所有者を区別するために製造番号は変えた。JR西日本は0番台、北越急行は2000番台となった。0番台はJR西日本のコーポレートカラーを採用して青い帯を入れた。これに対し、北越急行の2000番台は赤と水色の帯とした。これが赤い「はくたか」となった。つまり、「はくたか」の681系の色の違いは所有する会社の違いだ。性能は同じである。

JR東日本の485系は681系に比べて最高速度が低いため、後に2編成とも「はくたか」から引退。その代わりにJR西日本と北越急行が1編成ずつ車両を導入した。JR西日本は他の区間で使っていた681系を転属させたけれど、北越急行は新造となった。このときすでに681系の改良版ともいうべき683系が製造されていて、北越急行も683系を導入することになった。681系と同じように製造番号で区別するため、北越急行の683系は8000番台とし、帯も681系2000番台と同じ赤と水色とした。

現在、赤い「はくたか」は2編成(ともに基本編成6両・付属編成3両)ある。「はくたか」が9両編成で運行される場合、北越急行所属の編成とJR西日本所属の編成が連結される場合もある。「はくたか」は灰色の電車が多く、赤い「はくたか」は珍しい。問い合わせが多いせいか、北越急行の公式サイトでは編成表が公開されている。

ちなみに、北越急行所属の681系・683系は、白地に赤のイメージから「スノーラビット」の愛称がある。帯の赤の色名は「クリムゾン」といって、カイガラムシという昆虫から採れる染料「コチニール」の色が由来だ。「コチニール」はかつて、「カンパリ」というリキュールにも使われていた(現在は他の着色料を使用)。「はくたか」の赤は、カクテルのカンパリソーダの赤と同じといえそうだ。

なお、2015年春の北陸新幹線の開業で、「はくたか」の列車名は北陸新幹線で使われることになった。北越急行経由の特急も廃止の方針だ。赤い「はくたか」をはじめ、JR西日本の681系車両も今後の動向が気になるところだ。