長距離列車は旅人の憧れのひとつだ。国土の狭い日本でも、1,000km以上を走る列車がある。日本最長距離を走る旅客列車は、大阪~札幌間の寝台特急「トワイライトエクスプレス」で、走行距離は1,508.5km(大阪行)、所要時間は約23時間。第2位は上野~札幌間の寝台特急「カシオペア」「北斗星」で、走行距離は1,214.7km。所要時間は、「カシオペア」が約17時間、「北斗星」が約16時間となっている。

この3つの列車のうち、「トワイライトエクスプレス」と「カシオペア」は臨時列車扱いだ。定期列車の最長距離列車は「北斗星」となる。でもじつは、これらの列車よりもっと長距離を走る定期列車がある。なんと九州の福岡から北海道の札幌までを結び、走行距離は約2,136.6km、所要時間は約43時間。「トワイライトエクスプレス」より約628km、「北斗星」より約922kmも長い。これだけ乗車できるなら、さぞやゆったりした列車旅を楽しめそうだけど、残念ながら乗車できない。コンテナ方式の貨物列車だからだ。

日本最長距離列車は貨物列車だった!

福岡~札幌間を1日1往復、札幌行が日本最長距離列車

人知れず日本最長距離を走る貨物列車は、福岡と札幌の間を1日1往復している。経由する路線は、鹿児島本線、山陽本線、東海道本線、湖西線、北陸本線、信越本線、羽越本線、奥羽本線、津軽線、津軽海峡線、江差線、函館本線、室蘭本線、千歳線だ。札幌行の列車の走行距離は2136.6km、福岡行の列車の走行距離は2128.8km。

札幌行のほうが若干長い理由は、途中で東青森駅に立ち寄るため、青い森鉄道線にちょっとだけ入り、青森信号場~東青森間を往復するから。その分、7.8kmだけ走行距離が長くなっている。所要時間は札幌行が約43時間。福岡行が約37時間。距離の差より大きな時間差だ。これは途中駅での作業時間や、時間調整の停車時間が長いからだ。

EF510形牽引で新潟付近を走る貨物列車

この貨物列車の詳細を、「JR貨物時刻表」(鉄道貨物協会刊行)でたどってみよう。

福岡発札幌行は、福岡貨物ターミナルを深夜1時55分に発車。列車番号は「2070」。北九州貨物ターミナルで荷物扱いをして、次の停車駅は山陽本線の幡生駅だが、ここは機関車交換だけ。夜明けの新南陽駅も運転停車。広島貨物ターミナルに朝8時35分着、8時56分発。西岡山駅、姫路貨物駅、神戸貨物ターミナルで運転停車し、吹田貨物ターミナルに15時3分着、15時28分発。ここも運転停車で、機関車を交換する。

ここから列車番号は「3099」に変わり、夕暮れの北陸本線を行く。敦賀、南福井、金沢貨物ターミナルに運転停車した後、富山貨物駅に荷扱い停車(20時50分着、21時36分発)。直江津、黒井、南長岡に運転停車して、新潟貨物ターミナルは日付が変わって0時59分着、2時21分発。荷役作業時間が長い。酒田に運転停車して、羽越本線で2回目の夜明けを迎える。次の荷扱いは秋田貨物駅で、7時18分着、8時7分発。大館、弘前、青森信号場に運転停車し、青い森鉄道に入って東青森駅に運転停車(12時13分着、12時31分発)。ここで逆方向に走り出し、再び青森信号場に運転停車。ここから列車番号が「99」となる。

列車は青函トンネルを通過し、函館貨物駅に運転停車する。発車時刻は16時34分だ。函館本線を北上し、長万部に運転停車しつつ、夕暮れの室蘭本線をひた走る。東室蘭、苫小牧と運転停車し、札幌着は21時13分。丸2日近くかかる行程だ。

福岡~札幌間の貨物列車の行程

福岡~札幌間貨物列車の運行ダイヤ。24時間以上走る列車は、終着駅に着く前に次の同じ列車が出発し、逆方向の同じ列車と何度もすれ違う

「JR貨物時刻表」では、機関車の運用表も掲載されている。この表によると、福岡~幡生間は門司機関区のEH500形、幡生~吹田間が吹田機関区のEF210形、吹田~東青森・青森信号所間が富山機関区のEF510形、東青森~五稜郭間は五稜郭機関区のED79形が重連、五稜郭~札幌貨物ターミナルは鷲別機関区のDF500形、となっている。

これほどの長距離貨物列車に、どんな積み荷があるのだろう? コンテナごとにさまざまな荷物があり、一部区間だけの利用も多い。札幌行は福岡、近畿、北陸方面から北海道向けで、お菓子や乾物など、「生鮮ではないけれど、賞味期間が短い」タイプの食品が多いという。札幌発福岡行は北海道産の野菜や米など、鮮度の高い荷物が多い。そのためか、走行時間は短く、本州内は運転停車のみで荷物の扱いはない。

札幌行の列車は約43時間、福岡行の列車も約37時間かかるけれど、それでも船便やトラック便よりずっと速い。航空貨物の次に速い輸送手段としても人気の列車とのことだ。