JR北海道の江差線のうち、木古内~江差間が2014年に廃止されるという。最終運行日は2014年5月11日の予定となっている。北海道新幹線の運行開始によって、JR北海道は五稜郭駅から青函トンネル方面の旅客列車の運行を終了する方針だ。江差線の五稜郭~木古内間は第3セクター鉄道による列車運行が決まったが、支線のようになっている木古内~江差間は廃止され、バスに転換されることが決まった。

廃止予定の木古内~江差間には、木古内駅を含めて10の駅がある。しかし、その他にもうひとつ、いままで列車が停まったことがない"まぼろしの駅"がある。筆者は2009年9月22日にこの路線を乗車し、幸運にもそのまぼろしの駅を見た。列車が停まらなかったので写真はブレてしまったけれど、駅名標には「あまのがわ」と書かれていた。

江差線には列車が停まらない"まぼろしの駅"がある(写真提供:北海道夢れいる倶楽部)

江差線の"まぼろしの駅"とは、湯ノ岱駅と宮越駅の間にある「天ノ川」駅だ。じつはこれ、正式な駅ではない。駅に似たモニュメントだ。だからホームではなく「ホームのような構造物」、駅名標ではなく「駅名標のような看板」である。

設置者は函館市の「北海道夢れいる倶楽部」だ。鉄道沿線の街おこしのひとつとして、同倶楽部が上ノ国町の人々の協力を得て、北海道の"秘境駅"をイメージしたモニュメントを造ったという。駅名の由来は付近を流れる「天の川」だ。

「天ノ川」駅の「開業」は、ラッキーセブンが並ぶ平成7(1995)年7月7日。もちろん列車は一度も停まったことはない。現在、駅名標のような看板も撤去されており、月に1~2回の公式公開日のみ取り付けられているとのこと。直近の予定は6月22日と、天の川・七夕にちなんだ7月7日。両日は公認バスツアーが実施され、ホームのような構造物に立ち、列車の通過を見学できる。一般公開時間は10:30~14:00となっており、この時間帯に通過する列車内からも看板を見られるようだ。

看板は公開日のみ設置され、車内からも見物できる。公開日に合わせて運行された臨時列車では、モニュメント付近をゆっくり通過するなどの配慮もあったという(写真提供:北海道夢れいる倶楽部)

ロマンチックなまぼろしの駅「天ノ川」は、江差線廃止よりもひと足早く"廃止"されるという。2014年3月に借地契約の期限を迎えるためで、同倶楽部では積雪前に施設を撤去する方針。同駅を見学するなら、この秋が最後になるかもしれない。一般公開日や見学バスツアー、グッズなどの情報は、公式サイトでも随時案内されるとのことだ。