道路の信号機と鉄道の駅間の信号機(閉塞信号機)では、色が変わる順番が違う。色の意味も異なっている。ところで、道路信号の場合は赤色や黄色で点滅する場合があるが、じつは鉄道にも点滅する閉塞信号機がある。設置されている路線は京急電鉄、北総鉄道、成田スカイアクセスのみ。この信号の意味は何だろう?

京急電鉄は「点滅する信号機」を採用している

道路の信号機の場合、赤の点滅は「一時停止せよ」の意味を持つ。いったん停止線で停止し、安全を確認してから進行できる。「止まれ」という赤い三角標識と同じ意味がある。歩行者は「他の交通に注意して進んでよし」だ。黄色の点滅は歩行者だけでなく自動車も「他の交通に注意して進んでよし」となる。実際には、「徐行せよ」である。徐行とは、いつでも即時停止できる速度のこと。速度の具体的な数字は決まっていないけれど、歩行者と同じ速度という認識が広まっているようだ。

鉄道信号機の場合、黄色と青が同時に点滅する。これは「抑速」といい、青信号のひとつ手前の信号機で表示される。意味は「次の青信号にまでに、その次の黄色信号に対応できる速度まで減速しなさい」である。言葉だとわかりづらいので、今回も図で説明する。

まず、通常の閉塞信号機の場合は、列車がいる区間の入口に赤信号、その手前の区間に黄信号、その手前に青信号だった。

「赤」は「絶対に停止せよ」で、運転士がブレーキ操作を行わなかった場合、自動的にブレーキをかけて列車を止めるしくみもあわせて用いられる。「黄」は、「次に赤信号があるから、そこで停止できるスピードに減速せよ」だった。「青」は、「この先ふたつ目の区間まで列車はいない。定められた最高速度で進んで良い」だった。

従来の信号と抑速信号の違い

京急電鉄もかつてこの方式を採用していた。だが1995年、同社は品川~横浜間で最高速度を引き上げた。列車の性能が上がり、もともと線路の幅が新幹線と同じ広さだったため、安定して運行できると判断されたからだ。

しかし、性能的には可能でも、ひとつ問題があった。それが信号機だ。それまでの青信号の最高速度は時速105kmだった。この速度に対応できるように信号機の間隔も整えていた。しかし、最高速度が時速120kmになると、「黄」信号に進入するときに減速が間に合わず、規定の速度を超えてしまう。赤信号で止まれない可能性もありそうだ。これを解決するためには、信号機の間隔を広げる必要がある。

しかし、全線にわたって信号機の間隔を再調整するとなれば、膨大な手間と費用がかかる。そこで、既存の信号機の間隔のままでもスピードアップできるように、「青」を「最高速度120km/hの進行を示す」と再定義し、「青」と「黄」の間に、「かつての青信号の最高速度105km/h」を示す「青と黄色の点滅」を追加した。これが点滅する信号の由来である。

ちなみに、信号機の「青」「黄」が点灯するが、点滅はしないケースもある。これは全国の鉄道で採用されており、「次の信号機が黄色」と予告する意味がある。列車の速度は「黄」と「青」の中間くらいだ。これに対して「青」「黄」の点滅は、「最高速度105km/h時代の青色ですよ」だ。かなり意味合いが違うし、列車の通過速度も異なる。

京急電鉄は従来の信号機を維持するため、こうしたしくみを作った。相互直通運転を行う北総線・成田スカイアクセス線もこれに合わせた格好だ。ただし、新しく建設された路線では、通常の青信号より速く走るための「高速進行」を指示する信号機が用いられる。表示色は「青がふたつ」だ。北越急行ほくほく線でも、特急「はくたか」用に使われている。成田スカイアクセス線でも、「スカイライナー」専用で「青がふたつ」を表示するとのことだ。