自分が乗ってきた列車を降りてホームから見送る。観光してから駅に戻り、さらに先へ進もうとすると、なんと同じ列車がやって来た。車両番号も同じ。うっかり置き忘れた空き缶も同じ位置に……。かつて、そんな不思議な体験をできる列車があった。山手線のような環状線なら当たり前だけど、その路線は単線のローカル線だった。

五能線経由の臨時快速「リゾートしらかみ」(写真はくまげら編成)

走り去った列車が、折り返して戻ってくるなら当たり前のこと。しかし、同じ方向から2度も同じ列車が現れるなんて不思議な話だ。そんな列車が1999年から2005年まで実在した。五能線経由の臨時快速「リゾートしらかみ3号」である。現在は秋田~弘前・青森間を走っている。

「リゾートしらかみ3号」はおもに観光シーズンに運転されている。全席指定の快速列車で、窓が大きく、運転席の後ろに展望ロビーを備えたリゾートトレインだ。途中の景勝スポットで徐行運転したり、車内で津軽三味線の演奏が行われたりと、観光客向けのサービスが行われていた。だが現在は、「同じ駅に同じ列車が2度現れる」不思議現象は起きない。

「リゾートしらかみ3号」で見られた「蜃気楼ダイヤ」とは?

1999年から2005年までの「リゾートしらかみ3号」は、秋田駅を出発して奥羽本線を走り、東能代駅から五能線に入って海沿いを行く。あきた白神駅、十二湖駅、ウェスパ椿山駅、深浦駅に停車するところまでは現在も同じ。ところが当時、深浦駅に到着した「リゾートしらかみ3号」は、こっそり逆方向に走って岩館駅まで戻り、その後は再び十二湖駅、ウェスパ椿山駅、深浦駅に停車していたのだ。

ただし、当時の時刻表では深浦駅に長時間停車するように表示され、逆方向へ往復する部分は省略されていた。但し書きには、「あきた白神駅、十二湖駅、ウェスパ椿山駅に下車観光後、同じ列車に乗車できます」と書いてあるのみ。時刻表には表示されない列車が走る不思議さから、「蜃気楼ダイヤ」と呼ばれた。

リゾートしらかみの運行図。時刻表には太い線の部分しか表記されていなかった

なぜこのような奇妙な運行をしていたかというと、「途中下車して観光してもらうため」だったようだ。リゾートトレインに乗った人々が、その快適な乗り心地を好み、車窓から景色を眺めるだけでは、沿線の観光地にはメリットがない。利用者にとっても、せっかく訪れたからには、もっと景色の良い場所を観光したい。

そこで十二湖駅、ウェスパ椿山駅、深浦駅などで下車した利用者が観光して戻ってきた頃に、「列車のほうがお迎えに行く」というスタイルになったわけだ。それぞれの駅では、「蜃気楼ダイヤ」に合わせた時間の観光ツアーが用意されていたという。

「蜃気楼ダイヤ」終了の理由は、「リゾートしらかみ5号」が新設されたから。「リゾートしらかみ」は好評で、専用車両を増やして1往復増発された。「リゾートしらかみ3号」で迎えに行かなくても、後続の「リゾートしらかみ5号」に乗り継げるようになった。

『A列車で行こう9』トリビア - 「臨時ダイヤ」設定で複雑な運行が可能に

鉄道会社経営 / 都市開発ゲーム『A列車で行こう9 Version2.0 プロフェッショナル』は、2010年に発売された『A列車で行こう9』のバージョンアップ版だ。以前紹介したリアルな縮尺の「1:1モード」や「電停」をはじめ、「車庫」「トレッスル橋」などの新たな鉄道施設が加わり、鉄道ファンにはうれしい機能が追加されている。中でもファン待望の機能として、駅の「臨時ダイヤ」設定とポイントの「個別分岐」設定がうれしい。

通常ダイヤの他に臨時ダイヤを設定可能。平日の通過や休日の時刻変更も対応する

『A列車で行こう9 Version2.0 プロフェッショナル』

A列車で行こう9 Version2.0 プロフェッショナル』は鉄道会社経営・都市開発シミュレーションゲーム。線路を敷き、列車を走らせ、駅に列車が発着すると都市が発展していく。シリーズ最新となる本作は、鉄道と建物の縮尺を1:1にする機能、架線の追加、ポイントの個別時間設定、建物の追加など、さらにリアルな鉄道風景を再現できる。Windows 8 / 7 / Vista / XP 対応。価格は7,140円(別途本体、建物キット、建物キット2ndが必要)。

企画・開発:アートディンク 販売:サイバーフロント

「臨時ダイヤ」は、同じ列車、同じホームに対して、定期列車とは別の動作を追加する機能だ。従来もひとつの列車についてホームごとに別の動作(複数の停車時刻、通過、折返しなど)を設定できた。しかし同じホームについては1パターンのみで、「平日は通過、休日のみ停車」という設定はできなかった。「臨時ダイヤ」機能の追加で、同じ列車、同じホームに対して、平日と休日に別の動作をさせたり、曜日ごとに通過駅を変更して貨物列車が資材を各駅に配分したりするような動作が可能になった。

列車、ホーム、曜日ごとに異なる動作を設定できる

ポイントの「個別分岐」設定は、同じ列車が時間帯別に分岐か直進を選択できる機能だ。前バージョンでは列車ごとに「直進」「分岐」「時間指定」しか選べなかった。「時間指定」は1日のうちひとつだけ「分岐」時間帯を設定する機能だ。これに対し、新たに追加された「個別分岐」は、複数の時間帯で同じ列車の分岐と直進を設定できるようになった。

「臨時ダイヤ」と「個別分岐」を組み合わせると、同じ通勤型車両の列車を各駅停車と快速列車の両方で運用できる。大手私鉄のターミナル駅に見られるような、「各駅停車が折り返し急行列車になる」という運用も可能だ。これで列車運用の幅が広がり、実際の列車ダイヤに近づいた。列車の運行にこだわるファンにはうれしいバージョンアップだ。

『A列車で行こう9』には「リゾートみのり」が収録されている。単線の観光路線を作ろう

『A列車で行こう9』の遊び方、楽しさを紹介する動画を発見!

『A列車で行こう9』は鉄道会社を経営しつつ街を発展させるゲーム。でも「鉄道路線づくりってどうするんだろう?」「経営って難しそう……」と思うかもしれない。興味はあるのに購入を迷っている人にぴったりの動画が、「ニコニコ動画」で公開されている。「鉄道初心者にもおすすめ『A列車で行こう9』プレイ講座」だ。作者はつー助教授氏。

つー助教授氏が『A列車で行こう9』の魅力を紹介する

2012年は年内に6本が公開された。今年の展開に期待

つー助教授氏はこれまでにも、『シムシティ』や『シヴィライゼーション』など、箱庭系のシミュレーションゲームのプレイ動画を公開し、人気シリーズとなっている。今回の『A列車で行こう9』も、独特の2ちゃんねるキャラクターの掛け合いトークで紹介。何もない荒野に線路を敷き、発展させていく様子を紹介している。現在まで6本が公開されており、最新作の第6回でついに最初の路線が黒字になった。閲覧者のツッコミも楽しい。