東京メトロは6日まで、有楽町線の辰巳駅に年越し用の記念撮影ボードと記念スタンプを設置している。辰巳駅は2012年の干支「辰」と2013年の干支「巳」が並ぶ駅名なので、今回の年越しの記念にぴったりというわけだ。

辰巳駅の記念ボード

「蛇」の付く3駅はともに地名が由来

ところで、「巳」といえばヘビのこと。日本の鉄道には、「蛇」の字が付く駅が3つある。「大蛇」「蛇田」「南蛇井」だ。

「大蛇」はJR東日本の八戸線にあり、「おおじゃ」と読む。駅名は地名から取ったといい、地名はアイヌ語の地名「オホ・チャ」の当て字。「オホ・チャ」は深い岸とのこと。当て字なら「大舎」や「大社」のほうが縁起が良さそうだけど、八戸には「八ノ太郎」という大蛇の伝説があるというので、そこに絡めたかもしれない。

「蛇田」はJR東日本の仙石線にある。こちらも地名に由来し、瓜を割ったら蛇がうじゃうじゃ出てきた、つまり「蛇多」という説と、蝦夷を討伐するため大和朝廷の将軍がこの地で戦死、死ぬ間際に「死んでも毒蛇に化けてやる」と言った。その埋葬された場所を蝦夷が暴こうとしたところ、大蛇が現れたという説があるという。

「南蛇井」は上信電鉄の駅。「なんじゃい」という読みがおもしろいと話題になることも多い。こちらも地名が由来。もともと「ナサイ」(川幅が広くなったところ)というアイヌ語だったという説がある。ナサイが訛って「なんじゃい」となり、文字を当てて「南蛇井」となった。だから「蛇井」という地名もないし、北側に「北蛇井」もない。

東急大井町線にあった「蛇窪駅」

東京都内にはかつて、「蛇」の字が付く駅があった。「蛇窪」という駅名で、現在の戸越公園駅だ。これも地名に由来し、蛇行した川を挟んで「上蛇窪」「下蛇窪」という地名だったという。1936(昭和11)年に現在の駅名に改称された。

ところが、現在はこの地名もない。駅名より前に地名も変更されたからだ。荏原村だったこの地域が東京市に編入される際、町会議員が「蛇の字は縁起が悪いから地名を変えよう」と提案し、1932(昭和7)年に「上神明」「下神明」という地名に。駅名のほうは隣接地域に建設中だった戸越公園から取った。戸越公園は熊本藩主、細川家の下屋敷で、後に三井家に渡り、庭園部分が東京市(当時)に寄付されたという。

蛇窪信号場。真上を横切るのが東急大井町線で、下神明駅のホームも見える

当時、蛇窪駅の隣の駅は戸越駅だったが、蛇窪駅が戸越公園駅に改称されると、紛らわしいと思われたのか、戸越駅も下神明駅に改称されている。ちなみに、「下神明」も地名に由来した駅名だけど、後に地名が整理された。現在の「豊町」「二葉」の一部がかつての「下神明」だったという。

「蛇窪駅」は消滅したものの、じつは鉄道ファンによく知られる名所に「蛇窪」の名が残されている。東海道本線の貨物支線(品鶴線)と山手貨物線、旅客列車でいうなら横須賀線と湘南新宿ラインの電車が合流する地点にある「蛇窪信号場」だ。