JR西日本の489系電車と、福井県の鉄道が随所に出てくる映画『旅の贈りもの 明日へ』が本日(10月27日)より全国公開される。福井県といえば、芦原温泉や東尋坊などへ向かうえちぜん鉄道、路面電車の区間に大型車体の電車が乗り入れる福井鉄道、九頭竜湖へ向かうJR越美北線など、魅力的なローカル線も多いところだ。

そのひとつ、えちぜん鉄道の福井駅がおもしろい。なんとホームのベンチに恐竜が座っているのだ。いったいなぜ、恐竜がこんなところに……。

えちぜん鉄道の福井駅、ベンチに注目

えちぜん鉄道は福井駅から勝山駅を結ぶ「勝山永平寺線」と、三国港駅を結ぶ「三国芦原線」を運行している。このうち、恐竜と縁の深い駅は勝山駅だ。勝山駅からバスで12分の場所に、「福井県立恐竜博物館」がある。勝山市は恐竜化石の発掘地として知られており、日本国内で発見された恐竜化石の8割が当地で発掘されたという。恐竜ファンや恐竜研究者にとって、「聖地」といっていいだろう。

ベンチに座る彼の名は「恐竜博士」

福井県と恐竜化石との関わりは1982年、勝山市北谷でワニの全身骨格が発見されたことに始まる。現在の日本にワニは生息しておらず、過去に日本でワニの骨が発見された古代地層から恐竜化石が発見されたこともあり、勝山市でも発掘調査を開始。1989年~1993年、1995年~1999年、2007年~2010年の3回にわたり実施され、世界でも未発見の種に「フクイサウルス」の学名が与えられるなど大きな成果を収めた。

ダイノベンチに座る恐竜博士

勝山市や福井県は、恐竜をまちおこしや観光の目玉にしようと取り組んでいる。2000年には日本最大、世界でも3番目の規模の恐竜専門博物館を建設。街のいたるところで恐竜のキャラクターも用いている。道路には「恐竜王国 勝山」の看板があり、福井県警察のマスコットも恐竜。今年4月から、勝山市の原付のナンバープレートにも恐竜のイラストが入った。勝山駅では恐竜フィギュア付きの駅弁「恐竜弁当」も発売された。

えちぜん鉄道福井駅のベンチに座る恐竜も、そんなまちおこしのひとつだという。恐竜像が白衣を着ている理由は、彼の名前が「恐竜博士」だから。彼が座っているベンチは「ダイノベンチ」と呼ばれており、これと同じものが、恐竜博物館の屋上「ダイノテラス」にも置かれている。福井駅のホームにいる恐竜は博物館のPRのために設置されたようだ。もちろんベンチは利用可能で、「恐竜博士」と並んで記念写真を撮る観光客も多いらしい。

現在のえちぜん鉄道福井駅は、福井駅周辺の連続立体交差事業による仮駅舎とのこと。今後、福井駅付近ですでに完成している新幹線の高架部分に線路を敷き、仮運行を行う間に現在のえちぜん鉄道の線路を高架化するプランがあるようだ。えちぜん鉄道の福井駅、そして「恐竜博士」の去就も気になるところである。

『旅の贈りもの』トリビア : 恐竜は出ないけど、あの"白い犬"が出演!?

映画『旅の贈りもの 明日へ』には、福井県のローカル線も総出演。山田優さん演じる香川結花が、JR越美北線で一乗谷を訪れ、朝倉氏遺跡を観光するシーンがある。

『旅の贈りもの ~明日へ~』
大阪から福井へ向かう仁科孝佑(前川清)は、42年前の少年時代に音信が途絶えた初恋相手を探そうとしていた。名古屋から福井を旅する香川結花(山田優)は、結婚式に、幼い頃に別れた父を呼ぶべきか迷っていた。故郷の福井へ戻ったヴァイオリニスト久我晁(須磨和声)は、スランプで夢を失っている。春のある日、それぞれの旅が重なり、すれ違う……。出演はほかに酒井和歌子、葉山奨之、清水くるみなど

一乗谷といえば、ソフトバンクモバイルのテレビCMにも登場したところだ。犬になったお父さん役の白戸次郎が一乗谷出身で、連続ドラマ風のCMも作られた。福井鉄道の北府駅でも、樋口可南子さん演じるお母さんとお父さんが共演するCMが撮影された。福井県は白戸家と縁の深い土地柄でもある。そんなことを連想しながら映画を見ると……、なんと、白戸家メンバーが出演しているではないか! セリフもなく、ほんの一瞬のこと。スタッフの遊び心のようだが、白戸家ファンには見逃せない名場面かもしれない。

『旅の贈りもの 明日へ』に登場する携帯電話はすべてソフトバンクの最新型。最近のドラマや映画でよく見かけるコラボレーションだろう。同作品では、メールと絵手紙の対比が登場人物の心情描写に用いられている。そんなところも楽しみつつ映画を鑑賞してみよう。