今年3月17日のダイヤ改正で、常磐線の特急「スーパーひたち」「フレッシュひたち」に新型車両E657系が投入された。並行新幹線のない常磐線は、中央本線とならんで在来線の特急電車が大活躍だ。そして、「スーパーひたち」「フレッシュひたち」には新たな計画が用意されている。将来は東京・品川発着になるかもしれないのだ。

常磐線特急用として活躍するE657系

東京駅・神田駅付近では現在、高架線路の工事が進捗している。京浜東北線や山手線の車内から橋桁や高架橋が見えるようになって、「あれは何を造っているんだろう?」と職場や学校でも話題になっていることだろう。あの線路は、「東北縦貫線」と呼ばれている。

東北縦貫線計画(JR東日本報道資料をもとに作成)

東北縦貫線という名前から、東北地方を南北または東西に貫くビッグプロジェクトを想起させられるが、実際は東京~上野間3.6kmの路線だ。また、東北縦貫線は路線名というよりプロジェクト名の意味合いが強い。正式には東北本線である。

計画では、この線路を使って宇都宮線と高崎線、常磐線の電車が東京駅へ乗り入れる。現在は上野駅発着の電車が東京駅に到達し、東海道本線との相互乗り入れも可能になる。大宮~品川間の所要時間は12分の短縮、上野~横浜間は9分の短縮となるという。品川駅の改良工事も進められ、北方面への折り返し設備ができる。東京駅よりも品川駅のほうがホームが多いため、北から来た列車は品川駅で折り返すようになるだろう。

JR東日本からまだ正式な発表はないけれど、東北縦貫線が開通した後は、「スーパーひたち」「フレッシュひたち」「あかぎ」「草津」など、上野発着の特急列車の一部が品川駅発着になるかもしれない。さらに横浜・大船方面への直通運転も予想できる。東海道新幹線への乗り換えが便利になるし、品川駅で京急線に乗り換えれば羽田空港方面にも行ける。宇都宮線・高崎線・常磐線方面からの旅行がとても便利になるだろう。

本来の目的は通勤混雑の緩和と、田町~品川間の再開発

もっとも、すべての「スーパーひたち」「フレッシュひたち」が東京駅・品川駅発着になるとは限らない。もしかしたら休日限定、平日日中の一部列車限定となるかもしれない。なぜなら、東北縦貫線の目的は特急列車ではなく通勤電車の乗り入れにあるからだ。

現在、宇都宮線・高崎線・常磐線の電車は上野駅発着となっている。通勤時間帯になると、上野から東京方面へ向かう乗客たちが山手線や京浜東北線に集中して大混雑となる。この混雑の緩和が東北縦貫線の目的だ。東海道本線に乗り入れると、乗り換え路線が集中する東京駅や、オフィス街に隣接する新橋駅や品川駅へ直通できて便利というわけだ。

この趣旨から考えると、東海道線と宇都宮線・高崎線・常磐線の直通列車は、平日の朝夕は通勤電車が主になるだろう。ただし東京駅から北は宇都宮線・高崎線・常磐線があるのに対し、南は東海道線の1路線という比率だから、東京駅以北の路線の電車すべてが東京駅直通とはなりにくい。

一方、JR東日本にとって、東北縦貫線の開業は田町~品川間にある広大な車両基地が不要になり、跡地を大規模開発できるというメリットがある。田町~品川間の車両基地は、東京駅始発となる東海道線のためにある。東北縦貫線が開通すると、東京駅は始発駅ではなく中間駅となるから、車両基地は東北本線、高崎線、常磐線方面へ分散できる。地価の安い郊外の車両基地を活用し、都心の一等地を有効利用できる。

東京駅から東海道線の下り列車に乗って眺めると、すでに田町~品川間の車両基地は線路や建物の撤去作業が始まっている。また、新しい留置線や折り返し設備が配置されているようだ。この車両基地の跡地は地域と一体となった街づくり「東京サウスゲート計画」が策定されて、山手線・京浜東北線の新駅も設置される予定になっている。

東北縦貫線の開通によって、「スーパーひたち」「フレッシュひたち」がどれくらい東京駅・品川駅にやってくるのか? 高崎線方面の特急「あかぎ」「草津」はどうなるのか? 東海道本線の特急「踊り子」は北へ直通するか? ホームライナーは? ……など、興味は尽きない。正式なダイヤが発表されるまで、いろいろな想像を楽しめそうだ。