小田急5000形最後の車両は36歳で引退

この3月で、小田急ロマンスカー10000形・20000形と同時に通勤電車5000形も引退する。「白地に青い帯、前面3枚窓」という、いわゆる「小田急顔」として親しまれた電車だ。テレビドラマや漫画などで小田急沿線を強調する場合にも用いられており、またひとつ昭和の風景が消えることになる。

小田急電鉄5000形の現存車5063号編成(画像提供 : 小田急電鉄)

5000形の製造開始は1969年。最終運行となる5063号編成は1976年の製造ということで、36年間走り続けたことになる。この引退は早いのか遅いのか? JR西日本が山口線で運行する蒸気機関車C57形は、1937年生まれの75歳だ。京浜東北線で活躍した209系電車は1993年生まれと若かったけれど、製造から20年を待たず、2010年から一部車両を除き廃車が行われた。地方のローカル線だと、まだまだ古い車両を見かける。鉄道車両の「寿命」はどのようにして決まっているのだろう。

税制上は「電車13年」「蒸気機関車18年」

鉄道車両は何年使えるのか? じつは法律による規制はない。自家用車と同じで、修理して法定検査をパスすれば、何年間でも走らせてよい。ただし、まったく法律と無縁というわけではなく、税制上の耐用年数が決められている。確定申告で使う「減価償却」で、税務上の費用として認められる期間が決められている。これも車と同じだ。

鉄道車両の減価償却期間は、「電車が13年」「電気機関車と蒸気機関車が18年」「ディーゼル機関車やディーゼルカーが11年」などと決められている。貨車は用途によって異なり、「高圧ボンベ車及び高圧タンク車が10年」と最も短く、最長で20年となっている。

実際の鉄道車両はもっと長持ちするように作られているから、減価償却が終わったからといってすぐに廃車となるわけではない。むしろ、減価償却期間が過ぎた車両を使えば、車両の製造経費が計上されなくなるので利益は増える。鉄道車両を長く使うほどコスト削減につながるというわけだ。JR西日本では、国鉄時代からの電車を長持ちさせようと、「N40延命工事」を実施。「耐用年数20年として設計された電車でも、主要部品を新品に交換すればあと20年は使える」という考え方だ。

ただし、長く使うメリットにも限度がある。経年劣化によって車体が傷むし、動力部品も古いタイプは入手できなくなる。また、性能の古い車両を残して、新しい電車と混在させると、その路線では古い電車の性能に合わせたダイヤにする必要がある。スピードアップした新型車両も、古い電車に合わせて走らせなければならない。古い電車が消えるのは寂しいけれど、新型車両にそろえれば路線全体のスピードアップにつながる。

最近では、信号設備や車両管理などIT技術を搭載した車両が増えている。IT技術の進化に対応させるため、当初から、「減価償却期間を過ぎたら引退し、リサイクルして新型を作ろう」という構想で作られる車両もある。前述の209系電車が早く引退した理由もそうだし、その後に作られたJR東日本のE231系以降の通勤電車も同様だ。小田急では4000形電車がこの考え方で作られており、JR東日本のE233系に準じた設計になっている。

鉄道車両の減価償却期間

電気又は蒸気機関車 18年
電車 13年
内燃動車(制御車及び附随車を含む) 11年
貨車 高圧ボンベ車及び高圧タンク車 10年
薬品タンク車及び冷凍車 12年
その他のタンク車及び特殊構造車 15年
その他のもの 20年
線路建設保守用工作車 10年
鋼索鉄道用車両(ケーブルカー) 15年
無軌条電車(トロリーバス) 8年