3月17日のJRダイヤ改正で2本の夜行列車が消える。大阪と青森を結ぶ寝台特急「日本海」と、大阪と新潟を結ぶ急行「きたぐに」だ。寂しいなと思ったのも束の間、すぐに春の臨時列車として運行すると発表された。ほっとしたけれど、じつは定期列車の「日本海」「きたぐに」にあって、それぞれの臨時列車からは消える車両がある。日本の鉄道史から姿を消すことになるかもしれない。

寝台特急「日本海」は大阪と青森を結ぶ客車列車(ブルートレイン)だ

臨時列車化で消える車両とは、開放型A寝台車だ。寝台特急「日本海」には10号車に、急行「きたぐに」では7号車に連結されたが、春季に臨時列車として運転される「日本海」は開放型2段式B寝台車のみ、「きたぐに」は3段式B寝台車とグリーン車(座席)のみとなる。定期列車の「きたぐに」は普通車自由席も連結されており、低価格な料金で好評だったが、臨時列車では自由席もなくなる。

「親子2人乗り」に便利な幅広ベッドだった

「日本海」の場合、A寝台もB寝台も2段式。その違いはベッドの幅だ。B寝台はレールに対して直交する向きになり、ベッドの幅は70cm。A寝台は通路を挟んでレールの向きに並び、ベッドの幅は下段が93cm、上段が88cmと広くなっている。料金はB寝台の6,300円に対して、A寝台上段は9,540円。A寝台下段は1万500円となっている。A寝台は広いとはいえ、B寝台との差は18~23cm程度。料金の差は3,240円~4,200円だ。ちょっと割高な気がしないでもない。

しかしこの割高感は、現在のように全区間を寝台で利用するからだと思われる。昔は寝台を使わない時間帯には座席に変換した。このとき、B寝台は下段のベッドを2人で使うことになり、A寝台はひとりずつ専用の座席となる。カップルでA寝台の上下段を利用した場合、向かい合わせの座席をひとつずつ使えたから、相席の気まずさもない。

また、ひとつの寝台を「大人1名、こども1名」あるいは「こども2名」でも利用できる規則になっている。B寝台の幅70cmではきついけれど、A寝台の幅なら楽に利用できる。B寝台をふたつ使うより料金も安くなるから、開放型A寝台は親子連れにはぴったりな空間だといえる。

さらに、座席から寝台に変換すると、下段ベッドの下にたくさんの荷物を置けたので、ベッドを広々と使えた。現在はベッドに荷物を持ち込むことになるから、実質的に広く使えない。

開放型A寝台は、ひとり旅で使うと割高感があり荷物置き場に困るけれど、2人連れや親子連れで上下段を使えばなかなか便利だった。「日本海」「きたぐに」の臨時列車化で、日本から開放型A寝台はなくなってしまう可能性があり、本当に寂しい限りである。