京王井の頭線(渋谷~吉祥寺間)の電車は、ステンレスの車体にアクセントカラーが入る。全7色あり、「レインボーカラー」とも呼ばれている。この色はある順番にもとづいて決定しているという。

レインボーカラーを初めて採用したのは3000系で、このほど全車が引退した。11月13日で最後の編成が定期運用を終え、20日には富士見ヶ丘車両基地でさよならイベント「ありがとう3000系フェスタ」が開催された。その後、非常時の予備車両として待機し、12月5日に引退したとのこと。

京王電鉄3000系電車。「ありがとう3000系フェスタ」にて

3000系も1000系も「ブルーグリーン」だけ1編成多い

3000系のレインボーカラーは、後継車の1000系にも引き継がれた。色の名前は、「ブルーグリーン」「アイボリーホワイト」「サーモンピンク」「ライトグリーン」「バイオレット」「オレンジベージュ」「ライトブルー」。1000系は計29編成あり、同じ色の電車が複数存在している。

それにしても、この色はどのような順序で決められているのだろうか? たとえば製造年や細部の仕様の違いなどが思い浮かぶのだが、答えは意外に単純。製造された順番で決められている。1番目に製造された電車が「ブルーグリーン」で、2番目は「アイボリーホワイト」、3番目は「サーモンピンク」、4番目は「ライトグリーン」、5番目は「バイオレット」、6番目は「オレンジベージュ」、7番目が「ライトブルー」。8本目から「ブルーグリーン」に戻り、同じ順序で続いていく。

この順序は先代の3000系が登場したときから決まっていた。編成番号に対応していて、車台番号の末尾「01」~「07」で7色がそろい、「08」~「14」、「15」~「21」、「22」~「28」でそれぞれ7色セットとなっていた。3000系も計29編成製造されたため、ラストは「ブルーグリーン」に戻って「29」で終わり。つまり3000系のレインボーカラーは「ブルーグリーン」だけ5編成で、他の色は4編成あった。

3000系では編成番号と色の順番がぴったり一致していたが、1000系では少しずれている。15番目の車両は「ブルーグリーン」だが、16番目の車両は途中の色を飛び越し、「ライトブルー」になった。これは1000系が2008年の製造車からマイナーチェンジしたことと関係している。

1000系は2007年までに15編成まで製造された。それ以降の編成では、マイナーチェンジしたことを区別しやすくするため、編成番号の末尾を「21」から振り直した。その結果、「16」~「20」が欠番となり、それに対応する色も飛ばされてしまったというわけだ。もっとも、1000系は3000系と同じ計29編成なので、「ブルーグリーン」だけ5編成、残りの色が各4編成ずつなのは変わらない。

なお、先代の3000系で使われた「ベージュ」は、1000系では「オレンジベージュ」に。当初は「ベージュ」だったものの、「アイボリーホワイト」と見分けやすくするために変更されたという。

「ブルーグリーン」

「アイボリーホワイト」

「サーモンピンク」

「ライトグリーン」

「バイオレット」

「オレンジベージュ」

「ライトブルー」

レインボーカラーの理由は「銀色ばかりではつまらない」!?

ところで、なぜ井の頭線にレインボーカラーが採用されたのだろうか? 11月20日の「ありがとう3000系フェスタ」に参加した際、京王電鉄の担当者にも尋ねてみたが、当時の担当者が退職しているため不明だという。伝聞によれば、「銀色ばかりではつまらないから」「相互乗り入れをする路線ではないため自由に決められた」といった理由があるらしい。

もっとも、レインボーカラーが1000系へ継承された理由については明確で、「井の頭線はレインボーカラーというイメージ」を重視しつつ、「お客様が車内に忘れ物をしたときに思い出しやすい」「現場の職員が運用を把握しやすい」など、実用的なメリットもあったようだ。

3000系は京王井の頭線から引退したが、一部の車両は地方の鉄道会社に譲渡され、まだまだ現役で活躍している。ただし、いずれも井の頭線時代のレインボーカラーではない。

北陸鉄道の8000系(浅野川線用)と7700系(石川線用)はオレンジ、伊予鉄道の3000系はアイボリーに統一されている。岳南鉄道の7000形は朱色、8000形は緑色だ。アルピコ交通(旧松本電気鉄道)の3000系は白が基調の全塗装に。上毛電気鉄道の700型は編成ごとに異なる色となったが、計8色(700型は計8編成)あり、井の頭線時代より1色多くなっている。