東日本大震災で福島第一原子力発電所が被災し、東京電力の電力供給エリアでは電力供給不足となった。震災からしばらくの間、計画停電が実施され、鉄道会社は列車の運休や本数削減で対応した。そんな中、JR東日本は鉄道部門で節電を徹底する一方で、東京電力へ1時間に21万kWhの余剰電力を供給していた。これは一般家庭約50万4,000世帯分の消費量に相当するという。

JR東日本川崎火力発電所

JR東日本は新潟県十日町市と小千谷市にまたがる信濃川発電所と、神奈川県川崎市に川崎発電所を所有している。どちらも国鉄時代に作られた発電所で、急速に電化が進む首都圏の鉄道に対して、安定的な電力を供給するために作られた。鉄道の電化は、当時の東京電力の需要と供給のバランスを崩すと考えられていたようだ。

節電効果と発電所のフル稼働で余剰電力が

JR東日本の発表資料によると、地震発生前の3月10日18:00~19:00において、JR東日本の自営発電所は56万kWhを発電。その電力はすべて自社で消費していた。それが地震から6日後の3月17日18:00~19:00になると、自営発電所はフル稼働して62万kWhを発電。ここには、新潟県十日町市の協力による水力発電取水量の増量も含まれている。一方、JR東日本の消費電力は41万kWhと下がり、これはJR東日本の徹底した節電による結果といえる。

JR東日本の節電内容は、運行本数の削減の他、客室の冷暖房の停止に加え、日中の一部区間では室内灯の消灯も実施した。駅構内では日中時間帯のコンコースやホームの消灯や減灯、エスカレーターの運行停止も実施中だ。エスカレーターに関しては、長大な場合や付近に階段がない場合は除外されているが、大半のエスカレーターは停止中であり、メタボな筆者にとってはこれで足腰が鍛えられ、健康になりそうな勢いであるのはここだけの話だ。

話は戻ってJR東日本の発電量は62万kWh、自社の消費は41万kWhまで絞った。その差、21万kWhについて、JR東日本は東電管内の深刻な電力不足に対応するため、なんと東京電力に供給していたのだ。21万kWhというのは、川崎発電所の発電機4台のうち、最大電力発電機1台分に相当する。電気事業連合会によると、一般家庭の消費電力は1カ月に300kWhとのことなので、一般家庭約700世帯の消費電力1カ月分に相当する。1時間あたり平均にすると約50万4000世帯分となる。JR東日本は節電だけではなく電力供給にも協力し、そして新潟県十日町市も間接的に電力不足の解消に力を貸してくれていたことになる。

連日報道されているように、JR東日本も鉄道設備や職員が被災し、大きな損害を被っている。これによる業績の悪化は免れない。それにもかかわらず、JR東日本は被災者の支援や被災地の復興のためにと5億円の支援を決定した。また、もともと赤字だった三陸方面の普通路線についても「地域復興のために必要」と全線を復旧させる意向だという。