駅弁といえば「幕の内」スタイルを基本として、寿司、釜飯、鶏めし、牛めし、ご当地の産物を使った名物料理など、様々な種類のものが売られている。「購入してから列車内で食べる」という事情のため、どの製造業者も「冷めてもおいしいごはんやおかず」を工夫している。そんな中で、従来の駅弁の常識をくつがえす「おかゆ」の駅弁があるのだ。

「上州の朝がゆ」350円

パッケージには薪を割る夫とおかゆを作る妻の姿

「だるま弁当」の高崎駅で、朝限定で販売

珍しい「おかゆ」の駅弁。それは、群馬県の高崎駅で販売されている「上州の朝がゆ」だ。高崎駅といえば「だるま弁当」が有名。そしてこの「上州の朝がゆ」もだるま弁当と同じ駅弁製造会社「たかべん」が製造販売している。朝がゆとあるように、7時~9時の時間帯で100個限定。売り切れるほどの人気だ。そのため「駅弁はお昼ごはん」と考えている日中の旅行者には買えない。来年は販売開始から30年を迎えるが、地元以外の人々からは「幻の駅弁」とまで言われるらしい。

「上州の朝がゆ」の中身

その貴重な「上州の朝がゆ」の内容を紹介しよう。立方体の箱を開けると、おかゆが入った大きめの器と、おかずが入った小さな容器が重なっている。どちらも発泡スチロール製で、おかゆは温かく、おかずは冷たく保たれている。おかゆの温かさはもちろん嬉しいが、おかずの「大根みそ漬け」も冷たくパリパリしていておいしい。コンビニ弁当は温めるとお新香も温まって残念だと常々思っていた筆者にとっては、この駅弁の「保温の配慮」と「温めないための配慮」が嬉しい。

さらにうれしいのが、おかゆには甘く煮た栗がゴロッと2つ。干し海老が3つで予想より賑やか。栗はデザートに……とよけておき、白いおかゆをひと口食べる。ほんのりと味がついていて、よく見るとしらすも入っている。上品な塩味と魚の旨味が感じられる。塩や練り梅が小さな容器に入っていたのだが、これを足さなくても十分おいしい。ただ、おかゆが冷めてしまうと、このままだと物足りない味に感じるだろう。そういったときの配慮として付いているのかもしれない。温かさをアピールしつつ、ちゃんと駅弁の鉄則「冷めても美味しい」を守っているようだ。

量はごはん茶碗に軽く2杯程度。エネルギー表示は268Kcal。起き抜けの胃袋には充分だ。これで価格は350円。今や駅弁は1,000円前後が相場だけに、この値段も嬉しい。「上州の朝がゆ」は、お腹にもお財布にもやさしい駅弁である。