名古屋鉄道と言えば中京圏に広大な路線網を持つ大手私鉄である。路線延長は444.2kmで、この数字は近鉄、東武鉄道に次ぐ大手私鉄第3位。豊橋 - 名古屋 - 岐阜間はJR東海の東海道本線と並んでスピードとサービスを競っており、中部国際空港へのアクセス路線も有している。我が国有数の規模を持つ名古屋鉄道だが、豊橋駅を発着する列車は肩身の狭い思いをしているという。一体どういう事だろう。

豊橋駅3番ホームに停車中の名鉄特急(左)、かつては赤いパノラマカーも発着した(右)

始発駅にもかかわらず線路は1本の「間借り状態」

大手私鉄の始発駅、特にJRと接続するターミナル駅は規模が大きい。阪急梅田駅の線路は3路線で合計9本もある。東急東横線渋谷駅の線路は1路線だけで4本。これ以外でも、ほとんどのターミナル駅で2~3本の線路がある。

しかし、名鉄の豊橋駅は例外だ。名鉄は最も東寄りのターミナルにも関わらず、なんとJR東海の豊橋駅に間借りしており、割り当てられた線路は1本だけである。そのため、豊橋駅を発着する名鉄列車はホームでノンビリしていられない。

早朝深夜以外の列車は到着すると数分以内で折り返す。列車は快特、特急、急行だけで、普通列車は豊橋駅から発車しない。列車の発着本数が1時間に最大6本という制約があり、名古屋・岐阜方面の速達列車を優先させると、普通列車を乗入れる余裕がないという。

この状態は、名古屋鉄道とJR飯田線の歴史的な"縁"が理由だ。JR飯田線と名鉄本線は、お互いに線路1本ずつを保有しており、2つの線路が並ぶ約4km区間だけ共有し、複線として運行している。相互乗り入れではなく"共有"とはどういうことだろう。わかりやすく解説するため、鉄道会社経営ゲーム『A列車で行こう9』の画面を使って説明しよう。なお、以下は説明図のため実際の風景とは異なることをお断りしておく。

『A列車で行こう9』とは

『A列車で行こう9』はアートディンクが企画・開発し、サイバーフロントが販売する鉄道会社経営・都市開発シミュレーションゲーム。線路を敷き、列車を走らせ、駅に列車が発着すると都市が発展していく。シリーズ最新となる本作は、線路の形状やポイントの角度が増えて、実際の線路を再現しやすくなっている。 Windows 7 / Vista / XP 対応。価格は12,390円。詳しくはこちら

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単線と単線を並べ、協定で複線にした

豊橋駅は1888年、官営鉄道(後の国鉄、現JR)の駅として開業した。その11年後、1897年に豊橋駅を起点として豊川鉄道が開通した。終着駅は豊川で、豊川神社への参詣鉄道であった。

まず豊川鉄道が開通

その30年後、愛知電気鉄道(後の名鉄)が豊川鉄道の隣に線路を敷き、豊橋駅に乗入れた。このとき、お互いに単線のままでは列車本数を増やせないため、互いの線路を利用して複線という扱いにした。

続いて愛知電気鉄道が開通

お互いの線路が単線のままだと、この区間にそれぞれ1本の列車しか運行できない

お互いの線路を共有化して複線にすると、列車の本数を増やせる

豊川鉄道と愛知電気鉄道の豊橋駅は当時、「吉田駅」という名前だったという。官営鉄道の豊橋駅とは少し離れていたからかもしれない。ところが、1943年に戦時政策のため豊川鉄道が国有化される。現在のJR飯田線だ。このとき、豊川鉄道時代の線路共有協定は存続した。こうして現在の豊橋駅の形となったわけだ。名鉄の線路がJR東海道本線とJR飯田線に挟まれてたった1本しか割り当てられなかった理由は、豊川鉄道が国鉄に買収されたという経緯があるからだ。

飯田線豊橋駅の線路は2本、名鉄豊橋駅の線路は1本。現在の路線の性格で考えると、名鉄が2本でも良さそうだ。しかし、国鉄が豊川鉄道を買収した理由は、豊川鉄道沿線の海軍工廠への輸送だった。当時の情勢として豊川鉄道の輸送を重視したとみられ、その当時の既得権が現在も残っているらしい。また、共用区間にある船町駅と下地駅は名鉄の電車は停まらない。この理由は「両駅がJR飯田線の駅だから」である。「名鉄の列車が特急や急行だから」ではない。

名鉄パノラマカー先頭車から見た共用区間(豊橋駅付近)

『A列車で行こう9』を3Dシステムで楽しもう

線路を敷き、列車を走らせ、街を発展させる『A列車で行こう9』では、実際の線路配置と列車の運行を再現できる。「豊橋駅付近で飯田線と名鉄の単線を独立させた場合と複線ではどちらのほうが効率がいいか」「豊橋駅で名鉄にホーム2本を割り当てるとどうなるか」など、ゲームで実験してみると面白い。さて、『A列車で行こう9』を動作させるために必要なスペックはというと以下の通りになる。

OS Windows 7 / Vista / XP(64bit版OSは未対応)
DirectX DirectX9.0c以上
CPU Core 2 Duo
メモリ [XP]1GB以上 [VISTA/7]2GB以上
HDD空容量 1.2GB以上
ビデオカード GeForce 6シリーズ以降、RADEON X1000シリーズ以降のビデオカード
VRAM 512MB以上
ディスプレイ 1024×768ピクセル以上
サウンド Direct Sound対応
入力機器 キーボードおよびホイール付マウス
その他 インストール時にDVD-ROMドライブ必須、インストール時にインターネット環境が必須

さらに、NVIDIAの3Dシステム「3D Vision」を導入すると、『A列車で行こう9』を立体映像で楽しめる。列車も建物も山も、まるで画面の向こうに本物の鉄道模型ジオラマがあるように見える。映画やブルーレイソフトなどで映像の3D立体化がブームになっているが、ゲームでも立体視のブームが始まっている。「3D Vision」の特徴は、DirectXで制作されたゲームソフトなら、特に3D立体システム向けに作られていなくても3D立体視が可能になるところだ。『A列車で行こう9』も例外ではなく、現在発売中のバージョンで立体映像になる。

『A列車で行こう9』を「3D Vision」で再生したところ。風景は3D立体視化されたため、右目用と左目用の映像が重なっている。操作メニューなどは2D表示のままだ

「3D Vision」を楽しむためには、「3D Vision」対応のGPU(グラフィック用プロセッサ)、「3D Vision」対応アクティブ・シャッター式メガネ&エミッターキット、「3D Vision」対応120Hzモニターが必要。「3D Vision」対応のGPUは2006年に出荷された「NVIDIA GeForce 8000シリーズ以降」なので、『A列車で行こう9』が動作するNVIDIA製GPUならそのまま使える。アクティブ・シャッター式メガネ&エミッターキットは店頭価格で2万円以下、3D対応モニターも24インチ前後を3万円台で入手できるようだ。つまり、NVIDIA製ビデオカードを使っているなら、プラス5万円台で3D立体システムになる。

『A列車で行こう9』の3D立体視を試したシステム構成。ビデオカードは「GeForce460GTX」(市場価格は2万2,000円~)、モニターはAcer製「GD245HQBID」(同3万7,000円前後)。アクティブ・シャッター式メガネ&エミッターキットはNVIDIA製(同1万9,000円前後)。「3D Vision-Ready」マークの付いたPCなら、アクティブ・シャッター式メガネ&エミッターキットを追加するだけだ

なお、『A列車で行こう9』を3D立体視で楽しむ場合は、環境設定で水面の描画設定を「低」に、ゲームのオプションで影の表示をオフにすると、ちらつきを抑えられてきれいに見える。次回作では正式に「3D Vision」対応になるかもしれない。