リニアモーターカーといえば、JR東海の中央新幹線計画でよく知られている。最短ルートで東京- 大阪間を結ぶと所要時間は約67分になるという。中国では上海空港のアクセス路線としてリニアモーターカーが稼働している。名古屋ではリニアモーターカーの新交通システム「リニモ」も運行中だ。日本の次世代高速鉄道としてリニア中央新幹線への期待が高まる中、実はすでに東京など日本の5都市の地下をリニアモーターカーが走っているという。

「リニアモーター=磁気浮上式」という大誤解

東京の地下を走るリニアモーターカーとは、都営地下鉄大江戸線である。「浮いていないし、普通の電車だ」と思う人も多いだろう。しかし、大江戸線はリニアモーターカーである。

都営地下鉄大江戸線

線路の間にある板がリニアモーターの地上部

私たちはリニアモーターカーというと「磁石の力で車体を浮かせ、磁石の力で走る」と思いがちだ。これは国鉄時代から開発され続け、中央新幹線で実現する予定のリニアモーターカーや、過去に日本航空が開発していたHSSTの印象が強いため。しかし、リニアモーターの「リニア」の意味は「直線」、つまり「リニアモーター」は「直線型のモーター」である。「浮上」という意味はない。中央新幹線やリニモは、正確には「磁気浮上式リニアモーターカー」という。

一方、都営地下鉄大江戸線は「鉄輪式リニアモーターカー」である。見かけ上は普通の鉄道のよう。しかし、大江戸線の車両は従来の電車とは異なり、円筒型のモーターを搭載していない。車体の床下と線路に電磁石を設置したリニアモーターによって走行している。

従来の円筒型モーターとリニアモーター

リニアモーター式電車は、台車など床下の機器を小さくできるため、車体を小さくできるというメリットがある。特に地下鉄では小さな車両ほどトンネル断面積が小さくなるため、建設コストが下げられる。また、加速時の車輪の空転がなく、急勾配に強い。これらの理由から、最近は鉄輪式リニアモーターカーの地下鉄路線が増えている。大江戸線のほかにも、日本初の鉄輪式リニアモーターを採用した大阪市営地下鉄の長堀鶴見緑地線、同今里筋線、横浜市営地下鉄グリーンライン、神戸市営地下鉄海岸線、福岡市地下鉄七隈線で稼働している。また、仙台市営地下鉄東西線も鉄輪式リニアモーターカーとして建設中だ。