山手線の原宿駅と言えば、ファッションの街の玄関口として有名だ。駅の構造は島式ホームが1本で、ホームの両側に山手線の外回り電車と内回り電車が発着する。ところが、外回り電車用にはもう1つホームがあり、さらに内回りの線路の向こうにもホームがある。普段使われないこれらのホームは、一体いつ使われるのだろうか。

原宿駅の臨時ホーム

明治神宮参詣者用の改札口が見える。駅舎を出た道は明治神宮へと続いている

まず、外回り電車側にあるホーム。普段使っているホームと並んだ「もう1つのホーム」は、臨時ホームと呼ばれている。このホームは代々木公園に接しており、ホームの外側には臨時駅舎もある。そして、駅舎を出た道は明治神宮へと続いている。明治神宮に初詣に訪れた人ならご存じの方も多いだろうと思うが、この臨時ホームは明治神宮の参詣用なのである。使用される時期は、年末年始の参詣シーズンのみとなる。ちなみに、この臨時ホームが使われる時期は、外回り電車のドアは臨時ホーム側しか開かない。普段使っているホームは内回り電車専用となる。したがって、竹下口も表参道口も内回り専用の改札口になる。外回り電車に乗るときは、必ず代々木公園内の臨時改札口に回る必要がある。

線路の向こうのホームは天皇陛下専用「宮廷ホーム」

もう1つのホームは内回り線路の向こう側。埼京線の複線を越えたさらに先にある。短いながらも、ホームのすべてに屋根が取り付けられており、贅沢で上品なデザインだ。それもそのはず、このホームは「宮廷ホーム」と呼ばれていて、天皇陛下専用である。天皇陛下専用列車、いわゆる「お召し列車」だけが発着を許されており、基本的には、たとえ皇族であっても陛下がご同行されない限り使用できないという、たいへん格式のあるホームである。

「宮廷ホーム」は1926年、大正天皇のために作られた。天皇陛下が皇居から葉山御用邸などにお出かけになる場合は、たいていこの駅から出発していた。しかし、このホームは現在、あまり使われていない。今上天皇である明仁陛下と皇后陛下が地方に公務に出かける場合、たいてい東京駅から新幹線を使われるようだ。新聞報道などによると、お召し列車を走らせることで、ダイヤの変更などが生じるため、今上天皇には「国民に迷惑をかけたくない」とのご意向があるようだ。

1926年、大正天皇のために作られた原宿駅構内の「宮廷ホーム」。ホームのすべてに屋根が取り付けられており、贅沢で上品なデザイン