電車に乗っていると、「ガタンゴトン、ガタンゴトン」と音がするもの。これは車輪がレールの継ぎ目を通過する時の音だ。レールの継ぎ目にはわざと隙間を作っている。なぜならレールは鉄製のため、夏になると伸びるからである。初めから継ぎ目をピッタリ合わせておくと、夏に鉄が膨張したときに、レールの先端がつかえてしまい、横に曲がってしまう。継ぎ目にあらかじめ隙間を作っておけば、レールが延びても隙間の部分に収まる、といったわけだ。

レールの継ぎ目、夏の写真なので隙間が目立たなくなっている

ときどき「猛暑でレールが曲がった」と報じられることがあるが、これは想定外の暑さで鉄が伸び過ぎ、継ぎ目で伸びを吸収できなくなってしまうからだ。つまり、寒い冬は隙間が広がり、暑い夏は隙間が縮まる。そこを車輪が通過すると、ガタンゴトンと音が出るのだ。

レールの基準となる長さは25m。これは「定尺レール」と呼ばれ、かつてはほとんどの鉄道路線がこの長さのレールを繋いでいた。この25mという数値は、レールの伸びしろと継ぎ目のバランス、運搬などの都合で使いやすかったのだ。25mというと、電車1両の長さよりちょっと長い程度だから、電車が走ると常に「ガタンゴトン、ガタン」と音が鳴っていた。

ロングレール化が進行中

しかし最近、その音の回数が減った路線が増えていることにみなさんは気づいているだろうか。ガタンゴトンと音を立てず、スイーッと電車が走るようになってきている。この理由は、25mよりも長いレールに付け替えられているからだ。設置場所によって長さも変わるが、25m以上200m未満のレールを「長尺レール」、200m以上のレールを「ロングレール」と呼ぶ。

ロングレールを使う最大の目的は、継ぎ目を減らすことだ。継ぎ目がなくなれば音と揺れが減って、乗り心地が良くなる。沿線の騒音も軽減できる。継ぎ目の点検や保守の手間も省ける。いいことずくめである。ただし、レールの膨張率については心配だ。だから、ロングレールの使用場所は、長大トンネルや地下鉄など、気温の差が小さい部分だけだった。

ところが鉄道技術者の研究により、「延びる部分はレールの端の部分だけ。レールの長さと伸びる長さは比例しない」という結果を得られた。そこでロングレールが積極的に使われるようになったというわけ。新幹線は初めからロングレールで敷設され、JRの在来線や大手私鉄でもロングレールへの交換が進んでいる。だから継ぎ目が減り、「ガタンゴトン」という音も減ったというわけだ。

ロングレールは定尺レールを溶接して作る

ロングレールの継ぎ目

ちなみに、ロングレール同士の継ぎ目も音が出にくい構造になっている。片方のレールを先端のように薄くして内側に、もう片方のレールは外側に少し曲げて、分岐器のような形の継ぎ目になっている。レールが伸びた場合も互いのレールは常に接触し続けて、隙間ができない。この方式は「エキスパンド・ジョイント」と呼ばれている。ここを車輪が通過するとき、音が出るけれど従来の継ぎ目の時よりはずっと小さい。

ちなみに、青函トンネルでは全長52.6kmものスーパーロングレールが使われた。東北新幹線では60km以上のスーパーロングレールが採用されているという。