360度広がる自然は、四季折々の美しさで訪れる者の目を楽しませてくれる

山麓に続くカーブの多い道を、取材班は車を走らせた。左手には山あいの色を映し出した新緑の庄川が、その雄大な姿を見せ始める。そう、ここは大自然の宝庫、庄川峡。都会の喧騒とは皆無の、時間の流れがとまったかのような空間が広がっている。

いつしか車を走らせるドライバーも、その体を乗り出して雄大な新緑広がる世界をのぞき込む。窓を開けると、新鮮な空気が車内に充満する。都会の排気ガスで薄汚れた面々を、あたかも清浄化するかのような清涼さだ。

車はやがて、ひとつの大きな橋に差し掛かる。そこから見渡せる光景は、大洋を望むかのごとく壮大だ。

砺波市ではこの景観美を広く知らしめるため、庄川峡に遊覧船を展開している。四季を通じて美しい景観が堪能でき、渓谷を縫うようにして美しい風情が目を楽しませてくれる。

また、秘湯の大牧温泉が昭和レトロな建築美で色を添えていることも見逃せない。そんな旅する途中で、歩き疲れた体を休め、話に花を咲かせるカフェタイムは必須の時間とも言えるだろう。

どうせ楽しむならと、その土地の魅力がぎっしり詰まったロケーションを求めてしまう。そんな要望にベストマッチするのが庄川ウォーターカフェだ。観光名所としても人気の庄川遊覧がまるごとカフェに早変わりし、庄川峡の美しい景色が船窓を流れ、ただ見ているだけでも飽きのこない60分へと変貌するのだ。口を潤すカフェ、さらには気分を盛り上げるジャズ生演奏も加わって、特別な空間となることは間違いない。

ゆったりとまどろんだ空間と時間。いつまでもその空気に触れていたい取材班だったのだが、そこはまだまだ仕事がある。後ろ髪を引かれる思いで、次なる目的地の南砺市にある五箇山相倉集落を目指す。

緑に囲まれた集落に、急勾配の茅葺き屋根が並ぶ「五箇山相倉集落」

渓谷を抜けてうねる山道を辿っていくと、やがて山間の集落へと導かれる。そこには、昔ながらの合掌造りの民家が並んでいた。世界遺産にも登録されているこの合掌造り集落「五箇山」は、名を知られた白川郷のすぐ北側に位置する集落だ。

豪雪地帯であったことが幸いし昔の姿を今に残す「五箇山こきりこの里」

また、この秋と冬には期間限定の縁側カフェが五箇山和紙づくり体験とセットになってオープンする。築100年を超える合掌造り家屋で、五箇山和紙をタンブラーのデザインとして作る体験ができるのだ。もちろんその後は家屋内のお気に入りの場所で、珈琲片手に思い思いの時間を過ごすこともできる。普段、何げなく過ごしているカフェの時間が、世界遺産集落の中でゆったりと寛ぐ幸せな時間になったり、合掌造りの構造やその造りをじっくりと見る学びの時間になったりするのは貴重な体験と言えるだろう。

珈琲を淹れること、後片付けをすること、すべてをするのは自分自身。だから気兼ねすることもなく、家屋の中はいたってのんびりとした自由な空気が流れ、気ままな過ごし方ができる。これを贅沢な時間の使い方と言わず何と言えばいいのだろうか。

それだけではない。体験とカフェに加えて、オリジナル・タンブラーもお土産として持ち帰ることができるのだ。桂離宮にも使われる五箇山和紙を、オリジナル・デザインでタンブラーにするプレミアム感は満足度120%といっても過言ではない。

五箇山。そこは冬には人の通行すら難しい雪深い土地。かつては罪人の流刑地としても知られた自然の中に存在する古来からの集落。そこには、古の民が生活していた空気が今でも確かに息づいているのだ。そして、眼下を流れる渓流には、豊富で清涼な水に生きるイワナが生息する。自然と古の息吹を堪能したあとは、空腹の腹の虫をなだめるしかない。

イワナの寿司を楽しむことができる「旬彩工房 いわな」

五箇山から車を走らせること約10分。道の駅上平「ささら館」にある「旬彩工房 いわな」では手打ちそばだけでなく、地産地消のイワナを寿司で楽しむことができるのだ。

素材と空気、そして料理人のこだわりが生み出す素朴ながらももてなしのご馳走たち。ご当地ならではの料理こそ、旅人たちの心をつかんで離さないのではないだろうか。

●information

庄川ウォーターカフェガイド
【期間】1日1便運行中~10月27日まで(土日のみ)
【料金】3,300円(4日前まで要予約)

五箇山 縁側カフェ
【期間】実施中~11月15日まで(土日のみ)
【料金】1,500円

大人の遊び、33の富山旅