注目を集めていた郵政三社超大型上場

郵政三社超大型上場の前評判が上々であることは承知していたが、かんぽ生命がストップ高で引けたとなると、過熱気味の印象はぬぐえない。上場初日、売り出し価格を50%以上上回る水準で、なお買い注文が続くという現象。しかも、後場は日経平均の上値が重く息切れしている。このような市場環境で、なお買い続ける「本尊」は誰なのか。少なくとも、オーソドックスな株式投資家の動きとは思えない。仕手株化の匂いが漂う。トレンド・フォローのCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)などの仕掛けが考えられる。

今年は惨憺たる運用実績で今月の決算期を迎えるヘッジファンドも、一発逆転のチャンス到来とばかりに、意気込んでいる。

それこそヘッジファンドの「カモ」だ

気になるのは「一日で5割以上の上げ」に惹かれて集まってくる初心者投資家集団の動きだ。

これをキッカケに「コツコツ投資」を始めるのであれば、健全な流れだが、昨日講演した投資セミナーの後で質疑応答を受けた参加者たちのなかには、「一獲千金」の誘惑に駆られて郵政上場に期待を寄せる初心者たちが多かった。それもシニアだけでなく、若い世代の参加者が目立った。側で心配げに見守る妻の姿が印象的だった。「投資はそんなに甘いものではない」と思わず肩を叩いたのだが、長年の勘で、誰が何と言おうと、この人たちは変わらないだろうと思った。たぶん彼らは、「講師は諌めていたが、やっぱり旨い投資話はある」と確信してしまったのではあるまいか。それこそ、ヘッジファンドの「カモ」になるまいか。

コツコツから始めよ

このような異常な熱気に包まれると、それぞれ個人の本性があらわになるものだ。用心深い性格であれば、まず、引いてしまう。しかし、「肉食系投資家」タイプは、沸々と体内から湧いてくるアドレナリンを制御できなくなるものだ。なにを隠そう、トレーダー時代の筆者が、まさにその典型だった。こんな偉そうなことを書いてはいるが、いまだに、市場が荒れると、カラダがほてってくる。まだ修業が足りないと思う。ただ、12年間NYやチューリヒの市場最前線で、相場の修羅場をくぐりぬけてきた体験があるので、リスク耐性だけは身についている。湧き出るアドレナリンを制御しつつ、努めて冷静に判断する術は心得ているつもりだ。

明日以降、市場に参入してくるかもしれない「にわか株式投資家」たちには、やはり、「コツコツから始めよ」と説いてゆきたい。

著者プロフィール

●豊島逸夫
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。 三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。

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