前回の記事では、8月末に成立した女性活躍推進法をご紹介しました。今20代の女性には追い風が吹いています。え?私が?と思っているあなたも、きっと課長や部長になれるのです。

女性が課長も当たり前

たぶん、皆さんと同期入社の男性は、口に出さないけれど多くの場合「ぼくが将来課長になるのは当然」と思っています。その「当たり前」の感覚を、同じ能力を持つ女性も、持つようになるといいですね。ポジションが上がればお給料も上がりますから、貯金だって増やせます。

この波に乗るために、若い女性がやるべきことが、ひとつあります。いちばん大事なのは、一歩前に出ることです。FacebookのCOOシェリル・サンドバーグが書いた『リーン・イン』(日本経済新聞出版社)を読んだ方は、ピンとくるかもしれません。そうです。「できるかな、どうかな」と迷ったら「できます」「やります」と手を挙げる積極性が大切です。

サンドバーグが本に記している通り、アメリカでも日本と同じように、女性は男性に比べて遠慮しがちです。そのために、大きな損をしています。

女性は生涯で6800万円損をする?

私が、大学や企業や自治体で「女性と仕事」について講演する時、必ず紹介している、あるデータをご紹介しましょう。リンダ・バブコック・カーネギーメロン大学教授が書いた『Women Don’t Ask』という本で紹介されているデータです。本書によると、女性は同じ能力の男性に比べて、生涯に6800万円も損をする、というのです。

6800万円もあれば、都内の良い立地にマンションを買えます。場所によっては広い一戸建ても可能です。20年、30年とローンを組んで一生働いて返済するような金額。老後資金の心配も減ります。男性と女性で、なぜこんな差が生まれるのでしょうか。

男女の差は「交渉」するかしないか

バブコック教授によると「交渉するかどうか」の違いだそうです。交渉文化が浸透したアメリカでは、新入社員もお給料について交渉します。日本のように「新卒初任給はいくらです」と会社の提示をそのまま受け入れないところが面白いですね。

同じ大学を出た男性と女性を比べると、男性は女性より初任給について交渉をする割合が高いそうです。そして、交渉すると年間平均40万円高い報酬を得ることができ、これを生涯にわたり積み立てて3%の複利で運用した結果が6800万円という数字につながっています。(3%で運用するのは、そう簡単ではない、と思うかもしれませんが、そこはひとまず置いてください)

この話をすると、女性も男性も表情が変わります。一歩前に出て自分を売り込むかどうかで、こんなに大きな差が生まれるなんて……と。

この数字、女性が年を取ってから知ると、ちょっと悔しいものです。「もっと積極的に動けばよかった」と後悔することも多いので。でも、この連載を読んでいる皆さんは、まだ間に合います。社会に出て働き始めて、まだ10年経っていない人がほとんどでしょう。ぜひ、遠慮せず「できるかな?」を「できるはず」に、「やりたいな」を「やってみよう」に変換して、一歩前に出るようにしてください。

著者プロフィール

●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。

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